教員と生徒の信頼関係が新時代のチカラを育てる…中村

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 中村中学校・高等学校(東京都江東区)では今年度、専修大学附属高等学校校長の藤村富士男氏を新校長に迎えた。1909年に創立された女子の伝統校である同校は今、「機に応じて活動できる女性の育成」という建学の理念を、新しい時代に生かした五つの「智力(ちりょく)」の養成として進めている。これらの取り組みをどう発展させ、これからの女子教育をどう作っていくのか、藤村校長に抱負を聞いた。

教師と生徒「1対1」の結びつきを重んじる

「教師と生徒が1対1の結びつきを持つことが大切」と話す藤村校長
「教師と生徒が1対1の結びつきを持つことが大切」と話す藤村校長

 藤村校長は法政大学文学部を卒業後、専修大学附属高等学校(旧京王商業学校)に赴任して校長まで務め上げ、2003年に中村中学校・高等学校の評議員となった。その後、理事などを歴任し、今年度、校長に就任した。長いキャリアを通して培った藤村校長の信念は、「教師と生徒が1対1の結びつきを持つ」ことの大切さだという。

 「どんな生徒にも長所があります。それを見つけ伸ばすには、生徒を一人の人格として認め、教員も一人の人間として向き合う必要があります。少子化で個人の力を一層生かさねばならない時代、こうした教育はさらに重要となるでしょう」

 前任校で校長だった2002年に、その信念をあらためて強いものとした出来事があった。戦争で卒業式ができなかった1945年の卒業生を集めて式を行ったことだ。

 「私より年上の方々が、教員から証書を受け取り、涙するのを見て、学校で結んだ師弟の絆が一生の財産となるのだと痛感しました」

 評議員として中村に来た時も、同校の校風に強い共鳴を覚えたという。「教員が非常に真剣に生徒と向き合い、生徒も素直な心で教えを受け止める。日常会話も気さくに行い、教員の人間性を学んでいる。まさに『1対1』の結びつきだと思いました」

 同校で25年の教師歴を持ち、教頭として2年目を迎えた江藤健教頭も、教員と生徒のつながりを学校の特色に挙げる。

 「心がけているのは『生徒に軸足を置いて行動する』ことです。大人の都合を優先すると必ず態度に表れ、生徒にも分かります。各教員がそれを自覚し、担当クラスや教科、校内活動で接する生徒一人一人のことを親身に考えて対話する。何かあれば、その生徒を知る教員同士で協力しつつ対応します」

 個人面談は通常、年に2、3回だが、必要に応じて5、6回になることも少なくない。放課後の補習も一律ではなく、生徒の申し出に応じて随時行うという。

 「時間を設定すると『補習でやればいい』と授業に身が入らない生徒が出るため、『疑問があれば、いつでも職員室においで』という仕組みにしました。女子なので友達と連れ立って来ることが多く、2、3人なら廊下の自習スペース、それ以上なら教室へ行き、塾の少人数指導のように教えます」

数字では測れない五つの“智力”を伸ばす取り組み

「国内サマースクール」では留学生に深川のまち案内などを英語で行う
「国内サマースクール」では留学生に深川のまち案内などを英語で行う

 同校は、「機に応じて活動できる女性の育成」という建学の理念を踏まえ、五つの「非認知型“智力”」に着目した取り組みを行っている。その目的について江藤教頭は「数字では必ずしも測れない知性と精神の力が、今後の不透明な時代には必要」と語る。

 一つ目は「地球規模で考え、足下から行動を起こすチカラ」だ。

 「これからは広い視野で世の中を知る一方で、自分の周りの物事もきちんと知り、伝える意識を持つことが大切。グローバル化とは外国のことばかりに関心を持つことではなく、日本のことを正しく知り、それを伝えられること」と江藤教頭はその意義を説明する。

 この「チカラ」を鍛えるプログラムが「国内サマースクール」だ。中1で学校の地元・深川の歴史や文化を実地に調べる。中2では留学生を招き、深川のまち案内や魅力のプレゼンテーションを英語で行う。その経験は中3以降の英語研修や海外留学にも生きるという。

 二つ目は「人と上手な関係を構築するチカラ」。

 「AIの時代になっても、世の中は人と人の関係で動きます。ある卒業生が、『会社でも人間関係づくりは難しい。その方法や距離感覚を、中村で身に付けられて良かった』と言っていました。まさに学校はそうした訓練の場でもあります」

 この「チカラ」を身に付ける取り組みは、中学各学年で、スクールカウンセラー監修のもとで行う「グループワーク」の授業。「デートの断り方」という単元では、デートに誘う男性と断る女性の役を演じ、数パターンのやりとりをして、デートに限らず互いに悪感情の残らない断り方を体得する。「テーマがテーマだけに最初はキャーキャーと大騒ぎですが、関心も高いですね」

 また、自他の理解を深める「私のトリセツ」、短所を長所と捉え直す「リフレーミング」など、心の成長につながるテーマを盛り込んだ授業が学年あたり3、4回行われる。

 三つ目は「思考・判断し文字化するチカラ」。

「クリティカルシンキング」で「思考・判断し文字化するチカラ」を鍛える
「クリティカルシンキング」で「思考・判断し文字化するチカラ」を鍛える

 江藤教頭は「正解のない問いに満ちた時代、多面的な視点や批判的思考力、そして自分の考えを伝える能力が必要」と話す。その主な取り組みは、国語で行う「クリティカルシンキング」の授業だ。例えば「必要なことが伝わらない文化祭のポスター」や、「一人で初めて電車に乗る夏休みの計画」などを素材に、問題点を話し合って改善したり、ディベートを行ったりする。従来は中1、2年だけだったが、今年度から中3にも拡大し、さらに力を入れる。

 四つ目は「考えて行動するチカラ」。

 「自分の考えを行動に移すとき、肝となるのは自己管理能力です」と江藤教頭は話す。その能力を鍛えるために同校は、手帳教育プログラムの「NOLTYスコラライト」を活用している。週ごとの予定や目標、振り返り、次への対策を記入する欄があり、学校生活の中で自己管理能力を身に付ける仕組みだ。

 「手帳は毎週、担任が回収し、書き方のアドバイスなどを書き込みます。生徒の活動を知ることで、声がけのきっかけにもなります」

 五つ目は「自らサイクルを回し続けるチカラ」。

 この「チカラ」の学びは、主に高校の「探究授業」で実践されている。「本校では探究活動を人間教育と捉え、『問いを立てる』→『情報収集・整理』→『まとめ』→『発表』→『自他による評価』→『さらに新たな問いへ』というサイクルを指導します。こうした探究のサイクルやほかにもさまざまなサイクルが身に付けば、社会で直面する多くの問題に対処できるはずです」

「良き女子教育が必要とされるのはむしろこれから」

五つの「智力」を伸ばす取り組みについて話す江藤教頭
五つの「智力」を伸ばす取り組みについて話す江藤教頭

 これら五つの「チカラ」を伸ばすために、江藤教頭が不可欠と考えているのは、教員と生徒の信頼関係だ。「信頼する教員のアドバイスを生徒は素直に吸収しますし、励ましや称賛はモチベーションになるからです。それが大きな成果につながります」

 このほかにも同校は新しい時代に対応した教育を推進するために、前述の「探究授業」に、自らの将来の志望をテーマに関連付ける「キャリア探究」や、企業と連携するPBL(課題解決型学習)を導入する。また、近隣の「K.インターナショナルスクール東京」が校舎改装のため学校施設の一部を共用することになり、これを機に生徒の交流活動を進める予定だ。同時に、築20年を迎えた本校舎や校庭の改修も進め、より快適な学園環境を目指す。

 江藤教頭は「生徒一人一人に目を配る仕組みが確立しており、どんなタイプの生徒も必ず居場所が見つかる学校です。多くのお子様の入学を待っています」と胸を張った。

 藤村校長は前任の元男子校で教え、そこで共学化を経験し、現在は女子校に関わっているという経験から、「女子同士のグループは力関係に依存せず、協調して方向性を見いだす力にたけています。日本の教育は共学化の趨勢(すうせい)にありますが、良き女子教育が必要とされるのはむしろ、これからと考えます」と語る。「教員全体で誠実に、そして厳しさも忘れず生徒と接していきたい」

 (文:上田大朗 写真:中学受験サポート 一部写真提供:中村中学校・高等学校)

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1257826 0 中村中学校・高等学校 2020/06/04 05:21:00 2020/06/03 17:27:16 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/06/20200603-OYT8I50040-T.jpg?type=thumbnail

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