世界志向のリーダー育成する12年一貫教育へ…江戸取

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 江戸川学園取手中・高等学校(茨城県取手市)は今春、江戸川学園取手小学校を卒業した1期生を迎えた。小学時代から同校独自の道徳教育や国際教育を受けて育った1期生は、海外での活躍を夢見て、早くも日々の学習や校内活動で活躍を見せている。茨城県初の12年一貫教育を進める同校の教育ビジョンを竹澤賢司校長に聞いた。

道徳教育が世界志向のリーダー性を育む

「人づくりは、小学校から始める必要があります」と話す竹澤校長
「人づくりは、小学校から始める必要があります」と話す竹澤校長

 今春、江戸川学園取手中学校には303人が入学した。このうち63人を江戸川学園取手小学校の卒業1期生が占めている。

 6年前に、36年間の教育実績によって「規律ある進学校」としての信頼を集めてきた同校が、さらに小学校の創設に踏み切ったのは、人づくりには時間がかかるという思いがあったからだ。「人づくりは、小学校から始める必要があります。小学6年間のうちに世界志向のリーダー性と学びの型の基本を身に付けることが大切なのです」と竹澤賢司校長は語る。

 「心豊かなリーダーの育成」を目標に掲げる同校の教育には、大きく言って道徳教育と国際教育という2本の柱がある。特に道徳教育は、「世界志向のリーダー」にふさわしい人間性を養う意味で教育の根幹をなすものだ。

 小学校の開設に際し、道徳教育をどう実践すべきか検討した竹澤校長は、1990年代に世界中に影響を与えたビジネス哲学書「7つの習慣」に着目した。この考え方を基に学校教育向けに開発されたテキスト「リーダー・イン・ミー」を採用し、これによって主体性や責任感、計画性、協調性など次世代型のリーダーシップに必要な七つの素養を少しずつ育んできたという。

 中1生たちはこれから、ディスカッション型の道徳の授業や校長、副校長たちの講話を通して道徳を学び、授業で感じ、考えたことを「道徳のノート」に記入するなどして自分の内面と向き合い、学びを深めていく。

 「日本人の勤勉さや謙虚さ、我慢強さ、奉仕の心は、世界で必要とされるリーダーの素養なのです」。竹澤校長は、こう力説する。

1期生3人が語る海外への抱負

実際の病院で医師の仕事を体験する生徒
実際の病院で医師の仕事を体験する生徒

 竹澤校長が「満を持して開校した」と語る江戸取小の卒業1期生3人に、小学校から中学校にかけての学びや生活、将来について聞いた。

 同校は2016年度から、中学校を「医科ジュニアコース」「難関大ジュニアコース」「東大ジュニアコース」の3コース制としている。

 そのうち「医科ジュニアコース」で学ぶ中村真歩子さんは、「江戸取小の生徒は、誰もがリーダーなんです」と話す。中村さんは小学校の道徳の授業で学んだ「リーダー・イン・ミー」に感銘を受け、積極的に下級生のまとめ役を引き受けていた。「小学校では『縦割り班』という、各学年1人ずつのグループがあります。中学校の見学に迷子になりがちな小1の子を連れていくのは大変でしたが、リーダーとしてのやりがいを感じました」と話す。

 将来の夢は、「アメリカなど海外の医療機関で医師として活躍すること」だという。「どの国に行っても、人の心に寄り添える医師になりたい」と目を輝かせた。

 「難関大ジュニアコース」で学ぶ明石彩歩さんは、「小4の時にタブレット端末を使った国語の授業が始まり、小6ではタブレットを使ったプレゼンテーションに挑戦しました。教材アプリを使って発表のテーマについて学習する際、難しい言葉を調べたり、発表の準備を覚えたりできて、表現力が身に付きました」と話す。

 国語の授業で学んだプレゼンテーションのスキルは、小6の時の文化祭「紫峰祭」でも発揮できたという。国連で採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」について、ドイツのエネルギー対策を取り上げてグループで学習し、文化祭で意見発表をした。将来の夢は困っている人を助ける弁護士になることだという。

 「東大ジュニアコース」で学ぶ後藤擢和(たくと)君の夢は、「世界中の人を笑顔にする外交官になること」だ。小学校の頃から英語が好きで、将来の進路を考え続けた末に、この進路を見つけたという。「小学校の時から考える授業をたくさん受けているように思います。特に算数の授業が心に残っていて、一つの問題の解き方をクラスみんなで探りました」

 後藤君は「東大ジュニアコース」には「自分の考えをしっかり持っている人が集まってきている」と感じていて、「自分も日頃の学習と学校生活のメリハリを付けたい」と話す。今は勉強とサッカー部の活動との両立に取り組んでいる。

生徒の夢をかなえる多彩な国際教育プログラム

 医師、弁護士、外交官。1期生3人の夢はそれぞれ違っても、将来、国際的に活躍することを夢見ている点では共通する。同校の教育のもう一つの柱である国際教育は、こうした生徒たちの夢を実現することが目的だ。

 同校の国際教育は中高6年間を通じてステップアップしていく。中3の修学旅行では、関西と中国地方の両エリアで、平和教育・歴史教育・国際教育の三つを目標として5日間の教育プログラムを行う。広島の原爆資料館を見学し、山口で明治維新の歴史を学び、さらに京都大学の留学生との交流を行う。日本の文化と歴史を体験的に学ぶことが、次のステップの海外研修で異文化交流に生かされるという。

 高2では、6日間のカナダ修学旅行を実施する。生徒は現地の進学校であるノートルダム高校の生徒と交流し、カナディアンロッキーを見学する。さらにブリティッシュコロンビア大学の先生による講演を聴くなどし、異文化や自然、学術の最先端に触れる。

 そのほか夏季には、カンボジアやベトナムでの7日間の「SDGsスタディツアー」やオーストラリアでの約18日間の短期留学、ニュージーランドでの約17日間の短期留学などがあり、春季にはアメリカのワシントンやボストン、ニューヨークで8日間の名門大学キャンパスツアーが用意されている。

今年度開始した医科コースの生徒対象の「アメリカ・メディカルツアー」
今年度開始した医科コースの生徒対象の「アメリカ・メディカルツアー」

 今年度から、「医科コース」の高校生を対象にした「アメリカ・メディカルツアー」もスタートした。医学の名門校であるカリフォルニア大学サンディエゴ校での研修だ。今年は約10人が参加し、大学の研究室・施設の見学や、特別医療講話、医学部学生や研究員とのパネルディスカッションなどを行ったり、現地で医師として活躍中の卒業生に指導を受けたという。

 また、今年度から中2を対象に、東京のお台場に昨年9月に開設された英語村「TOKYO GLOBAL GATEWAY」での体験学習も実施する。高校での海外研修を見据えて、英語力の基礎作りをさらに補強する考えだ。

 こうした国際教育の試みが理解された結果、国際教育に関心を持ち、英語が好きな生徒の入学が年々増えているという。今年度はさらに中学入試でも、一般的な4科目型入試に加えて「英語型(国・算・英)入試」を導入した。

 今年度の中学入学者は303人で、そのうち実用英語技能検定2級取得者が9人、準2級が22人いるという。また、帰国生も複数人いる。

英語で「We are the world」の合唱を披露する中1生
英語で「We are the world」の合唱を披露する中1生

 もちろん英語教育は江戸取小時代から重視されている。英語4技能の段階的教育プログラムをはじめ、4~6年の希望者を対象とするオーストラリア語学研修やイギリス語学研修などにより、「第2の母国語」を目指した英語教育が実施されている。

 今年度その1期生を受け入れた同校では、生徒の意識や生活態度にも変化が生じ、これまで以上に成長が感じられるという。その一つが、今年の中1生が7月に開催した英語の合唱コンサートだ。江戸取小の出身者が中心となり、有志で「We are the world」などの曲を歌った。生徒たちは、中学の見学会に訪れる児童たちにも、そのハーモニーを披露したという。小学校時代から育んだリーダー性を育む道徳教育と国際教育が結実した活動と言えそうだ。

 「その生徒らしい(とが)った才能を見いだし、世界に貢献する人材を育てていきたいです」と竹澤校長は意欲を燃やす。小中高の12年間一貫教育がどんな花を咲かせるのか楽しみだ。

 (文・写真:三井綾子 一部写真協力:江戸川学園取手中・高等学校)

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