【特集】「初志貫徹」へ、逆境の中でも学びを止めるな…江戸取

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 江戸川学園取手中・高等学校(茨城県取手市)は、今年度のスローガンを「初志貫徹」とし、コロナ禍に伴う休校期間中もほとんどの教科でシラバス通りのオンライン授業を実施した。普段と異なる状況下でも動揺せずにやるべきことと向き合うことが、生徒の主体性を養うという考え方からだという。休校期間前後の対応や「規律ある進学校」の姿勢を貫く同校の教育について竹澤賢司校長に聞いた。

シラバスに基づくオンライン授業を実施

「明確なゴールを持って勉強に取り組むことが大切」と話す竹澤校長
「明確なゴールを持って勉強に取り組むことが大切」と話す竹澤校長

 「本校は42年前の開校以来、世界を築く礎となる人材の育成を目指しています。新型コロナウイルス感染拡大という逆境の中にあっても、学びを止めてはいけない、将来の国際社会で活躍するという本来の夢や目標を失ってはいけないという意味で、今年度は『初志貫徹』というスローガンを掲げました」と、竹澤校長は話す。

 同校は、「生徒の夢は学校の目標」というモットーを掲げている。新型コロナウイルス感染拡大により休校を余儀なくされても、課題配布、授業動画の作成、双方向オンライン授業の実施を通し、教師たちは「生徒の夢」の実現に向けて努力を続けた。

 「元々ICT環境が整っていたことから、動画配信やオンライン授業の実施に難はありませんでした。3月から4月にかけて、課題のプリントを送付し、授業動画を配信すると同時に、全教員に対して双方向オンライン授業の研修を行いました」

 連休明けの5月7日、オンライン授業がスタートした。朝8時半、生徒は制服を着て自宅のパソコンやタブレットの前に座り、道徳と総合学習を除く全教科でシラバスに沿って授業を受ける。理科の教師はカメラの前で実験をやってみせ、体育の教師は他の教師と一緒にエクササイズをして、体を動かすことの大切さを説いた。この体育の授業には生徒の保護者や兄弟姉妹らもカメラの前で参加し、学校と家庭が一体となって取り組んだ。

「初志貫徹」のスローガンと、生徒会が作成した「志」のモザイクアート
「初志貫徹」のスローガンと、生徒会が作成した「志」のモザイクアート

 「校舎が開いていないといっても、“休み”ではないのです。江戸取生であることを自覚し、リズムある規則正しい生活を送ることが大切であると考えました」。同校は、国公立大学や難関私立大学に毎年多数の合格者を出す進学校だが、日常生活のマナーなども大切にしており、「心力」「体力」「学力」を養う「規律ある進学校」を教育方針としている。コロナ禍の非常事態でも、この姿勢を変えることはなかった。

 「自宅でセルフコントロールを行うことで、生徒の主体性が養われました。普段と異なる状況下にあっても、動揺せずに、やるべきことと向き合う。このことを学んでもらえたと思います」

 6月1日から分散登校が開始され、6月12日から通常登校が再開した。シラバス通りのオンライン授業を行っていたことで生徒たちの戸惑いは少なく、6月15、16日には通常通り中間試験が行われた。

 「明確なゴールを持って勉強に取り組むことが大切と考え、試験の予定は変えませんでした。生徒にアンケートを取ったところ、オンライン授業期間中も、中1生は授業を含め1日平均7時間以上、受験を控えた高3生は最も多いクラスで1日14時間以上勉強に取り組んでいたというデータが得られました。コロナ下でも教育の質を落としてはいけない、むしろ上げていくという思いが実ったものと考えています」

猛暑の夏も完成した新体育館で安心して体育

 通常登校再開と同時に部活動や選択制の課外講座「アフタースクール」も再開され、生徒たちは、スポーツや芸術活動にのびのびと取り組んでいる。4月に完成したばかりの新総合体育館「Sakura Arena」には武道場、ダンス場、卓球室なども設けられ、冷暖房が完備している。生徒たちはこの新しい総合体育館で、猛暑だったこの夏も安心して体育の授業や部活動を続けることができた。

 文化祭「紫峰祭」の開催もあきらめることなく、生徒たちの活動ぶりは10月10日にオンラインで配信された。演劇部や吹奏楽部のステージはライブで、茶道部や書道部などは活動紹介の動画を作成して配信した。「伸びようとする芽を存分に伸ばすのが、私たちの教育です。価値観の多様化する社会の中で、豊かな学びを得て社会をリードしていく人材となってくれることを願っています」

新型コロナと闘う卒業生からのメッセージ

研究者として新型コロナと闘う卒業生の山藤さん
研究者として新型コロナと闘う卒業生の山藤さん

 江戸取の卒業生たちの中には、新型コロナウイルス感染問題に対して医療面で社会に貢献している人たちもいる。長崎大学熱帯医学研究所の山藤栄一郎助教は4月、長崎に停泊していたイタリアのクルーズ船「コスタ・アトランチカ」で新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生した際、富士通と共同で健康管理アプリを緊急開発し、船外から乗組員の健康状態を把握した。重症者の早期発見に成功し、死亡者をゼロに抑えたという。

 電子メールでの取材に対し、山藤助教は「あいさつをする、時間を守るといった社会常識を学んだことが、仕事を進めるうえで良い影響があると感じています。世の中にはさまざまな情報が飛び交っています。正解が何かという視点では解決できない問題があると知ることも大事かもしれません。ぜひ、さまざまな情報に目を向けて、考えてほしいと思います」と、後輩に向けてアドバイスした。

米スタンフォード大で研究を続ける卒業生の新妻さん
米スタンフォード大で研究を続ける卒業生の新妻さん

 また、米スタンフォード大学で免疫学の博士研究員を務める新妻耕太さんは、在宅勤務の期間、夫人とともに動画配信サイトYouTubeで「新妻免疫塾 K&L Immunology Club」を立ち上げ、ウイルス感染にまつわる知識をやさしく解説する動画を公開し始めた。ノーベル賞受賞者である山中伸弥京都大学iPS細胞研究所所長のウェブサイト「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」などで紹介されて評判を集め、江戸取の授業でも教材として使用した。

 同じく電子メールでの取材に対し、新妻さんは「どんな質問にも真摯(しんし)に熱心に答えてくれる先生方の指導があったからこそ、自身の探究心が培われたと思います。自分の心の中の“好き”と真正面に向き合い、時々よそ見をして視野を広げながら、一生懸命に努力を続けることがチャンスを呼ぶのだと信じています。江戸取で自分だけの“好き”を見つけて没頭する経験を得てください」とメッセージを寄せた。

 卒業生たちはそれぞれに「国際社会で活躍するという夢や目標」を実現していることが分かる。コロナ禍の逆風に負けず、生徒たちにも「初志貫徹」してほしいものだ。

 (文・写真:足立恵子 一部写真提供:江戸川学園取手中・高等学校)

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