【特集】世界で活躍する医師を育てる米メディカル・ツアー…江戸取

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 生徒の医学部進学に力を入れる江戸川学園取手中・高等学校(茨城県取手市)は昨年夏、アメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)で医療系の研修を受ける「アメリカ・メディカル・ツアー」を実施した。医師を目指す生徒たちが、将来、国際社会でも活躍できる医師になれるように、アメリカで最先端の医療現場を体験させるのが目的だ。竹澤賢司校長やツアーに参加した生徒らに話を聞いた。

豊かな人間性を持つ世界型医療人材を

「医療分野の世界型人材を育成したい」と話す竹澤校長
「医療分野の世界型人材を育成したい」と話す竹澤校長

 江戸川学園取手中・高等学校は1993年、高校に医科コースを設置し、2016年には中学に「医科ジュニアコース」を設けるなど、生徒の医学部進学に力を入れており、19年春も、国公立大の19人を含む77人を医学部医学科に合格させている。

 アメリカ・メディカル・ツアーはさらに、これら医師の卵たちを国際社会に貢献できる人材に育てたいという狙いで昨年7月10日から16日までの5泊7日で行われた。中2から高2までの9人の生徒が参加し、UCSD内の寮に宿泊しながら、医学部のキャンパスツアーや研究所や研究室、大学病院の見学、さらに医学部教授による特別医療講話や研究員とのパネルディスカッションなど、さまざまな体験型の学習を行った。

 竹澤賢司校長はこのツアーの目的を、「世界人口が爆発的に増加しつつある今、世界中で医療が必要とされています。アメリカの医療現場を見て最先端技術を知り、単に医師になるというだけでなく、将来を見通して、研究者や管理職などさまざまな医療分野で活躍できる世界型人材に育ってほしいという思いからです」と話す。

 また、竹澤校長は、東京慈恵会医科大学の創設者・高木兼寛(たかきかねひろ)の「病気を()ずして病人を診よ」という言葉を引き、「患者さんとの信頼関係を大切にせよという意味だと考えます。ですから、世界で活躍できる医師になるには、豊かな人間性が必要であり、『心の教育』を大事にしなければなりません」と語る。

 ツアーを引率した医科コース長の兼龍盛教諭も、「かつては医学部に入るための勉強を重視していましたが、それだけでは、医学部入学後に解剖が怖いといって辞めてしまうなど、医師になる覚悟が足りない生徒が出てきてしまいます。それを改めようと、命について考えることを重視し、医師になる心構えを育てるために、体験を重視したカリキュラムを編成してきました」と話す。

 この体験を重視した「心の教育」を、世界をリードする医療大国アメリカでもできるようにしたのがメディカルツアーの特長だという。

臓器移植問題から日米の死生観、医療の違いを考える

UCSD医学部の手術トレーニングルームを見学する生徒たち
UCSD医学部の手術トレーニングルームを見学する生徒たち

 「医科ジュニアコース」の生徒たちは「心の教育」のために、臓器移植の問題に取り組んでおり、中1から中3にかけ、医師、患者の家族、臓器を摘出する救急医と、それぞれの立場からの話を聞いている。メディカルツアーでも、その学びをさらに深めるため、臓器移植を専門とする教授に特別医療講話を依頼し、アメリカで行われている臓器移植や生命についての考え方を学んできた。

 メディカルツアーに参加した高田佳穂さん(高2)は、「私はもともと臓器移植に興味があったので、アメリカと日本の考え方の違いに大きな衝撃を受けました」と話す。

 「豚の細胞を使って作られた臓器の移植を、日本では拒否する傾向があるのですが、アメリカでは普段から豚肉を食べているからそれと同じ、と全く拒否感がないのです。脳死になっても体に魂が宿っていると考える日本に対し、アメリカでは肉体は単なる入れ物としか見ていません。輪廻転生(りんねてんしょう)などの宗教的考え方や倫理観、死生観によって、これほど臓器移植をめぐる対応が違ってくることに考えさせられました」

 同じく柴原有未さん(高1)も、「講義をしてくれたクリスティン・ミキール博士が、移植に対する情熱と高い誇りを持っていることに感銘を受けました」と話す。

 「アメリカでは毎日22人の患者が臓器移植を待ったまま亡くなってしまうと聞きました。日本では移植の研究段階で10人に1人でも死亡が出たら、その研究はストップしてしまいます。アメリカでは1人でも実験にサインをしていれば、研究にゴーサインが出ます。日本はリスクを大きく捉え過ぎるとも言えますが、かといって、安易に手術してしまうのもリスクが大き過ぎます。そのバランスが難しいと感じました」

日本のカラを破って世界に挑戦しよう

アメリカ・メディカル・ツアーを引率した兼教諭
アメリカ・メディカル・ツアーを引率した兼教諭

 世界の第一線で医療に携わる人たちに直接話を聞いたことも、大きな刺激になった。見学に訪れたソーク研究所は、世界トップクラスの研究論文引用度を誇る研究所で、そこに勤務している江戸取の卒業生にも話を聞いたという。

 柴原さんは、「私たちの先輩にあたる卒業生に『日本のカラを破って、世界に挑戦してほしい』と激励されました。アメリカは研究者にとって恵まれた環境で、オープンラボでは、大きな研究室でさまざまな研究が同時に行われていて、何かあるとすぐに別の研究者とも話し合いができるのだそうです。私も医大へ進んで、自分の学問を発展させたうえで、海外へ挑戦してみたいと思うようになりました」と話す。

 高田さんも、「アメリカ人医大生と一緒に話を聞きましたが、日本人は質問も控えめなのに対し、アメリカ人は先生が話している途中でも、質問を投げかけたりして、ものすごく積極的なのです。学生と感じられないくらい堂々としていて、驚きました。私もそのような医大生になりたいと感じて、帰国してからは、学校でもより積極的に発言し、主体的に学ぶようになりました」と話す。

 また、高田さんにとって、女性医師・女性研究者が活躍しているのを目の当たりにしたことも大きな収穫だった。「日本では女医にもかわいらしさが求められたり、結婚が遅くなったりする現実があるのに対し、アメリカの女医は自分の職業や研究にプライドを持っていて、外見ではなく、人間として輝いている姿に感銘を受けました」

 このツアーについて兼教諭は、「生徒たちが大きく成長したことが何よりの収穫です」と話す。さらに「柴原さんも高田さんも、どちらかと言えば控えめな生徒でしたが、メディカルツアーで刺激を受け、しっかりと自分の考えを持ち、伝えられるようになりました」と目を細めた。

 同校が医科コースを設置してから26年がたち、卒業生は世界中の大学医学部や研究所で活躍している。今回訪れたカリフォルニア大学サンディエゴ校だけでなく、ハーバード大学などにも医学部で研究している卒業生がいる。

 兼教諭は、「海外研修に行く先々で先輩たちがいるので、大きな刺激になっています。グローバル社会である現代では、医療現場においても国際化の波が及んでいますから、医学を学ぶのも、日本だけでなく、世界を視野に入れて学んでほしいと思っています」と語った。

 同校を巣立つ医師の卵たちは、これからどんどん世界の医療現場にはばたいていくことだろう。

 (文・写真:小山美香 一部写真提供:江戸川学園取手中・高等学校)

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1072876 0 江戸川学園取手中・高等学校 2020/02/27 05:21:00 2020/11/13 16:50:05 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/02/20200226-OYT8I50008-T.jpg?type=thumbnail

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