BYOD導入で生徒とともに広げる学びの可能性…湘南学園

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 湘南学園中学校高等学校(神奈川県藤沢市)は昨年度、高校1年生を対象に、生徒が所有するICT端末を使うBYOD方式でのICT教育を開始した。使用する端末を指定する学校が多いなか、同校では使い慣れた端末を活用した授業によって、生徒の86%が「力が伸びた」と感じているという。新型コロナウイルス対策のオンライン授業の状況も含め、新たな学習スタイルについて聞いた。

生徒自身による「授業作り」にBYODが威力

ICT教育の推進を担当する山田美奈都教諭
ICT教育の推進を担当する山田美奈都教諭

 湘南学園は、創立85周年にあたる2018年を機に、ICT教育を本格化した。全教員と高1生にiPadを貸与して、授業に活用する取り組みを始め、翌19年には、高1生を対象に、生徒が自分の端末を学校に持ち込んで使うBYOD(Bring Your Own Device)に踏み切った。

 なぜ、BYODに切り替えたのか。同校のICT教育を推進している山田美奈都教諭によると、生徒にiPadを貸与して使わせていた時は、私物でないためか愛着が薄く、家に忘れてきたりするケースが目立ったという。また、学習に必要な最低限のアプリしか入れていなかったため、生徒から「使いにくい。自分のスマホを使わせてほしい」という声が多かったそうだ。

 反対に、BYODにすれば、使い慣れた端末だけに、調べ物や動画を使ったプレゼンテーションなどがスムーズに行えるうえ、生徒それぞれが自分のペースで能動的に学べることなどの利点があることが分かった。

 教員間では当初、生徒がスマートフォンやタブレットを校内で使用することに対する懸念の声もあったが、「端末を使いこなすスキルやマナーはこれからの社会に必要なものであり、授業にどう生かすかを生徒と一緒に考えよう」という意見でまとまったという。

BYODを生かして「生徒自身が授業を作る」学びに取り組む斉木翔平教諭
BYODを生かして「生徒自身が授業を作る」学びに取り組む斉木翔平教諭

 保健体育を担当している斉木翔平教諭は、BYODを生かして「生徒自身が授業を作る」学びに取り組んでいる。具体的には、クラスをいくつかのグループに分けて学ぶべき単元を割り振り、グループ内で理解を深め、資料を集めて発表し、クラスメートに伝えるという方法だ。評価も生徒同士で相互に評価させる。

 この調べ物や発表資料づくり、分かりやすい伝え方を工夫するために威力を発揮するのがBYODだ。「『必要だと思うなら端末を使ってもいい』と説明したところ、全員が端末を使うことを選びました」と斉木教諭は話す。

 高2の池田純也君は「担当する単元について調べていく中で、写真や図、動画を見せた方が説明しやすいし、クラスのみんなにも伝わりやすいと考えて、端末を活用しようと思いました」と話す。

 同じく高2の瀧川理紗子さんは、「先生たちのようにプリントを配って説明するスキルはないので、『どうしようか』とメンバーと話し合い、その結果、イラストや動画を見せて説明することに決めました」と言う。

BYODを導入した授業で学び合う生徒たち
BYODを導入した授業で学び合う生徒たち

 BYODはもちろん、他の教科でも活用されている。瀧川さんは、現代文の授業について「以前は先生の質問に対して1人が発表して、それへの先生の評価を聞きながら、自分の答えと照らし合わせていたので、本当に合っているのか不安な部分がありました」と言う。しかし、BYODの導入後は、端末から送った解答に対して、先生が個別に添削して返してくれるため、どこが分かって、どこが分かっていないかが明確になったそうだ。また、古文の授業でも、聞いたことのない植物名などが出てきた際、使い慣れた端末ですぐに検索し、イメージを確かめられるという。

 池田君は、「先生が板書しているとき、分からない用語が出てきても、すぐに調べられることがメリット」と話す。板書については、教室の後ろの方の席だと文字が見づらいという問題があったが、BYODを導入してからは、内容をデータ化して生徒一人一人の端末上で見られるようになった。字が小さい先生には、データ化して配信してくれるように生徒から要望することもあるといい、こうした点でも生徒の視点が、より良い授業づくりにつながっているようだ。

コロナ対応のオンライン学習にも柔軟に対応

オンラインによる新たな学習スタイル
オンラインによる新たな学習スタイル

 同校では、新型コロナウイルス感染に伴う休校への対応として、グーグル社が提供しているグループウェアの「Classroom」を使い、中1から高3まで全学年の生徒にアカウントを提供し、オンライン学習への移行を進めている。

 オンライン授業へ移行するにあたっては「安心、安全、適度」を心がけているという。BYODによる授業の経験から、生徒の自宅のWi-Fi環境などに配慮し、全員の参加状況を見ながら、ゆっくりと移行を進めているところだ。また、生徒たちが同時に同等の環境で端末を使えるとは限らないことから、リアルタイム型の双方向授業は一部にとどめ、動画配信や課題配信による学習方式を中心に据えている。

 午前中は課題を配信し、提出されたものにコメントを付けて返す。午後は特別講座として、体育や音楽などの実技科目を中心に授業動画を配信し、自宅での時間を豊かに過ごせるように配慮している。

 池田君は、「普段の授業とは違いますが、提出した課題には先生からアドバイスがもらえるので、つながっているという安心感があります」と話す。瀧川さんは「斉木先生が配信してくださった体操の動画を見ながら、母と一緒に汗を流しました。また、授業の解説動画の中に先生の日常が垣間見えたりすると、人柄がうかがえて親しみが湧きます」と話す。

 部活動では、生徒の自主性を重視し、各部で「Classroom」を作るようにした。それぞれにミーティングを行うほか、キャプテンからメッセージを送ったり、上級生が下級生にトレーニングの方法を動画で紹介したりして、積極的に活用しているという。

生徒の86%がBYOD活用の授業で「力が伸びた」

 斉木教諭が昨年度を振り返って授業のアンケートを取ったところ、生徒の95%が「BYODを活用できた」と回答した。また、自分の端末を利用した授業で「力が伸びた」と答えた生徒も86%に上った。一方で「グループワークにうまく入れない」「グループ全員が同じ評価になる」などの不満もあったといい、新たな課題も見えてきている。

 「1年間、BYODを活用した授業を行ってきて思うのは、個人所有の端末を学びに生かすためには、生徒との合意形成が大事だということです」と斉木教諭は話す。「デジタルネイティブである生徒たちは、端末を文房具の一つのように使いこなしています。彼らからより有効な使い方を教わる面も多々あるので、今後もどんな時に、何のためにICTという道具を使うと学びが深くなるのか、生徒たちと一緒に考えていきたい」

 休校期間に実施したオンライン授業の経験も含め、同校のICT教育はさらに進化していくことだろう。

(文:山口俊成 写真提供:湘南学園中学校高等学校)

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1296115 0 湘南学園中学校高等学校 2020/06/24 05:21:00 2020/06/24 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/06/20200623-OYT8I50040-T.jpg?type=thumbnail

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