高3を受験モードに 伝統行事「卒業生を囲んで」…中村

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 生徒一人一人の目標に合わせたきめ細かいサポートと手厚い指導、そしてアットホームな校風が特長の中村中学校・高等学校(東京都江東区)。進路指導の一環として、20年以上前から続く「卒業生を囲んで」という伝統行事がある。高3を対象に6月4日に行われたこの行事を見学し、講師の卒業生をはじめ、在校生、進路指導担当の教師に話を聞いた。

ほろ苦い受験の思い出も語り 後輩たちへ熱いエール

 7限開始のチャイムが鳴ると、会場の6か所の教室で一斉に「卒業生を囲んで」が始まった。テーマは「受験生へのアドバイス~これからのスケジュール」。講師として招かれた現役大学生の卒業生6人が、受験の心構えや学習法などを、生徒たちに話して聞かせ、自身の反省を踏まえたアドバイスを行う。卒業生6人のうち5人はこの春に卒業したばかりで、1人は昨年春の卒業生だ。

 資料を画面に映して説明したり、黒板を使ったり、講義のスタイルはそれぞれ違うが、どの講師役の卒業生も真剣そのもの。年の近い先輩のため、「選択科目はマジで頑張った方がいいよ」などと語り口はフランクだが、思いは熱い。

 卒業式を迎えても、進学先が決まらなかったという卒業生が「2月、3月は本当に苦しかった。式が終わると塾に直行した」と体験を語ったときは、教室内が静まり返った。後悔をにじませ、後輩には同じ失敗をしてほしくないという気持ちが伝わってきた。学習法についても、「世界史は横のつながりを気にして」「センター試験は対策本より過去問」など、それぞれの経験から得たポイントを話に盛り込み、実践的なアドバイスとなっている。

 「卒業生を囲んで」は、高3向けには毎年、体育祭の直後の6月初旬に開かれている。この時期に行うのは、お祭り気分を終わらせ、受験へのモチベーションを高め、気持ちを切り替えて本格的に勉強に取り組ませる狙いがある。

 卒業生たちの講義は1回20分。10分間の休憩を挟んで、同じ卒業生による2回目の講義が行われる。講師の卒業生6人の名前、進学先、受験科目などは事前に案内されており、生徒たちは自分の志望先などに合わせて2人の先輩を選び、話を聞くことができる。

 終了後、熱心にメモを取りながら耳を傾けていた生徒たちに、声を掛けてみた。話を聞く先輩をどのように決めたのか尋ねると、「同じ国際科出身で、私も推薦入試と一般入試の両方に挑戦したいと思っているので」「自分も狙っている推薦入試について、話してくれる先輩を選んだ」など、自分の受験モデルになる先輩を選んでいるようだった。

進路や部活の悩み 支えてくれた先生

「卒業生を囲んで」に参加した現役大学生の卒業生たち
「卒業生を囲んで」に参加した現役大学生の卒業生たち

 講師として招かれた卒業生は、中村中学校・高等学校でどんな学校生活を送っていたのだろうか。

 法政大学キャリアデザイン学部キャリアデザイン学科1年の中野優香さんは、「高校時代は英語に苦戦する日々でした」と振り返った。苦手の英語を克服したいと国際科を選んだが、自分より学力の高い子ばかりで、焦りとプレッシャーに苦しんだという。「でもクラスメートは、自分を高めようと思わせてくれる存在でもあったんです」。国際科での1年間のオーストラリア留学を経て、英語力を磨き、現在のアルバイト先の飲食店では外国人対応を任されるほどだという。

 「中村の良さは、先生が生徒一人一人をよく見てくれること」と話すのは、成蹊大学文学部国際文化学科1年の榎本茉柚(まゆ)さんだ。「相談する前に、悩みに気付いてくれていたこともありました」。同級生が一人もいない中で新体操部の部長を務めるなど、学業以外でも大きな役割を担っていた榎本さん。悩んでいるとき、先生から頑張りを認めてもらえたことが支えになったという。大学では講義や国際交流イベントなどを通じて国際文化について学び、将来は空港のグランドスタッフを目指している。

 日本獣医生命科学大学応用生命科学部動物科学科の北薗優月さんは、「キャリアデザイン」の授業での学びが財産だと感じている。元々動物が好きで、中1の頃は獣医になりたかった。夢はその後、動物園の飼育係、野生動物の研究者と移り変わり、現在は酪農家を目指している。「毎週2時間しっかり自分と向き合い、多くの職業について学んだことは大きい」。だからこそ、さまざまな職業に憧れた。将来の夢の変遷は、北薗さんにとって学びの歴史でもある。これからも、自分が本当にやりたいことを考え続けていく。

 「高3が一番楽しかった」と話したのは、明治大学法学部法律学科の1年の藤村紗加さん。勉強は大変だったが、友だちや先生の大切さを実感できた。「特に先生方には支えられました」。受験本番直前の12月、志望校を変えることにした際、大学のレベルは落としたくないという藤村さんの希望をかなえるために、奔走してくれた。ほかの高校に通う友人から、先生から受験のアドバイスはほとんどなかったと聞いて驚いた。「丁寧に指導してもらえたからこそ、今の私があるんです」

 講師の卒業生全員が口をそろえて、「特別な出来事がなくても、毎日がとても楽しかった」「一生の友だちができた」と話していたのが印象に残った。

将来の夢見つめる 中高6年「キャリアデザイン」授業

講師役の卒業生が受験の心構えや学習法を話して聞かせる
講師役の卒業生が受験の心構えや学習法を話して聞かせる

 「卒業生を囲んで」は、受験に向けて生徒のモチベーションを高めるのが目的だ。節目の行事のタイミングに合わせて開催し、より効果的なものになるように工夫もしている。もうすぐ受験生という意識を持たせるために行う高2の場合は、志望校や学部学科、志望理由を書く「第一志望校決定宣言」の提出時期に合わせて実施する。高3では、体育祭で作った道具などを処分する「体育祭を終えて受験への切り替えセレモニー」とセットにしている。

 最高学年として6学年縦割りのチームをまとめ、応援合戦の衣装や小道具を手作りする体育祭は、高3の生徒にとって思い入れがある行事だ。「生徒たちは当然、思い出の品を取っておきたがります。でも前を向いてもらうために、あえて自分たちの手で捨てさせます」と、進路指導を担当する前岡克美キャリアセンター長は説明する。

 「卒業生を囲んで」の講師として呼ぶのは、巣立って間もない卒業生ばかりだ。部活や行事を通して知っている先輩だから、生徒たちは親近感を持ち、その言葉を切実に受け止める。「私たち教師が何度言っても聞かないのに、先輩のひと言は響くようです」と前岡キャリアセンター長。

資料を映しての説明に、高3生は熱心にメモを取り、耳を傾けた
資料を映しての説明に、高3生は熱心にメモを取り、耳を傾けた

 「卒業生を囲んで」とともに、同校の進路指導の核となっているのが、講師の卒業生も語っていた中高6年間を通して行う「キャリアデザイン」の授業だ。学年ごとに自分の目標を定めるほか、将来30歳になった自分の姿を考えさせる。10代の心は不安定で、将来の夢も刻々と変わる。でも、たいてい根っこの部分は変わらない。

 かつて、臨床心理士を目指して筑波大学の人間学群に進学した卒業生がいた。しかし、社会に出た彼女が選んだ仕事は、経営コンサルティングだった。高校時代の夢とは全く違うように見えるが、彼女は「やりたいことができている」と満足げだったという。悪化した業績を立て直す仕事は、「悪いところを良くして人の助けになる」という点で、彼女にとっては高校時代に憧れた仕事と同じだったのだ。

進路指導担当の前岡克美キャリアセンター長
進路指導担当の前岡克美キャリアセンター長

 なぜその職業に就きたいのか、なぜそれをやりたいのか。同校では、生徒が自分の夢や希望が生まれた理由を見つめさせるようにしている。前岡キャリアセンター長は「どんな子も、成長したいと切ないくらいに思っています。私たちはその気持ちを尊重し、夢に近付けるよう全力でサポートします」と力強く話した。

 進路指導の行事として大きな役割を果たす「卒業生を囲んで」。入試対策部の江藤健部長は「実は卒業生も講師に選ばれることを楽しみにしている。一種のステータスなんです」と明かす。選ばれし先輩たちのリアルな言葉は、必ず後輩たちの糧となるはずだ。

 (文・写真:佐々木志野、一部写真:中村中学校・高等学校提供)

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38667 0 中村中学校・高等学校 2018/07/23 05:20:00 2018/07/23 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180717-OYT8I50034-T.jpg?type=thumbnail

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