実験とリポート添削指導が記述力、思考力を磨く…都市大付

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 東京都市大学付属中学校・高等学校(東京都世田谷区)は、中学3年間で約60テーマの科学実験を行う。教室での理科の授業とは別に、少人数で行われる実験とリポートの個別添削指導により、生徒の記述力、論理的思考力は大きく向上するという。同校で化学を担当する桜井利昭主幹教諭に科学実験の意義と内容を聞いた。

実体験を通して知識を身に付ける

科学実験の意義について話す桜井主幹教諭
科学実験の意義について話す桜井主幹教諭

 「実験は、なかなか教科書に書いてある通りの結果にはなりません。そこから、生徒たちは『なぜだろう』と考え始め、自ら探究する姿勢が芽生えます」。桜井主幹教諭は科学実験の意義についてこう話す。

 同校では専用の設備や実験器具を備えた実験室を使い、3年間で約60テーマの実験を行う。これだけ充実した実験が行えるのは、中1で週1時間、中2、中3では隔週で2時間、理科の授業とは別に実験の時間が確保されているからだ。

 「中学受験を経験した生徒たちはとてもよく勉強していて、理科の知識も豊富です。しかし、多くは教科書や参考書によるもので、体験を伴っていません。そもそもサイエンスは実験と観察から法則を見いだしてきた歴史があり、その基本に戻って実体験を通して知識を身に付けることを大切にしています」

 この3年間の実験授業を経験した生徒に、当時を振り返ってもらった。

 現在、高2の佐瀬光雄君は中学時代の実験についてこう話す。「実際に体験することで、教科書だけで学ぶよりも理解が深まると実感しました。中2の化学の実験でステアリン酸の単分子膜を利用してアボガドロ定数(6.02×10の23乗モル)を求めた際は、丁寧な操作を心がけたところ、5.8×10の23乗という近似値が得られ、本当にそうなんだという驚きを覚えました」

一人一人が取り組む実験と個別リポート指導

 実験の授業はクラスを2分割して、20人前後の少人数制で行われる。実験器具は1、2人で1セット使用できる。桜井主幹教諭は「グループで行うと実験が得意な生徒に任せてしまいがちですが、ここでは自分でやらなければ進みませんから、自然に自主性が養われます」と話す。

 担当教員の目が届きやすいのも少人数授業の大きなメリットだ。理科や実験が苦手な生徒に対して、きめ細かいサポートをすることもできる。

 実験は中1から段階を踏んでステップアップしていく。中1では植物や動物の観察から始まり、学年の終わりにはマウスの解剖で哺乳類の体の仕組みを理解する。中2では授業とも連動しながら、化学の知識を深め、さまざまな実験器具の扱いや正確に実験を行う方法などを習得する。中3の物理では測定したデータを数学的に解析した上で、結果を考察することが中心になる。

 桜井主幹教諭は「解剖実験では生きているマウスを使うのですが、事前に命の尊さについてしっかりと学びます。実験の意味を生徒もよく理解して、みな真剣に取り組んでいます」と話す。

 佐瀬君も「これから先、生命倫理に触れるような機会があるとしたら、この授業で学んだことがきっと役立つと思います」と話した。

生徒の記述力を伸ばすリポート指導

銀鏡反応を使って鏡を作る中学2年生たちの化学実験
銀鏡反応を使って鏡を作る中学2年生たちの化学実験

 取材に訪れた日は、中2の化学実験で、銀鏡反応を使った鏡作りが行われていた。

 銀鏡反応の実験では、硝酸銀水溶液と還元剤であるブドウ糖水溶液の化学反応を利用して、ガラス板に銀を付着させる。生徒たちはガラスの片面だけに銀を付着させるため、反対面にブックカバーを貼り、用意した容器の中に二つの水溶液とガラス板を入れて、還元反応を見守っていた。

 実験後には、リポートを提出することが必須だ。担当教員による個別の添削指導によって、リポート執筆の方法が身に付くだけでなく、着眼点や発想力も広がる。

 「中学では科学的な思考の基礎を身に付けるため、リポート作成用のプリントに沿って、観察→考察の流れを記述します。見たことや気付いたことを相手に伝わるように書くのはなかなか難しいので、最初は苦労していますが、添削と修正を繰り返す中で、どの生徒もどんどん正確にリポートが書けるようになります」

 佐瀬君はリポートについて「中学では書けるスペースが決まっていますが、論理的に正確に記述すれば、決められたスペースの中でも書けるものだと気付き、逆に大事なポイントをとらえる力が鍛えられました」と話した。

科学実験で育てた力は文系でも役立つ

実験をテキパキと行い、授業中にリポートを書き始める生徒
実験をテキパキと行い、授業中にリポートを書き始める生徒

 桜井主幹教諭は2020年に予定される新しい大学入試について「求められているのは、論理的思考力、記述力、さらに他者と協働して主体的に学習する姿勢だと捉えています。これらはまさしく本校が科学実験を通して育ててきた力です」と自信を見せる。

 ただし、同校の理系教育は、理系への進学を前提とした教育と同じではない。例えば、中3では1年間のキャリアスタディの中で、社会人として活躍しているOBの講話を聞いたりして、自分の将来の生き方を考える。また、高1では「中期修了論文」の作成があり、各自興味があるテーマを設定し、仮説を立て、文献調査やフィールドワークを行って、4000字以上の論文を執筆することになっている。

 「生徒はキャリアスタディで自分の生き方を考え、中期修了論文では将来の目標に関連したテーマを選ぶことが多いのですが、その過程で自分は何を学ぶ必要があるかが明確になっていきます」。生徒たちは科学実験で培った主体性や論理的な思考力を駆使して将来、自分が学ぶべきものを考え、進路を絞る。その結果、約半数の生徒が文系を選択するという。

 「目標を明確にした上で進路を選択しているので、ぶれずにやり遂げる生徒が多いです」と桜井主幹教諭は話す。「文系に進んだとしても、科学実験とリポートで身に付けた総合的な力は大きな強みになってくれるでしょう」

 (文・写真:山口俊成)

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695130 0 東京都市大学付属中学校・高等学校 2019/07/19 05:22:00 2019/07/19 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190717-OYT8I50017-T.jpg?type=thumbnail

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