主体性を育むアクティブラーニング…鴎友

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 鴎友学園女子中学高等学校(東京都世田谷区)は、創立以来の「学習者第一主義」の伝統を現代のアクティブラーニングに生かした教育で実践している。この教育方針は体験重視の理数教育やグループ学習としてさまざまな学びに浸透しており、生徒たちの主体性を養っている。大井正智校長に同校の学びの特色を聞くとともに、中学2年の福祉体験学習の様子を紹介する。

障害者福祉の意義を体験学習する

中2の福祉体験学習で、車椅子を体験する生徒たち
中2の福祉体験学習で、車椅子を体験する生徒たち

 同校は7月10日、世田谷区社会福祉協議会の協力を得て、中学2年生の福祉体験学習の授業を行った。内容は、車椅子体験実習とブラインドウォーク実習、点字を学ぶ講義の三つ。

 車椅子とブラインドウォークの各実習については、生徒が3人または2人1組になって、体育館から校舎へと決められたルートを移動する体験をした。二つの実習では、教員や社会福祉協議会の職員が、ルートのそばに立ち、通り過ぎていく生徒たちを見守った。車椅子の体験では、慣れているはずの通路の小さな段差につまずきそうになった生徒もいた。

 ブラインドウォークの体験では、アイマスクで目を覆い、白い(つえ)を持って歩く。体験している生徒は、付き添いの生徒の声を頼りに小さな歩幅で進んでいくが、思うように足が出ない。「これから階段を上るよ」「手すりにつかまって」などの声が響く。実習に臨んだ生徒たちは、体験をする者も、誘導の声をかける者もそれぞれにもどかしさを感じていたようだ。

中2の福祉体験学習で、点字を学ぶ
中2の福祉体験学習で、点字を学ぶ

 点字を学ぶ講義では、書籍を点訳する福祉活動の意義や現状について説明を受けた後、点字プレートを使って実際に点字を打ち込む方法を学び、短い文章を作成した。

 同校ではこのような福祉体験授業以外にも、校内の小さな畑で生徒たちが野菜を育て、生命の大切さを学ぶ「園芸」の授業など、体験を重んじるアクティブラーニングの要素をカリキュラムに積極的に取り入れている。そうした指導のあり方は、国語や英語、数学、理科など教科の指導にも及んでいるという。

 大井正智校長によると、その背景には、同校の前身である東京府立第一高等女学校(現・都立白鴎高等学校)以来の生徒主体の教育という伝統がある。「本校の初代校長、市川源三は『学習者第一主義』を掲げました。この精神は今も本校の教育カリキュラムに息づいています。教員が壇上から一方的に指導するのではなく、生徒が主体的に考え、友人と議論できる授業を作ることが大切です」

 この「学習者第一主義」の考えを、今の言葉に言い換えれば、アクティブラーニングとほぼ同じだと言えるだろう。

3日に1度の席替えで多様性を学ぶ

鴎友の学びの特色について話す大井正智校長
鴎友の学びの特色について話す大井正智校長

 大井校長は1985年、男子校から国語教員として同校に着任し、2017年に校長に就任した。鴎友の教員として初めて校舎を訪れたとき、「気持ちの優しい生徒が多い」という印象を持ち、その思いは着任から34年たった今も変わらない。大井校長は卒業生から「何年たっても鴎友学園でできた友人は大切です」と聞かされることがあるという。

 中高6年の中で大切な友人が得られるのは、伝統的にグループ学習を重視していることや、生徒の個性や自己肯定感を育む教育環境が影響しているようだ。

 同校では、各クラスが3日に1回席替えを行う。頻繁に席が替わり、ペアやグループでの学習を経験することで、「いろいろな人がいて当たり前」という価値観が生まれるという。「これは女子教育においても非常に大切であり、生徒の居場所作りになります」と大井校長は話す。

 国語や英語、数学などのグループ学習も、生徒の主体性や発言力を育てる機会になっている。「失敗しても、笑われてもいい。かっこいいことを言ってもいい。そういう雰囲気が本校では自然にできていると感じます」

 主体的に取り組み、積極的に周囲と話し合って物事に取り組むアクティブラーニングの学びに加えて、教員と生徒の間の関係が近いことも同校らしい特色を形作っている。

 校長室では月に1度、中1生を対象にした誕生日会が開かれる。大きなテーブルを囲む生徒たちの輪に大井校長も加わり、茶話会のような雰囲気で話し合う。会の後、大井校長は、ある生徒から「先生方はペアワークやグループワークなど、人と話す機会をたくさん設けてくださるので幸せです」と感謝の言葉を受け取ったことがある。「まだ中1で、慣れない敬語を使いながら懸命に話してくれたことがうれしかったです」

 また、「鴎友学園の英語教育の良さをもっとアピールしてほしい」と校長に直接、提案してきた生徒もいる。その生徒は、中学校でオールイングリッシュの授業を初めて経験し、英語の楽しさを覚えた。また、高2の選択授業では英語のディベートに挑戦して、英語で議論する楽しさに気付き、この経験を学年を超えたさまざまな生徒と共有する機会を作りたいと、企画書にして校長に提案したという。

 生徒の主体性は、学校行事にも表れている。中学受験者を対象にしたオープンキャンパスでは、中3の生徒が学校紹介のイベントを企画し、生徒が教員に(ふん)して、教科の授業や園芸などの特別授業の様子を演じたりするそうだ。

工学部など自然科学系の大学進学者も多い

 同校の生徒の進路選択には一つの特徴がある。2018年の進学実績を見ると、もっとも多かった進学先は工学部であり、全体の18パーセントに及ぶ。芸術系の大学・学部も進学者が多く、ものづくりに関連する分野に人気があることが分かる。

 大井校長は「本校の理科と数学の教育では、まず生徒に具体的なものを見せて考えることを起点としています」と語る。こうした体験を重視する教育が、生徒の進路選択にも影響を与えているのだろう。

 例えば中1の生物では、観察の対象に実際に触れることを重視している。中2の物理では、スーパーボールを使って仮説と検証を試み、数学では折り紙で立体図形を作って特性を探る授業を展開するなど、常に具体的なものに触れる教育が重視されているのだ。

 同校の理科や数学の授業は、実験や観察など具体性の高い学習から、原理や法則など抽象的な概念の学びへと段階的にシフトする。そうすることで、生徒の理科や数学への苦手意識が薄くなるそうだ。特に「数学が楽しい」という生徒が増えており、自然科学系への大学進学者の数を押し上げているという。

総合学習などで得た経験や感想を記す「HRノート」
総合学習などで得た経験や感想を記す「HRノート」

 生徒の個性と自主性を育む取り組みは、授業だけにとどまらない。生徒がそれぞれ記入する中学生の「HRノート」もその一例だ。

 同校では中学生に、総合学習やボランティア活動などで得た学びや経験、感想を一冊のノートにまとめさせている。このノートはそのまま高校ではポートフォリオになり、大学進学に際しての志望校・志望学部選びに役立ち、さらには推薦・AO入試の志望理由書にも応用が利く。

 「HRノートやポートフォリオは大学入試のためだけではなく、一生の宝物になります」と大井校長は話す。「自分が何を経験し、考えてきたのか、大人になるための一冊として取り組んでほしいです」

 主体性を育む伝統の中で、生徒たちは自分の考えを率直に語れるようになり、他者を尊重することを学ぶ。その中で一生の友人を得ることもある。大井校長は「本校は生徒一人一人が自分の居場所を見いだすことができる学校です。そこから自分にふさわしい将来の進路を見つけて進んでほしい」と語った。

 (文・写真:三井綾子 一部写真提供:鴎友学園女子中学校・高等学校)

 鴎友学園女子中学高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

無断転載禁止
837140 0 鴎友学園女子中学高等学校 2019/10/10 05:21:00 2019/10/10 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/10/20191009-OYT8I50009-T.jpg?type=thumbnail

会員校一覧

東日本 共学校ページTOP

── 女子校ページTOP

西日本ページTOP

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

新着クーポン

NEW
参考画像
10000円9000円
NEW
参考画像
クーポンご提示のお客様に粗品プレゼント
NEW
参考画像
4200円3780円
NEW
参考画像
1560円1300円

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
The Japan News
発言小町
OTEKOMACHI
ささっとー
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
挑むKANSAI
読売新聞社からのお知らせ