新しい入試で集まった予想外に多様な個性…八王子実践

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 八王子実践中学校(東京都八王子市)は、従来の2科・4科入試に代えて、今年度から「自己表現入試」など3種の新しい入試を導入した。系列高校の教育改革と連動し、学力の強化や特色ある学校づくりを進めるのが目的だ。新しい入試で入学してきた1年生たちは、多様な個性を発揮して日々、教室に新風を吹き込んでいるという。その授業風景を紹介するとともに、来年度に導入予定のもう一つの新入試などについて話を聞いた。

物おじせずにどんどん自己アピールする生徒たち

「物おじせず自分をアピールできる生徒が集まった」と話す伊藤教諭
「物おじせず自分をアピールできる生徒が集まった」と話す伊藤教諭

 新しい入試は、系列校である八王子実践高等学校の教育改革に連動して導入されたものだ。入試広報部部長の伊藤栄一郎教諭によると、高校では4年ほど前から難関大学進学を視野に入れて、放課後・長期休暇中の講習会を充実させるとともに、大学生チューターによる学習サポート体制を作ってきた。また、施設面でも放課後の学習スペース「J-Lab.(ジェーラボ)」を整備している。

 「こうした施策が実り始め、昨年度はGMARCHへの合格者数が前年の4倍を超えるなど、実績が上がってきています。そこで中学でも、学力の強化やより特色のある学校への脱皮を図るため、入試改革に踏み切りました」

 今年度に実施した中学の新しい入試は、「英語入試」「適性検査型入試」「自己表現入試」の3方式だ。「英語入試」は帰国生などの受験を念頭に、実用英語技能検定3、4級レベルの筆記試験と、ネイティブの講師による面接を行う。「適性検査型入試」は近隣の中高一貫進学校との併願を想定し、理科・数学の文章題及び長文を読んだ上での作文を課す。そして「自己表現入試」は、小学校で取り組んだ活動や自己アピールの文章を書いたエントリーシートを事前に提出させた上で、その内容について入試当日に面接を行う方式だ。

 新入試を実施した感触は良く、例年より多い20人が入学した。中でも、「自己表現入試」の受験者が多数を占めたという。

 「自己表現入試の大きな狙いの一つは、実績ある女子バレーボール部の強化のために、バレーで頑張ってきた子を多く迎えることでした。ところが、予想を超えて多様な得意分野を持つ受験者が集まりました。乗馬や書道、ダンス、歌、剣道……。面接官の前で地域芸能の『ひょっとこ踊り』を披露した子もいて、これは面白い学年になるぞと思いました」

 こうして入学した新1年生たちは、昨年までの入学者と異なる傾向が感じられるという。

 「自己表現で入ってきただけに、物おじせずにどんどん自己主張や自己アピールをします。それに、きちんと得意なことを持っている子は、他のことが得意な子に敬意をもって接します。教え合いも盛んです。ですからこのクラスには、いじめがほとんど見られません」

少人数教育のメリットできめ細かい学習サポート

タブレットで答え合わせをする生徒
タブレットで答え合わせをする生徒
電子黒板を活用した授業
電子黒板を活用した授業

 2学期が始まったばかりの9月6日、新入試1期生の授業を見てきた。

 理科の授業では、1学期末に行われた学力テストの復習として、「有機物の燃焼」のプリントに取り組んでいた。授業は、問題を解いた生徒が発表し、先生が正解を解説するという一般的な流れだが、解いている途中から多くの生徒が次々と質問したり、意見を発表したりする姿が見られた。先生への質問や、「分かった」「分からない」などの発言をする際も物おじするところがない。

 歴史の授業では、学力テストの結果を踏まえ、「歴史の何が苦手かを話し合う」グループ学習が行われた。理科同様、生徒の発言は盛んで、黙っている生徒を見つけるのが難しいくらい。グループのまとめ役を買って出る生徒もいる。発表時も、「先生、こっちに当てて」と積極的に手を挙げたり、班全員で「せーの」と息を合わせた発表をしたりするなど、活気に満ちていた。

 授業ではタブレット端末も活用されていた。今年度から1人1台体制を整え、電子黒板を併用したICT授業を行っている。生徒はタブレットに表示されたプリント問題や資料に電子ペンで書き込んだり、歴史用語をインターネットで調べたりと、自然に使いこなしている。授業の他に自習や教員との連絡にも役立っているという。

 「授業の効率は非常に上がりました。プリントの配布、回収の手間はなく、学習内容を教員や保護者も共有できる。何より、今後当たり前になるICT機器を使い慣れておくメリットは大きい。ノートと鉛筆から、タブレットと電子ペンの時代です」

 新しい入試の導入は、多様な個性を持った生徒たちとの出会いをもたらしたが、同時に課題も見えてきたという。伊藤教諭は「さまざまな試験で入ってきた生徒たちなので、授業の理解度にばらつきがあります」と指摘する。

 この課題に対して同校は既に、生徒の個性や習熟度を踏まえたきめ細かい学習サポートで対応を始めている。

放課後の学習スペース『J-Lab.』
放課後の学習スペース『J-Lab.』

 放課後の学習スペース『J-Lab.』を活用し、外部講師や教員による放課後の特別講習『J-plus.jr(ジェープラス・ジュニア)』や、夏・冬休みの短期講習『J-Trial(ジェー・トライアル)』などの学習プランで理解度の差を埋めていくという。また、遅れ気味の生徒に対しては、指名制の講習会を実施してフォローアップしている。

 その際、個々の生徒の学力の違いをいかに把握するかがカギになる。「得意なことはアピールしますし、逆にあまり口にしない事柄は苦手なことが多い。それを見極めて一人一人対処する必要があります。各学年15~20人の少人数教育だからこそできることです」と伊藤教諭は話す。

 この少人数教育のメリットを生かして、同校は今年から「3学年協働学習」を始めた。中学生全員で縦割り班を作り、共通の課題に取り組む学習だ。

 「1学期には、鎌倉への学習旅行を協同学習で行いました。事前学習や見学コース作りなどで、上級生が1年生にレクチャーやアドバイスを行いました。彼らが先輩としていいところを見せたいと頑張る一方、今年の1年生は気後れなく意見を言う。互いに良い刺激になっているようです」

 このほかにも、百人一首大会や合唱コンクール、イングリッシュワードコンクールなど、さまざまな学校行事で協働学習を行う予定だ。

 「自習スペースが充実していると聞いて」同校を選んだという、1年生の箕曲良介君は、「1クラスしかないので、みんなと仲良くなれて楽しい。他の学年の人とも、休み時間や放課後によく話します」と言う。少人数教育ならではの親密な距離感が、多様な個性を持った生徒たちの交流を促進するようだ。

満を持して「プログラミング入試」も導入

 同校は来年度、三つの入試方式にもう一つの新しい入試方式を加える。タブレットを使ってプログラミングした作品を、面接でプレゼンテーションする「プログラミング入試」だ。小・中学校でプログラミング教育が必修化される流れを踏まえており、これも高校の教育改革と連動している。

 「高校では来年度から、これからの時代に対応した学びを行う『総合進学コース』が新設されます。そのメインとなる『先進科学クラス』は、AIやロボット、IoT関連の進路を目指すクラスで、近隣の東京工科大学や日本工学院八王子専門学校と連携し、聴講や実技体験ができるカリキュラムを準備しています。プログラミング入試の受験者は、このコースへの内部進学を想定しています」

 入試から始まる中学の変革に、伊藤教諭は大きな期待をかける。

 「今年集まった個性的な生徒が共生する様子を目にして、楽しみになっています。来年度は4形式の入試でさらに多様な生徒が来るでしょう。皆が自分の強みを生かし、磨き合う学校にしていきたい」

 (文・写真:上田大朗 一部写真提供:八王子実践中学校)

 八王子実践中学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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911103 0 八王子実践中学校 2019/11/25 05:22:00 2019/11/25 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191121-OYT8I50019-T.jpg?type=thumbnail

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