ドイツ研修旅行で未来の課題を学ぶ…獨協

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 獨協中学校・高等学校(東京都文京区)は、ドイツ外務省が推進しているプロジェクト「PASCH(未来のパートナー学校)」に参加している。ドイツ語を学んでいる世界中の学校のネットワークであり、同校も6月、ドイツ・シュヴェーリンからパートナー校の「エコレアインターナショナルスクール」の生徒9人を招いてともに学んだ。彼らを「ホストブラザー」としてもてなした生徒らに、その様子と昨夏に参加したドイツ研修旅行の経験などを聞いた。

パートナー校の生徒たちを「日本らしさ」でもてなす

理科の塩瀬教諭(左)と情報センター部長で社会科の鳥山教諭
理科の塩瀬教諭(左)と情報センター部長で社会科の鳥山教諭

 獨協中学校・高等学校は、校名の通りドイツとの縁が深い。「啓蒙思想家たちが集まり、ドイツを国家モデルとして官僚を育てるために発足したのが、本校の前身となる獨逸学協会でした」。同校の情報センター部長で社会科を担当する鳥山靖弥(とりやまやすひろ)教諭はこう説明する。

 第2次世界大戦直後は、日本と同じく敗戦国のドイツを手本としていることから学校の存続が危ぶまれたこともあったが、第13代校長でカント哲学研究者の天野貞祐(あまのていゆう)が「獨協の『独』は、ドイツではなく独立の『独』だ」と主張して学校を守った逸話があるそうだ。

 その後もドイツとの縁が切れることはなく、今も「ドイツ語科」には5人の教員がいて、高校で「基礎ドイツ語」「ドイツ語1」「ドイツ語2」「ドイツ語3」を履修することができる。「現在は7、8時間目に週1か週2でドイツ語の授業を行っています」と、理科の塩瀬治(しおせおさむ)教諭は話す。

 近年は大学入試でドイツ語を選択する生徒はごくわずかだというが、大学受験のスコアや偏差値に反映されなくても、ドイツ語を学びたい、ドイツ文化をもっと知りたいという生徒は確実にいる。1学年約200人のうち約40人が高1でドイツ語を履修するというのだ。また、同校は、ドイツ外務省がドイツ社会やドイツ語への関心を呼び起こそうと始めたプログラム「PASCH」(Partnerschul―Initiative=パートナー学校イニシアチブ)に参加している。国内では同校を含めて4校がパートナー校として加盟しており、ドイツの青少年との文化交流を積極的に行っている。

エコレアインターナショナルスクールの生徒・教員と交流を深める生徒たち
エコレアインターナショナルスクールの生徒・教員と交流を深める生徒たち

 同校は6月、その交流の一環として、ドイツ北部のシュヴェーリンにある「エコレアインターナショナルスクール」の生徒9人と教員2人を招いた。

 高2の上野真之介君と、上原貴生君は一行をもてなすために「ホストブラザー」を務めた。「僕がホストブラザーになろうと思ったのは、昨夏にドイツ研修旅行でホストファミリーのみなさんに心からもてなしていただいたから。それを少しでもお返ししたいと思って手を挙げました」と上野君は話す。「僕たちは獨協の校歌を5番まで英訳して、みんなで歌いました。ドイツでは学校ごとに決まった歌なんてないらしく、その歌詞に込められた思いにも驚いていましたね」

 上原君も「僕もドイツ研修旅行に参加したとき、『外国語でコミュニケーションを取るのってこんなに楽しいんだ』と実感して、ドイツからの学生をもてなすホストブラザーに立候補しました」と話す。滞在中は国語の時間に一緒にかるたの坊主めくりをしたり、体育の時間に先生にともえ投げの技を披露してもらったりしたという。「僕たちができる『日本らしさ』を味わってもらえたと思います」

 上野君たちはドイツに帰国した生徒たちと、インスタグラムやメッセンジャーアプリのワッツアップなどでグループを作り、SNSツールを駆使して交流を続けているそうだ。

 また、同校としても「エコレアインターナショナルスクール」とともに、壁面にスマートウォールを配して空気浄化を図ったり、屋上にビオトープを作って野菜を育てたりするなど、環境問題を共同研究していく計画があるという。今後の交流の行方が楽しみだ。

「負の遺産」も含めてドイツの現実を体感する

 上野君たちが参加したドイツ研修旅行は、中3~高2の希望者を対象に2013年から続けられている。毎年8月半ばに出発して2週間ほどかけてドイツ各地を巡る。この研修旅行を担当し、生徒たちを引率する塩瀬教諭は、研修旅行の意義をこう語る。

 「本校の研修旅行は観光地を巡る旅ではありません。たとえば昨夏は、移民問題と人権、命、環境について学びました。シリア出身の移民の方に語り部となってもらい、『幸せって何か』『自由ってどういうことか』と生徒一人一人に問いかけてもらいました。また、ドイツには町のいたるところに、負の遺産がある。例えば『(つまず)きの石』というものがあって、そこには何人のユダヤ人が連れ去られたと刻印されたモニュメントがある。それを見て、はっと息をのみ、平和とは何か、生きるとはどんな意味があるか、獨協生たちに、彼らの若い素直な感性で感じ取ってもらうのです」

ドイツスタディーツアーでダッハウ強制収容所跡を見学する生徒たち
ドイツスタディーツアーでダッハウ強制収容所跡を見学する生徒たち

 ドイツ研修旅行(ドイツスタディツアー)では、ハノーファー市立学校生物教育センターで「持続可能性と森林」についてのワークショップに参加し、「色彩の庭」を見学。さらに「ハノーファーの移民と難民支援」「食糧安全保障に関するEUプロジェクト」、ケーテコルビッツ中等教育学校でホームステイ先の生徒と授業参加など、学びのプログラムがぎっしり詰まっている。

 研修旅行のクライマックスといえるのが、ダッハウ強制収容所跡の見学だ。「毎年実施していますが、口コミで人気が高まり、今年は20人定員のところ35人の申し込みがありました。面接をして参加者を決めますが、保護者にもぜひ参加させたいという声が広まってきました」

研修旅行を機に生徒が自由に語り合う場が生まれる

 研修旅行でドイツの負の歴史を肌で感じ、移民や環境の問題を体感した生徒たちは、何を学び、持ち帰ったのだろう。

 上野君は「ホストファミリーの生徒が通う学校で一緒に授業を受けたら、いろんな国の人がいました。でも、みんなドイツ語を話し、誰も差別することはない。『これが多様性なんだ』と実感しました」と話す。

 上原君は「一番驚いたのはホストファミリーのお父さんが夕方には帰宅して家族と一緒に食事に出かけたり、イベントに参加していたりしていたことです。僕の父は残業で夜10時、11時にならないと帰ってきません。ドイツ人の働き方、家族との時間を大切にする生き方を知って、僕もこっちがいいなと思いました」と話す。

 鳥山教諭によると、ドイツ研修旅行から帰国した生徒の中に、「自分に深く問いかけたい。誰かと討論したい」という思いが膨らみ、「学年を超えて自由に語り合える場所を用意してほしい」と要望があったという。

 「私が責任者をしている情報センターは、図書館が併設されているのでそのための資料も場所もある。そこで『獨協談話室』が誕生しました。ドイツ研修組を中心に生徒会役員などが加わり、中学生も交えてさまざまなテーマで話し合っています。生徒たちが自主的に考えて始めたことなので、これもドイツ研修の成果だと思います」と鳥山教諭は目を細める。

 中学のうちからドイツ語を学びたい生徒には「ドイツ語同好会」がある。ドイツ語検定A1(アーアインス)に合格すると、ドイツへの留学の道が開けるし、PASCH主催の研修旅行に招待されるチャンスも広がるという。将来、ドイツのサッカーリーグで活躍したいという夢を持つ小学生もいることだろう。獨協で学ぶことが夢に近づく一歩になるかもしれない。

 (文:田村幸子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:獨協中学・高等学校)

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