【特集】自然相手の委員会活動で自己の成長の種を見つける…獨協

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 獨協中学・高等学校(東京都文京区)には、環境教育をテーマとする「緑のネットワーク委員会」という活動がある。中高の委員たちの活動は、ホタルの住むビオトープや屋上菜園など校内の施設管理に始まり、地域の施設や小学校との交流、さらには海外からの視察受け入れまで、学外にも領域を広げている。自然相手の実作業を通して環境問題、社会問題にも関心を広げていく生徒たちの姿を取材した。

ホタルの住むビオトープや屋上の菜園を管理

夏野菜の苗と自動給水システム
夏野菜の苗と自動給水システム

 「緑のネットワーク委員会」は、「今後は環境教育に力を入れていきたい」という永井伸一・前校長の声掛けで、生徒有志が2004年に発足させた「ビオトープつくり隊」が前身だ。約2年がかりでホタルの生息する「循環型ビオトープ」を作ったあと、さらに環境教育を通して地域と交流しようと、2010年に正式な委員会活動としての「緑のネットワーク委員会」に発展した。現在では、中高合わせて約50人の委員たちが所属し、ビオトープ、屋上壁面緑化、校内に地域本来の木を植える「獨協の森」プロジェクトという三つの活動を柱として活動している。

 梅雨の晴れ間の7月20日、同校を訪れると、校舎の屋上に据え付けられた120個ほどのプランターにトマト、ピーマン、サツマイモなど植えられたばかりの夏野菜の苗が並び、委員の生徒たちがホースで水をやっていた。照り付ける日差しの中、時折はねた水に歓声を上げながらも手際よく作業をこなしていく。中高合わせて常時20人ほどの生徒たちが集まっては、この野菜作りに取り組んでいるそうだ。スイカやメロンなどを栽培する年もあり、収穫に招かれた地元の小学生たちを喜ばせている。

今年はコロナ禍のため断念したが、例年「緑のカーテン」を設置する
今年はコロナ禍のため断念したが、例年「緑のカーテン」を設置する

 また、この屋上には、同委員会が管理する「ミニビオトープ」もあった。防水加工を施した縦・横70センチほどの木箱の中に、武蔵野の水辺の生態系を再現したもので、スイレンの葉の隙間から水中を(のぞ)くと、クロメダカが泳いでいた。

 本格的な「循環型ビオトープ」は裏門付近の学校林の中に設置されていて、生物部と共同で管理している。このビオトープは水源となる小川と二つの池をつないだ長さ約10メートルの水辺空間を再現している。ヘイケボタルが生息し、毎年夏の夜にはほのかな輝きを放つ。ホタルの幼虫の餌となるカワニナのほかメダカ、ヒキガエル、ヌマエビなども生息している。

 水を循環させるポンプは、小川のそばに設置された太陽光発電装置で得られた電力を補助とする省エネ仕様となっていて、日本生態系協会(事務局:東京・豊島区)が主催する2007年の「全国学校・園庭ビオトープコンクール」で銀賞を受賞したこともある本格的なものだ。

活動を通して環境問題にも関心を向ける

「いろいろな体験をするうちに生徒は自分のスイッチが入る」と話す塩瀬先生
「いろいろな体験をするうちに生徒は自分のスイッチが入る」と話す塩瀬先生

 作業の合間に委員たちの話を聞いた。高木幹君(高2)は、もともと生物に興味があり、小学生の時に訪れた文化祭で同委員会の活動を知り、面白そうだったので、入学後に参加を決めたそうだ。委員会の合宿にも参加し、環境について多くのことを学んだという。将来は獣医など、生物に関わる仕事に就きたいそうだ。

 同じく榛葉圭太郎君(高2)は、中学入学後に同委員会が主催した獨協大学エコキャンパスの見学会で、小学校の委員会活動とは違う本格的な活動内容に触れ、参加を決めた。例年9月の文化祭「獨協祭」に向けて、中高一丸となって取り組んできたという。「循環型ビオトープ」の管理は「毎年の雑草取りが大変です」と振り返るが、その甲斐(かい)あって見事な水辺の風景が広がっていた。

 2人は、ゴーヤを使った壁面緑化の方法やミニビオトープ内に発生する藻と気温の関係なども研究しており、委員会活動を通じて知るようになったさまざまな環境問題にも関心を寄せているそうだ。

 ただ、今年はコロナ禍による休校やイベント自粛の影響を受け、例年の活動内容を大きく変更する必要に迫られた。今年は江戸時代に地元で育てられていた「コマゴメナス」という品種の栽培を予定していたが、来年度以降に延期となった。「獨協祭」も11月に延期され、オンラインでの開催となった。

 楽しみにしていた「コマゴメナス」の栽培を後輩たちに託すこととなった高木君は、委員会活動引退前の最後の「獨協祭」のために、エコバッグの制作を計画中だ。また、榛葉君は他の委員とともに、新中学1年生に向けて委員会の活動内容を紹介する動画を製作しているという。

学外にも活動を広げ、体験を重ねて成長する

昨年の高校生ボランティア・アワードでの活動報告
昨年の高校生ボランティア・アワードでの活動報告

 同委員会は、これらの校内活動ばかりでなく、学外にも積極的に活動を広げている。近隣の小学校や重度障害者施設へミニビオトープを設置し、ビオトープ内に生息する生き物の食物連鎖を解説するなどして交流している。また、こうした活動を「高校生ボランティア・アワード」などで報告し、学外からも着目される存在となっている。

 昨年6月には、ドイツ外務省が主催するプログラム「PASCH」を通じてパートナー校となったドイツ・シュヴェリーンの「エコレアインターナショナルスクール」から、委員会のホームページを見て関心を持った教員・生徒11人が同校の見学に訪れ、獨協の環境教育の取り組みを聞き、屋上施設を見学した。このほかにも海外のNPOに属する学生の見学なども随時受け入れているそうだ。

 地域貢献の一環としてホームレスへの炊き出し活動に参加したこともあるという。顧問の塩瀬治先生は「生徒たちは社会の問題に若者らしくレスポンスする感性を持っている」と改めて感じたそうだ。

 「誰かのために役立っている実感、作物を直接手渡しする楽しみなどは、思いのほか生徒たちの心をとらえているようです」と塩瀬先生は話す。「生徒たちには、原っぱで遊ぶような原体験を通して活動を楽しむと同時に、社会にはいろいろな人がいることを知ってほしい。できる範囲でさまざまな体験をしてもらいたいと思っています。いろいろな体験をするうちに生徒は自分のスイッチが入る。そして、あるとき急に成長するんです」

 日々の活動で自然に深く向き合う中で生物に興味を持ち、さらに学びを深めるために医学部や農業大学に進む生徒もいるそうだ。生徒たちの進学先はさまざまだが、委員会活動を通して養ったみずみずしい感性は、どの道に進んでもきっと役立つに違いない。

 (文・写真:山本華子 一部写真提供:獨協中学・高等学校)

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1630354 0 獨協中学・高等学校 2020/11/18 07:00:00 2020/11/18 07:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201116-OYT8I50027-T.jpg?type=thumbnail

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