PBL型の体験学習で社会の課題に目を向ける…聖学院

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 聖学院中学校・高等学校(東京都北区)は、中1~高2の各学年で全員参加の体験学習を行っている。体験学習は30年以上前から行ってきたが、2012年頃から内容をPBL(Project Based Learning)型に移行していくことで、生徒が飛躍的に成長するようになったという。新しいプログラムに取り組んでいる教員と、参加した生徒たちに話を聞いた。

「社会課題を自分事としてとらえてほしい」

PBL型体験学習の導入について話す広報部長の児浦先生
PBL型体験学習の導入について話す広報部長の児浦先生

 同校がPBLを導入した理由は、2020年度からの大学入試改革への対応として、論理的、創造的な思考力や主体的に学ぶ姿勢を養う必要があるということだった。広報部長の児浦良裕先生によると、12年に、文化祭の「創立記念祭」の運営でプロジェクト・マネジメントの手法を取り入れたのが最初の試みで、13年には中3の「公民」の授業、14年には北アルプス・蝶ヶ岳に登る中2の「夏期学校」と、授業や課外活動の中身を少しずつPBL型に組み替える試みが続いてきた。

 導入に弾みが付いたのは、15年に「教育と探求社」が主催する「クエストカップ」の「企業プレゼンテーション」部門で、中3生が全国グランプリを獲得したことだった。これがPBLの成果として、同校への入学を検討する児童・保護者の関心の高まりにつながった。翌16年に中高6年間のPBL・体験学習の教育ストーリーを全教職員で策定した。中1、2では自己肯定感を高め、他者と協働できる力を養い、中3からは視野を広げて社会課題を考える力を身に付けるという各学年の目標を設定し、PBLの本格的な活用を開始した。

新たにPBLを導入した中3の「糸魚川農村体験学習」
新たにPBLを導入した中3の「糸魚川農村体験学習」

 今年新たにPBLを導入したのは中3の「糸魚川農村体験学習」だ。新潟県糸魚川市の農家に泊まり、田植えなどを手伝う内容で、これまでも「社会を知る入り口」という位置付けはあったが、生徒たちに農村の課題を考えさせる仕組みは作っていなかったという。この体験学習を担当した保健体育科の山本享先生は「『農業は今、TPPで大変なんだよ』などの情報は与えていましたが、生徒たちは自分事としては受け止めず、おもてなしを受けて帰って来るだけでした」と振り返る。

 そこで今回は、中2の12月から事前学習を行って、糸魚川市が抱える課題を考えさせ、「リピーターが少ない」という仮説を立てて、観光客誘致のためのガイドブック作りに取り組ませた。山本先生は「与えられた課題に対して自分たちが出来ることとやりたいことを考え、対応できればいい。まずは、社会課題を自分事としてとらえてほしい」と話す。

 5月17日から3泊4日で行われた今年の「糸魚川農村体験学習」には148人が参加した。新しいプログラムは生徒たちを大いに刺激した。「歴史を知らないと深い話ができないし、数字を扱えないと説得力のあるデータを作れない。学校の勉強は必要なんだ」と振り返る生徒がいたという。「後輩のためにより良いプログラムにしてほしい」と、次回に向けた改善提案をする生徒たちもいた。そのために自分たちで資料を準備し、中2の担当教員にレクチャーとプレゼンテーションまで行ったという。

「糸魚川農村体験学習」を担当した山本享先生
「糸魚川農村体験学習」を担当した山本享先生

 山本先生は「これまでは帰ってきたら終わりという感じでしたが、今年は生徒たちの熱が持続しています。ガイドブックという明確なゴール設定が良かった。今後は生徒主導の学びになるのでは」と、今後の展開に期待を寄せている。

 「糸魚川農村体験学習」の実行委員を務めた2人の生徒に話を聞いた。五十嵐健太君は、 農家に一緒に泊まった同級生と2人で、2時間かけて畑を耕し、サツマイモの苗を植えた。へとへとになったあと、イカ墨を使ったご当地グルメの「ブラック焼きそば」をごちそうになるなど、密度の高い時間を過ごした。体験学習の後も五十嵐君は、有志の仲間とともに糸魚川市の人たちと連絡を取り合い、PRイベントを企画しているという。

 米田和樹君は、シイタケ農家に滞在し、菌床に集まってくるカブトムシの幼虫を取る仕事を手伝った。捕まえて成虫に育てれば1匹500円で販売できるという。「みんなで500円、1000円と言いながらシャベルで幼虫をすくい取るのが面白かった」

 生徒たちは事前の学習内容と現地での体験を基にして観光客誘致のためのガイドブックを制作し、お世話になった農家や保護者らに配った。ガイドブック1000部の印刷費用はクラウドファンディングで集め、紙面デザインの心得がある保護者に相談しながら、編集作業も行ったという。

高1は自分たちで解決案にたどり着き、プレゼンする

自分たちの力で課題解決案を作成する「ソーシャルデザインキャンプ」
自分たちの力で課題解決案を作成する「ソーシャルデザインキャンプ」

 中3の「糸魚川農村体験学習」では、仮説を立てたり、解決案を考えたりする作業に、まだ教員の積極的な手助けが必要だが、高1の「ソーシャルデザインキャンプ」では、生徒は自分たちの力で課題解決案の作成にまで踏み込む。

 もともとは高入生のための仲間作りと、内部進学者の友人関係の再構築を主眼とした行事だったが、2016年にPBL型の社会課題探究学習に組み替えた。当事者意識を持って社会課題を考えさせるため、地方創生の現場に行って地元の人々から話を聞き、自分たちで課題を探って解決案を提示する。教育統括部長の伊藤豊先生は「いかに自分たちの頭で考えさせるかという点にこだわりました。プレゼンをコンペ形式にしたのも、真剣に取り組ませるためです」と説明する。

 「ソーシャルデザイン」の授業は、中3の3学期から事前学習を始め、神奈川県内の真鶴の「漁業」と「観光」や小田原の「伝統工芸ビジネス」、及び静岡県内の熱海の「コミュニティー活性化」と三島の「農業」という五つのテーマから一つを選んで取り組む。

教育統括部長の伊藤豊先生
教育統括部長の伊藤豊先生

 7、8人の班を作って現地の課題を調べ、取材内容を考える一方、聞く力を鍛えるワークショップも行った。これまで、取材で相手の話を取り違えたり、誤解したりする生徒が少なくなかったことから、発言の意図や話全体の構造に留意しながら話を聞き、要点をつかむ訓練を繰り返した。

 今年のキャンプは5月20日から2泊3日で行われ、156人が参加した。宿泊地の神奈川県湯河原町を拠点に、関係地区へフィールドワークに出かけ、最終日に各班でプレゼンテーションを行った。伊藤先生は「現状の洗い出し、課題抽出など、全員熱心に取り組んでいました。出し合った意見をまとめ、プレゼンするのが面白いようです。議論がうまくなりました」と評価する。

 ちなみにこのプレゼン大会の優勝チームを主力とするメンバーが、7月に行われた「中高生ソーシャルデザインコンテスト Field Adventure AWARD 2019」で優勝している。

自ら足を運んで身近な課題を探り出す

 真鶴の観光をテーマにした高1生2人にも話を聞いた。

 内村直温君の班は、真鶴の魅力を若者に効果的に伝えるため、地元のユーチューバーに協力してもらってメディアで発信する企画を提案した。内村君は「学校で社会課題というと、貧困とか戦争などがテーマになりがち。でも、もっと身近な問題に目を向けられるようになった」と話す。

 高瀬皓大君の班は、東京から真鶴まで1日1便船を出し、現地で住民と交流する案を提示した。「何を調べるにしても、本やインターネットの情報だけではだめだと思ったから」だという。最初はGoogleのストリートビューで見ても同じじゃないかと思う気持ちがあったというが、真鶴の港に立ってみて街の美しさを実感したそうだ。

 「糸魚川農村体験学習」に参加した米田君は、「自分が知っていた世界はほんの一部で、いろんな世界があると分かった。高校でも、面白いプロジェクトにどんどん参加したい」と話していた。世界は思ったより広い。多くの生徒が、自分で足を運び、自分の目で見て、考えを深めるようになってほしい。

 (文・写真:佐々木志野 一部写真提供:聖学院中学校・高等学校)

 聖学院中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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940495 0 聖学院中学校・高等学校 2019/12/10 05:22:00 2019/12/10 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/12/20191209-OYT8I50041-T.jpg?type=thumbnail

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