舞台は海外、ハイレベルな英語授業で国際的リーダーに…海陽学園

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 全寮制の男子中高一貫校である海陽中等教育学校(愛知県蒲郡市)では、生徒たちが寮生活の先輩、後輩関係の中で切磋琢磨(せっさたくま)し合い、国際的な学術競技大会で目覚ましい活躍を見せている。金・銀メダルを獲得した国際数学オリンピックへの取り組みと特別英語クラス「AEC(アドバンスト・イングリッシュ・クラス)」の授業内容を通して、「国際社会で通用するリーダーの育成」を目標とする同校の校風と教育について報告する。

先輩の活躍に触発され数学五輪で金・銀メダル

 同校の兒玉太陽(こだまたいよう)君(高3)と平石雄大(ひらいしゆうだい)君(高2)は、イギリス・バースで7月に開催された第60回国際数学オリンピック(以下、数学五輪)に出場し、兒玉君は金メダル、平石君は銀メダルをそれぞれ獲得した。

 兒玉君は「中学2年生からの挑戦の集大成で、金メダルという結果を出せた」、平石君は「ベストを尽くしての銀メダルなので素直にうれしい」と、ともに喜びを語った。特に兒玉君は昨年、国際数学五輪に向けて出場メンバー6人を絞り込む合宿に参加したものの、選考から漏れてしまっただけに感激もひとしおだ。

 2人が数学五輪の日本代表を目指したのは、ある先輩の存在を抜きには語れない。「神田先輩の影響を受けて数学オリンピックを目指すようになりました」と、2人は口をそろえて語る。神田先輩とは2017年のブラジル大会で銀メダルを獲得した神田秀峰さん(当時高3、現・東京大学)のことだ。平石君は「海陽での『数オリ』のパイオニア、先達です」という。2人とも中学の頃から、神田さんの所属していた「数学部」に入り、問題を解くうえでのポイントを教えてもらっていた。

 特に平石君は神田先輩から「すごく刺激を受けた」と話す。全寮制の同校では、上級生と下級生が寮で生活を共にする。平石君は神田さんと同じハウス(寮)だったために、神田さんから大会での貴重な経験を聞いていた。また、面白かった問題を紹介してもらうことで、数学五輪への意欲を高めていった。

 平石君は早くも中学1、2年の時に、高校生に交じって国際数学五輪の日本代表を選考する合宿メンバーに選出されている。中3でも、合宿メンバー入りの一歩手前の本選まで進んだ。寮で普段から接する神田さんら先輩たちの活躍が、この早熟の中学生のモチベーションに火をつけたのだ。

寮での密接なコミュニケーションで好結果

寮生活での密接なコミュニケーションの効果を指摘する濤川教諭
寮生活での密接なコミュニケーションの効果を指摘する濤川教諭

 国際大会での活躍を見せたのは神田さんだけではない。3冠を獲得した「坂部先輩」こと坂部圭哉さん(現・東京大学)もレジェンドとして、後輩たちの語り草になっている。坂部さんは、高校2年生だった16年に、国際科学五輪の「化学」と「地学」で金メダルを獲得している。翌17年にも「情報」で銀メダルを獲得し、「化学」で金メダルに輝いた。

 数学部顧問の濤川貴之教諭(46)は「学校側では、数学五輪出場に向けての特別な指導はしていません。参加するように強要もしていません。学校や寮で、先輩と後輩が一緒にご飯を食べて話をするというのが、他の学校と違うのかなと思います」と、寮生活での密接なコミュニケーションの効果を指摘する。

 先輩たちによる海外での果敢なチャレンジの積み重ねは、他の国際大会でも実を結び始めている。兒玉君、平石君を含む同校の生徒8人が、今年5月末から6月にかけて開催された全米科学競技大会「サイエンス・オリンピアド」に出場し、日本チームとしては初めて2競技で10位以内に入った。

 「国際大会は遠い存在だと感じていたのが、先輩たちの活躍のおかげで身近になりました」。平石君は、来年は数学五輪ではなく国際物理五輪に挑戦するつもりだという。

ネイティブの教諭による少数精鋭の英語授業

全て英語で行われる少人数でのAECの授業
全て英語で行われる少人数でのAECの授業

 開校からわずか十数年の同校の生徒たちが海外の大会で好成績を連発しているのは、「国際社会で通用するリーダーの育成」という、創立時からの教育目標が浸透し、伝統となりつつある証しなのかもしれない。

 同校は、海外で活躍できるリーダーの育成に向けて、ハイレベルの英語教育を行っており、海外校との交流も盛んだ。この英語教育の中核となるカリキュラムが組まれているのが、中学・高校での特別英語授業「Advanced English Class(AEC)」だ。この授業の目的は、「読む・聞く・話す・書く」の4技能を高めるだけではない。英語での思考力を育てるために、原書を読み込んだうえでのプレゼンテーションや、ディベート、スピーチをすべて英語で行う。それによって英語の総合的な能力を高めているのだ。

 担当教諭は2人で、ともにネイティブだ。授業には週4コマ(1コマ=45分)が充てられている。「AEC」の授業は中1から高3までの各学年にあるが、受講できるのは1クラス2~9人と少数精鋭だ。当初は帰国生のみを対象にしていたが、途中から海外経験がなくても選抜試験で生徒を受け入れるようになった。ただし、実用英語技能検定2級以上の英語力が必要だ。

 松原優純(ゆずみ)君(高2)と山田倫太郎君(同)は帰国生ではないが、中2から「AEC」に入った。2人とも高い英会話能力があり、取材時も、「AEC」で臨時に講師役を務めていたイギリス人のケンブリッジ大学生ニコラス・マイヤーさん(21)と流暢(りゅうちょう)な英語で会話していた。

寮で生徒たちと交流するケンブリッジ大生のニコラス・マイヤーさん(中央)
寮で生徒たちと交流するケンブリッジ大生のニコラス・マイヤーさん(中央)

 松原君は、アメリカン・アクセントとブリティッシュ・アクセントを使い分けられるという。「イギリスのケンブリッジに短期滞在した時には『無理してブリティッシュ・アクセントで話さなくてもいい』と言われました」と松原君は語る。一方、山田君は3年前に最初の授業で焦りに焦ったことを今でも思い出すという。「いきなりディベートをやったのですが、一言もしゃべれませんでした」。もちろん「今では英語をしゃべるのに、まったく抵抗を感じません」とのことだ。

 AECの授業は少人数のため、受講者は“お客さん”ではいられない。しかも、自分の考えを論理的に整理して、英語で他者に納得させることを求められる。この厳しさこそ、海外での活躍を目指す生徒にとっては「国内留学」ともいえる恵まれた教育内容となる。外交官を目指す松原君は「AECで学べるというのはすごいメリットです」と喜ぶ。

 山田君は理系の研究者志望で、英語の論文を読みこなしたいと思っている。「日本語がまったく分からない本当のネイティブが先生だと、教室もそのまま外国みたいになります。それがいいですね」と語る。また、国際交流プログラムの一環で来校したニコラスさんのような大学生と、授業やハウスで交流を深めることも刺激になっている。

難関校の米スタンフォード大、ミシガン大に合格した生徒も

AECの授業で「思考力を育てたい」と話すラジャディープ教諭
AECの授業で「思考力を育てたい」と話すラジャディープ教諭

 インド出身で「AEC」担当のセート・ラジャディープ教諭(41)は、「AEC」の授業内容について、「ほとんどが大学で講義される内容で、日本の高校では珍しいのではないかと思います。ここで交わされている議論や読んでいるものも相当ハイレベルです」と語る。生徒たちは大学レベルの授業も理解できる英語力を身に付けられるので、海外大の志望者も珍しくない。なかにはアメリカのスタンフォード大学、ミシガン大学、カリフォルニア大学、中国の清華大学、北京大学などの難関校に合格した生徒もいる。

 ラジャディープ教諭は「個人的な考えですが」と断ったうえで、AECの授業の目的についてこう語る。「思考力を育てたいので、べらべらしゃべらなくても、きちんと考えて答えてくれればいいと思っています。生徒たちが何を考えているのか、なぜそれを考えているのか、授業はその意見交換の場所であると思っています」

 海外に出たら、自分の考えをまとめ、はっきりと意見表明できなければならない。国際社会で通用するリーダーの育成を目指す同校にとって、「AEC」はその礎となる。「AEC」で学んだ同校出身者が海外で活躍する姿を目にする日も近いはずだ。

 (文・写真:林宗治 一部写真提供:海陽中等教育学校)

 海陽中等教育学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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896400 0 海陽中等教育学校 2019/11/14 05:21:00 2019/11/14 09:43:05 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191111-OYT8I50054-T.jpg?type=thumbnail

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