自ら学ぶ意欲を育てる「年間研究」…日本女子大附

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 日本女子大学附属中学校・高等学校(川崎市)は、中3生全員が自由にテーマを選んで1年間調べていく「年間研究」を約30年間続けている。その学びは、中学3年間の集大成であり、開学以来の教育方針「自念自動(自ら考え、自ら学び、自ら行う)」を体現している。「年間研究」の内容や、この研究をどう指導しているのかについて聞いた。

自由に選んだテーマを1年間調べる

中3生全員が取り組む「年間研究」
中3生全員が取り組む「年間研究」

 1901年、日本女子大学と同時に創立された高等女学校を前身とする日本女子大学附属中学校・高等学校は、創立者の成瀬仁蔵が語った、「自ら考え、自ら学び、自ら行う」という意味の「自念自動」を教育の根幹としている。この精神の下に約30年前、中3生全員が取り組む「年間研究」が始まり、脈々と続いている。生徒各自が自分の好きなことや興味のあることを、ほぼ1年がかりで調査・研究し、リポートにまとめたり、作品を制作したりする。中学3年間の学習の集大成というべき位置付けになっている。

 「年間研究」の進め方について広報部主任の峯岸憲一教諭は、「まず4月に研究テーマと、指導を受ける担当教員を生徒が自分で決めます。テーマは限定せず、自分が深く学びたい、調べたいと思ったことを自由に選ばせています」と説明する。

 「おもに夏休みを利用して、生徒によっては取材やインタビューを行いながら研究を進め、9月に途中経過をクラスで発表します。基本的に生徒の自主性を大切にしていますが、今はインターネットなどで何でもすぐに調べることができてしまうので、なるべく自分の足で調べるよう指導しています」

 生徒たちは1月に自分たちの研究や作品を提出し、その中から、教員が数点の優秀作を選ぶ。優秀作をまとめた生徒は、2月に開催される「年間研究発表会」でプレゼンテーションをする。

「年間研究」の進め方について話す峯岸教諭
「年間研究」の進め方について話す峯岸教諭

 2017年度、研究成果を披露したのは8人だった。その中で「着物の生地調べの旅―染め・絞り―」というテーマで研究、発表を行った生徒は、京都など、染めの産地を実際に訪問し、地元の歴史や染色の特徴を調べた。リポートには写真だけでなく、自分で染めた色とりどりの布も添えられていた。着物という伝統文化を理解するにあたって、工房での染色体験を交えることにより、資料や聞き書きからだけでは得られない厚みを加えていたのが印象的だった。

 発表されなかった作品の中にも旺盛な探究心をうかがわせるものがある。「日本の貧困問題を考える」という研究を行った生徒は、中2の総合学習で行われた国際理解教室の授業で日本の貧困の現状について学んだことが、研究のきっかけになったという。養護施設に赴いて、子供たちの進学やいじめについて現場の生の声を聞く一方、厚生労働省の職員にメールでインタビューし、政策や今後の展望について国の考えを確かめるなどしてリポート化した。アポイントメントを取るところから自主的に取材を進める行動力に驚かされた。

 他にも、全国の駅弁を調べ、その歴史や使われている地元の食材をまとめた「駅弁から探る地域性」、高尾山に8回登って季節ごとの植物を観察した「高尾山の魅力」など、研究の対象はさまざまだ。

 町妙子副校長は、「毎回どんなテーマが出てくるか楽しみです」と顔をほころばせる。「生徒自身が興味を持ったテーマなので、本当に自主的に取り組みます。私たち教員が教えられるようなことも多々ありますよ。研究はすべて展示するので生徒同士の刺激になりますし、下級生たちにとっては先輩の研究を見て、自分はどんな研究をしようかと考える機会になっているようです」

「気付き」を広げる多彩な体験学習

中3で行われる「越後農村体験」
中3で行われる「越後農村体験」

 もちろん、何の準備や心構えもなしにこうした「年間研究」に取り組めるわけではない。同校は、「年間研究」のきっかけや「気付き」となるよう、中学の3年間を通してさまざまな体験や観察の機会を提供している。

 峯岸教諭はこう話す。「例えば、中学の理科では、学校の周りの豊かな自然環境を利用した観察授業が多いですね。実験は年間で40回以上行います。また中3の希望者を対象に、東京地方裁判所で裁判の傍聴をしています。2017年度は約160人が参加し、グループに分かれて出入国管理法や覚醒剤取締法に関する裁判を傍聴しました。裁判所では生徒たちはとても緊張しますが、学校に戻ると裁判について活発にディスカッションをしていたようです」

 校外学習の機会も重要だ。中1の夏休みには自然の中で友人たちと親交を深める2泊3日の「軽井沢寮生活」、中2の9月には3泊4日の「東北校外授業」が実施される。

 東北への旅は50年前から続く伝統的行事だという。「世界遺産の平泉では藤原氏の歴史を訪ね、岩手・花巻では宮沢賢治や高村光太郎といった文人の足跡に触れます。さらに奥羽山脈の自然環境や地形から、鉱山による公害まで、教科を超えてさまざまな学びを体験できるのが東北校外授業の醍醐(だいご)味です」と町副校長は説明する。

オリジナル教材の「ライティングリテラシー」
オリジナル教材の「ライティングリテラシー」

 さらに中3になると2泊3日の選択校外授業がある。「広島平和学習」「関西歴史探訪」「越後農村体験」「ブリティッシュヒルズ」「北陸 自然と文化の旅」の5コースから行きたいコースを選択する。町副校長は「自分で学びたいコースを選ぶため、生徒たちの姿勢は1、2年の時よりも真剣ですね。現地の人から話を聞く時も、いつも以上に身を乗り出しています。こうした体験授業は、自分で何かを考える一つのきっかけになっていると思います」と話した。

 これらの体験授業では、毎回必ず事前学習を行い、実施後にリポートを提出させる。そのために同校は、「ライティングリテラシー」というオリジナルの教材を用意しており、全校生徒に配布して1年生の時からリポートの書き方をしっかり指導している。

 リポート作成の意義について町副校長は、「論文やリポートを書き、発表する。これを繰り返すことで、主体的に考え、自分の言葉で自分を表現する力が自然と身に付いていきます。最初は書くことが苦手だった生徒も、いつの間にか時間を上手に使ってしっかりと書けるようになっていきます」と説明した。

いつまでも学ぶ意欲を持てる人に

「いくつになっても学ぶ意欲を持ち続ける女性を」と語る町副校長
「いくつになっても学ぶ意欲を持ち続ける女性を」と語る町副校長

 町副校長は自身も同校の中学、高校、大学の卒業生だ。10歳くらいの時に、伯母に連れられて目白キャンパスを訪れたことが、同校を知ったきっかけだったという。伯母は当時40代だったが、日本女子大の通信教育を受けていた。

 「まだ小学生でしたが、大人になってからも学べる学校なのだということを知って、強い感銘を受けました。与えられるだけでなく、自ら学べるのが日本女子大附属の魅力です。私や伯母がそうだったように、いくつになっても学ぶ意欲を持ち続ける女性を育てたい。そのために一人一人の興味を育て、もっと伸ばしたいと考えています」

 同校で6年間を過ごした後、自ら学ぶ姿勢は彼女たちの大きな財産となっているだろう。

 (文・写真:石井りえ、一部写真:日本女子大学附属中学校・高等学校提供)

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16632 0 日本女子大学附属中学校・高等学校 2018/04/16 05:21:00 2018/04/16 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180413-OYT8I50046-T.jpg?type=thumbnail

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