PBLの成果を社会貢献につなぐカンボジア研修…聖学院

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 聖学院中学校・高等学校(東京都北区)は昨年、近年力を入れているPBL(課題解決型学習)の成果を海外で実践できるカンボジア研修を開始した。これまでもグローバル教育の一環としてさまざまな海外研修を展開してきたが、この研修は海外体験に英語を使った実践的な社会貢献を融合させる、一歩進んだ取り組みとなっている。来年度はSTEAM教育に重点をおいた新クラスを高校に設置し、この取り組みをさらに充実させる考えだ。

途上国での研修でPBLの成果を試す

東南アジア研修について話す児浦良裕教諭
東南アジア研修について話す児浦良裕教諭

 同校はグローバル教育の一環として5か国を対象とした海外研修を行っている。主に中3から高2を対象とし、夏・冬・春の長期休みに10泊前後のプログラムを用意している。

 多くの学校同様、英語圏のオーストラリア、アメリカ、イギリスへの研修旅行があり、ホームステイと語学研修で本場の英語に接するとともに、大学や企業の訪問、史跡見学を通しての文化理解やキャリア意識の醸成を狙う。

 その中でも特徴的なのが、2か国の東南アジア研修だ。同校は体験学習の長い伝統があるが、特に2012年からPBLに力を入れており、東南アジア研修はその実践の場となっている。国際教育部部長を務める児浦良裕教諭は「社会や環境の重大な課題をもった現場を経験して、社会貢献への意識を育む狙いがあります」と話す。

 30年以上続くタイ研修では、北部のチェンライ県にある少数民族の孤児養護施設「メーコックファーム」に滞在し、運営をサポートする。子供たちに日本の遊びを紹介する交流プログラムや、施設にWi-Fi設備を設置する作業、施設で栽培するコーヒー豆の収穫など、数多くの活動を行ってきた。

 ただ、タイ研修は希望者が殺到して、参加したくても参加できない状況が生じていたため、タイ研修のリピーターたちが次の目標にできる、カンボジア研修を開始した。

人生を変えることもあるカンボジア研修

「ラベンダージープ」のプロモーション用動画を撮影する
「ラベンダージープ」のプロモーション用動画を撮影する
「ラベンダージープ」の試乗会のためPRをする生徒たち
「ラベンダージープ」の試乗会のためPRをする生徒たち

 昨年8月2~11日の9泊10日で行われたカンボジア研修では、アンコール遺跡群の観光拠点の町シェムリアップで、現地の社会起業家が展開するビジネスに参画した。中2から高3の計28人が参加し、貧困問題に取り組むベンチャー企業に協力して、市場調査から商品開発、販促イベントなどの活動を行った。

 この時の研修では、2社のベンチャー企業とタイアップした。このうち「ラベンダージープ」という企業は、ラベンダー色のジープを使った観光事情を展開していて、そのドライバーとして貧困家庭の女性を雇用している。参加した生徒たちは、研修の2か月前からオンラインで現地スタッフと英語で打ち合わせを行い、現状理解を深めたうえで、「知名度を上げて受注の安定化を目指す」という目標を設定した。

 現地では、観光客に対するインタビューや競合会社の販促手法の調査を行い、提案のためにナイトツアーというアイデアを練り上げた。「安心して参加できる」「インスタ映えする」というセールスポイントや、日本など近隣国からの女性観光客をターゲットとすることなどを「ラベンダージープ」に3回にわたってプレゼンテーションした。また、ジープの試乗会を行い、アクションカメラで制作したプロモーション動画をインスタグラムやTikTokで拡散するなどの販促活動も実施した。

 研修を通じて生徒たちはそれぞれに多くを学んだが、児浦教諭が、「おそらくこの研修で人生が変わったであろう一人」と話すのは当時高3の山本康太君だ。

 「成績は学年トップ、バスケ部の部長という圧倒的な優等生でした。ただ、『何がやりたいの』と聞くと具体性が弱い。与えられた課題は完璧にこなすが、自分で課題を見つけ設定できる力を伸ばしたい。『この研修なら、さらに成長できるはず』とカンボジア行きを勧めました」

 山本君は「ラベンダージープ」チームの総合リーダーとして研修に参加した。同行した児浦教諭は、山本君が悩み、行き詰まる様子も目にしたという。

 「当初はリーダーとして『全部自分でやらなければ』と思ったようです。でも、それは不可能。壁に突き当たって考えた末、『作業チームごとにリーダーを設けて任せ、自分はフォローにまわる』『大目標の下に中・小の目標を設ける』などの方針を設定し、全体を俯瞰(ふかん)する立場で関わるようになりました」

 「ラベンダージープ」への英語プレゼンテーションも、初回は山本君が1人で行ったが、2回目からはチーム全員で行ったという。

 「チームを信頼し、ともに取り組む姿勢を学んだと思います。ほかにも『実際にやって初めて分かることがある』『トライアル・アンド・エラーは大切』など、いろんな感想を口にしていました」

 研修後、山本君はソーシャルビジネスを起こす夢を持ち、経営学部で名高い米ペンシルベニア大学に志望を固めた。「東大も狙える実力ですが、経営の知識やビジネスに必要なテクノロジーをしっかり学びたいと考えたようです」。この春、見事合格し、今は9月からの入学に向けて準備に余念がないという。

 他の研修参加生も、「現地の人々の収入源というプレッシャーが考える力になった」「課題に向き合う姿勢やプロセスの進め方など、解決への基本を学んだ」「プレゼンに何度も挑戦し、成果を出して成長を実感できた」などと話しており、大きな手応えをつかんだようだ。

STEAM教育を強化した新クラス準備中

日本料理をタイの子供に提供する生徒たち
日本料理をタイの子供に提供する生徒たち

 第1回のカンボジア研修後、児浦教諭はあらためて「PBLとは何か」と考えたという。「PBLは、多くの場合プレゼンがゴール。でもカンボジアではその先の『ものづくり』『ことづくり』を通して貢献できた。想像を超えた達成感でした」。

 この成功の背景として児浦教諭は、日頃から同校が力を入れてきたSTEAM教育に思い至ったという。「SDGs(持続可能な開発目標)など今の社会課題に向き合う学習のほか、理科系の探究授業やプログラミング、データサイエンス、プロダクトデザインなどにも取り組んできました。その蓄積が今回開花したと考えます。今後は『ものづくり』『ことづくり』への取り組みをさらに強化したい」

 そこで2021年度、STEAMやイマージョン教育を中心に独自科目を大幅に強化した「グローバル・イノベーション」クラスを高校に新設することが決まった。

 このクラスのカリキュラムでは週あたり、デザイン、サイエンス、ICT(情報通信技術)を学ぶ「STEAMイノベーション」に6時間、現代社会や家庭科、保健体育を英語で学ぶ「グローバルイマージョン」に3時間、ロジカルライティングやクリティカルシンキングに取り組む「リベラルアーツ」に2時間、そして、ゼミ形式の「プロジェクト」に2時間がそれぞれ充てられる。さらに実践的なコミュニケーションに役立つ英語授業も6時間あり、内進生選抜の15人と外部入学の15人の計30人でスタートする予定だ。

 構想が広がる一方、児浦教諭は「カリキュラムが自己目的化して、本来の『理念』から外れては意味がありません」と慎重な姿勢を崩さない。

 同校の教育は、キリストの教えに基づく二つの理念に集約されるという。一つは、一人一人が神から与えられているかけがえのない賜物(たまもの)を発見すること。もう一つは、「オンリーワン・フォー・アザーズ(他者のために生きる個人)」だ。

 「学校全体で理念を再確認の上、新クラスの運営を行いたい考えです。最初のステップでは、学校や学習が楽しめる環境を全力で作ります。土台ができた中3から大きく飛躍するストーリーを描き、大海原に飛び出す青年へと成長させます。まずは説明会で、本校の生徒を見てください」

 (文・写真:上田大朗 一部写真提供:聖学院中学校・高等学校)

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1248383 0 聖学院中学校・高等学校 2020/05/29 13:32:00 2020/05/29 13:32:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/05/20200528-OYT8I50013-T.jpg?type=thumbnail

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