伝統の英語教育と海外研修で国際性育む…南山女子部

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 南山高等・中学校女子部(名古屋市)は、中高6年間の一貫教育の大きな柱の一つに「国際的視野の育成」を掲げている。グローバル社会に欠かせないコミュニケーション力や異文化を理解する姿勢を培っているのは、先進的な英語教育の伝統と、アジアにも広がる多彩な海外研修プログラムだ。

中3の英会話授業、全員が2分間しゃべり続ける

2分間休みなく英語でしゃべり続ける英会話の授業
2分間休みなく英語でしゃべり続ける英会話の授業

 「This is the final free talk of the year.(今日が1年で最後のフリートークになります) So,I want you to tell your partner about……(そこで、隣の友だちに話してほしいのは……)」

 2月下旬、3学期最後となった英会話の授業で、英語科のベン・プライス教諭は、中学3年の女子生徒約20人に、ネイティブが普通に話すような速さで語りかけた。最初に出された課題は、1年を振り返って印象に残った学校のイベントや、翌週に迫った被爆地・長崎への研修旅行などについて、ペアを組んだ相手に自分の思いを英語で伝えるというもの。

 持ち時間は1人2分間。「OK,two minutes!(さあ、2分間だよ)」という指示で、生徒たちは一斉に英語でしゃべりだした。どの生徒もとにかく休みなく話し続ける。聞く側も「Oh,yeah?(そうなの?)」などと、相づちを打って話を促す。

 「Time is up.Amazing! You can talk two minutes non-stop.(時間です。すごいですね。みなさん、2分間ずっと話し続けることができるなんて)」。プライス教諭も生徒たちの成長ぶりに驚きを隠せない様子だった。

 英語科の吉村幸一郎教諭は「英語の授業では、生徒に質問してどんどんしゃべらせるなど、アウトプットの時間を積極的に取り入れています」と強調する。吉村教諭によると、同校では1970年代からネイティブの英語教師による少人数授業を続けているという。また、中学生の伝統行事「英語暗誦(あんしょう)大会」も60年近く続いている。イソップ童話などの課題文を覚え、全員1人ずつ前に立って発表する大会だ。英語の表現力を磨く絶好の機会になっているという。

英書多読の目標100万語、英検1級レベルへ

黒板に背を向けた生徒が、ヒントを聞いて英単語を言い当てるゲーム
黒板に背を向けた生徒が、ヒントを聞いて英単語を言い当てるゲーム
英語の授業で使う多読用の本を積んだカート
英語の授業で使う多読用の本を積んだカート

 この英会話の授業では、4チームに分かれての「英単語ゲーム」も行われた。期末試験の出題範囲から選んだ英単語を黒板に書き出し、各チームのキャプテンが背を向けたまま、他のメンバーのヒントでその単語を言い当てるゲームだ。例えば「coal or oil…(石炭とか石油)」などのヒントから「fossil fuels(化石燃料)」という正解を出す。正解が出るたびにその英単語は黒板から消され、あっという間に出題された50~60の英単語がなくなった。

 こうしたハイレベルな英語力の土台になる日常学習の一つとして、吉村教諭が挙げるのは、2年前から本格的に始まった英語の本の「多読」だ。ネイティブの子供が英語を自然に覚えるように、ごく簡単な絵本からスタートし、「辞書は引かない」「分からないところは飛ばす」を基本に、大量の英文に触れながら児童書から一般書へと少しずつレベルアップしていく。

 英書の多読は現在、中学1年~高校1年で取り組んでいる。英語の授業の冒頭10~15分ほどを充てているほか、夏休みなどの課題にも出しているという。「英文にたくさん触れることで、自然な英語表現を学べます。英語のボキャブラリーも、日本語と結びつけて覚えるのでなく、英文の文脈の中で身に付けるのが最強です」と吉村教諭は話す。

 生徒たちも「自分でも驚くほど読むのが速くなった」「試験の長文の内容を絵に思い浮かべられるようになった」「フリートークの英単語がスラスラ出てくる」などと、多読の効果を実感しているようだ。

 多読用の本には、収録されている英単語数を記したシールが貼ってあり、生徒たちは読書日誌に本の題名とともに、読み終えた単語数を記録する。目標は中1から高1までに100万語という。吉村教諭は「英検であれば準1級、1級レベルの生徒がどんどん出てくるでしょう」と期待している。

「未来のリーダー」と寝食ともにする英国研修

 「こんな体験は一生に一度のチャンスだと思って」。高校2年の永坂綾菜(あやな)さんは、昨年の夏休みに2週間、同学年の生徒約40人とロンドン近郊の名門女子校チェルトナム・レディース・カレッジで過ごした。同校が毎年夏に行っている英国での海外研修だ。

 この研修プログラムでは、築100年を超える歴史のある学生寮に泊まりながら、英国文化について英語で特別授業を受ける。この研修の大きな魅力はサポートの手厚さにある。世界でも名だたる大学に進学している同カレッジのエリート卒業生たちが、アシスタントとして寝食をともにし、英語学習や日常生活の手助けをしてくれるのだ。

 研修中、オックスフォード大学の見学で、生徒たちにキャンパスを案内してくれたアシスタントは、同大の現役女子学生だった。「学んでいる分野の話を聞きながら、本当のオックスフォード生にガイドしてもらい、感動しました」と永坂さんは振り返る。

 永坂さんが英語でうまく伝えられず言葉に詰まったとき、アシスタントの先輩たちは静かに待ってくれたという。「生徒たちは英語を磨くだけでなく、将来世界のリーダーになるような女性たちと出会い、その高い知性や豊かな人間性を肌で感じることができます。この体験は大きな財産になるはずです」と、海外研修を担当する福田啓介教諭は話す。

キリスト教に浸るイタリア、国際協力を学ぶアジア

古都アッシジで聖フランチェスコ大聖堂を訪れた生徒たち
古都アッシジで聖フランチェスコ大聖堂を訪れた生徒たち

 同校は、中高6年間の一貫教育の大きな柱の一つに「国際的視野の育成」を掲げている。その目標に向けて、先進的な英語教育とともに力を入れてきたのが、1970年から続く多彩な海外研修プログラムだ。現在は英国のほか、イタリア、アジアの3コースで実施している。

 英国が「未来の女性リーダーとの出会い」なら、イタリアは「キリスト教の世界に触れる」がメインテーマ。カトリック系ミッションスクールである同校の生徒は、毎朝夕の礼拝を日課とし、中高6年間を通して宗教の授業を受けるが、キリスト教が根付く社会に身を置いた体験を持つ者はほとんどいない。

 こうした背景から、イタリア研修では12月下旬の1週間、カトリックの総本山バチカンや、聖フランチェスコが眠る聖地アッシジなどを訪れる。また、世界中の信徒に交じってサンピエトロ広場でローマ法王のクリスマスメッセージにも立ち会う。教会建築や絵画などキリスト教の文化にも触れる旅だ。

 「ふだん学ぶキリスト教の奥深さに触れ、宗教のあり方を考える。その中で人としてどう生きていくのか、人格形成の糧にしてもらいたい」と福田教諭は話す。

 三つ目のアジアコースでは、カンボジアとベトナムの2か国を夏休みの1週間で巡る。テーマの一つは「国際協力現場を訪れる」だ。カンボジアでは世界遺産アンコールワットで、日本人が伝統の石切り技術を生かして遺跡修復を支援する現場を見学する。ベトナムでは青年海外協力隊など国際協力機構(JICA)の取り組みを学ぶ。

 ベトナム戦争などの苦難の歴史と復興した今の姿、そして東南アジアの庶民の日常生活にも触れる。その体験から「将来、国際協力などグローバルな仕事を目指し、世界へ羽ばたく女性を育てたい」と福田教諭は期待する。

 英国研修に参加した高校2年の永坂さんは、「見習うべきイギリスの文化をたくさん学ぶことができました。今度は私が日本の伝統の素晴らしさを海外に発信し、伝える活動ができたら」と夢を語る。

 グローバル社会に向けて、南山女子部が目指す「国際的視野の育成」について、進路部長でもある吉村教諭は「自分の殻を破って異質なものに積極的に触れ、共感していく姿勢こそが、その基本だ」と指摘する。そして、「キリスト教の教えから、一人一人がかけがえのない大切な存在として認め合うこと。そうした根っこのところを、多感な中高の6年間にしっかりと養いたい」と力を込めた。

 (文・写真:武中英夫 一部写真:南山高等・中学校女子部提供)

 南山高等・中学校女子部について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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605702 0 南山高等・中学校女子部 2019/05/28 05:21:00 2019/05/28 09:42:28 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/05/20190527-OYT8I50046-T.jpg?type=thumbnail

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