体験重視の「K―Labo」で生きた理科を学べ…鎌倉学園

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 建長寺に接して立つ男子校、鎌倉学園中学校・高等学校(神奈川県鎌倉市)は、高校生を対象に体験を重視した理科教育「K-Labo」を実践している。どうしても抽象的になりがちな高校理科に実感を取り戻す取り組みだ。実験・観察と問題演習をバランスよく繰り返すことで理科学習に相乗効果が生まれるという。担当の理科教諭と、プログラムに参加した生徒たちの話を聞いた。

実験と問題演習をセットで学び、理解を深める

「K-Labo」の目的や取り組みについて語る、理科担当の永井晶子教諭
「K-Labo」の目的や取り組みについて語る、理科担当の永井晶子教諭

 「K-Labo」は高校生を対象にした本校の理科教育の取り組みの総称です。教科書だけで学びを終わらせず、実験やフィールドワークを体験した上で問題演習を行うことで、より深い理解と応用力を育てることを目指しています」と理科担当の永井晶子教諭は説明する。

 同校の中学では理科の授業に実験が組み込まれ、校外での見学や実習なども行われていたが、高校ではそうした機会が少なかったという。例えば物理についても「高校になると数式を扱うことが多くなり、抽象度が高まります。特に、高3になると座学が中心になるため、実物を見ない、触れないまま学ぶことになりがちでした」と、物理を教えている小松賢司教諭は振り返る。

 そこで、実感が伴わない単なる情報として理科を学ぶのではなく、実験・観察を通して生きた知識として吸収できるようにと、理科担当の教諭たちが体験を重視した理科教育「K-Labo」をスタートさせた。

 手始めに化学分野から、毎週実験と問題演習をセットで学ぶ機会を作り、次いで物理分野、4年前から生物分野でも「K-Labo」が始まった。

 物理と化学では、授業時間から毎週1時間を実験・観察にあて、問題演習に取り組んでいる。生物では週末や長期休暇を利用したフィールドワークを行った後、事後学習と発表を通して主体的に学ぶ力を育て、知識の定着を図っている。

 このほか1泊2日で研究機関などを見学したり、実際に実験を体験したりする「K-Labo Camp」や大学の「研究室訪問」、大学教授ら理系の講師を招いて講演や座談会を開く「K-Labo Forum」など、さまざまなメニューを充実させてきた。

 永井教諭は「実験と問題演習をセットで学ぶことで相乗効果が生まれます」という。問題演習だけでは受験対策の域を出ないし、実験にウェートを置き過ぎても大学受験の準備としてはバランスが取れない。「K-Labo」では、実験やフィールドでの体験が裏打ちとなって、問題演習で問われていることの意味が深く理解でき、逆に問題演習で自分の実力向上を確かめられるので、実験・観察に熱が入るという好循環を生むという。

 また、基本的な実験操作だけでなく、大学で行われる基礎実験も取り入れることで、卒業後、理系に進学した際もスムーズに大学の学びに対応できるように配慮していることも特長となっている。

研究機関を見学し、実験する「K-Labo Camp」

 今年、同校は夏休みの7月23、24日に「K-Labo Camp」を実施した。A、B二つのコースが用意され、生徒たちは自分の興味関心や希望する進路に合わせてコースを選んだ。

 Aコースは茨城県つくば市内にあるさまざまな研究機関を周り、普段はなかなか聞く機会のない研究者の講話を聞いたり、実際の施設を見学したりした。Bコースは、地球温暖化をテーマに国立環境研究所で実験に取り組んだという。

 Aコースの狙いは、理系を志望しているが、分野までは絞り切れていない生徒に、さまざまな領域に触れてもらうこと。Bコースは実際に手を動かし、実験をしてみたい生徒向けになっている。また、1日目、2日目ともに、どちらのコースを選んでもよく、さまざまなタイプの生徒が自分なりに学びを深められるように配慮されている。

 1日目にBコース、2日目にAコースを選んだ高1の木村維邦君は、「1日目は国立環境研究所で光合成による二酸化炭素濃度の変化を、ガスクロマトグラフィーで調べました。学校にはない装置を使って時間をかけて実験に取り組むことができました。2日目は高エネルギー加速器研究機構と物質材料研究機構で研究員の方の説明を聞き、実験装置などを見学しました」と興味深そうに話した。

 1日目にAコース、2日目にBコースを選んだ高1の佐藤壮悟君も「1日目はJAXA(宇宙航空研究開発機構)で実際に管制室や宇宙船を見学できました。高層気象台・気象測器検定試験センターでは、南極に行った方の話など現場の方の声を聞けたことも貴重な経験でした。2日目は採取した土壌から、時間経過によるメタンガスの発生量を測定しました」と話し、強い印象を受けた様子だった。

フィールドワークで自然への関心を深める

東京大学三崎臨海実験所での「臨海実習」で磯の生き物を採集する
東京大学三崎臨海実験所での「臨海実習」で磯の生き物を採集する
東京海洋大学で行った「細胞培養実験」
東京海洋大学で行った「細胞培養実験」

 また、生物分野のフィールドワークも夏休みを利用して実施された。7月後半には東京大学三崎臨海実験所で磯の生き物の採集を中心に「臨海実習」を行ったり、東京海洋大学で「細胞培養実験」に取り組んだり、東京大学先端科学技術研究センターでカイコを用いた「動物行動学実験」を行ったりした。8月16~18日にも長野県の志賀高原にある信州大学志賀自然教育園で「森林実習」を実施し、自然観察からDNAを素材とした実験まで多彩なメニューをこなした。

 フィールドワークに参加した高3の安城駿介君は、志賀高原での体験について「森林に興味があり、自分の目で森の全体像をとらえる良い機会だと思って参加しました。信州大学の先生に自然の見方、森のつくりなどを学ぶことができ、とても納得できました」と話した。

 「将来は水産関係に進みたい」という高3の馬場春都君は、「臨海実習」について、「ヒラムシという磯の生物を今回初めて知りました。また、大学の研究室を訪問した際は、長年研究に取り組んでいる先生方の考え方や、どんな研究にも価値があることなどを教えていただき、将来の励みになりました」と話した。生物への興味をいっそう深めたようだ。


「『K-Labo』の経験は、生徒が自分の適性を見極める材料にもなっている」と話す小松賢司教諭
「『K-Labo』の経験は、生徒が自分の適性を見極める材料にもなっている」と話す小松賢司教諭

 「K-Labo」の経験は、文理選択に際して生徒が自分の適性を見極める材料にもなっている。実際、「K-Labo」のプログラムに参加した後、理系から文系へ志望を変える生徒もいるというが、小松教諭はそのこと自体にはこだわらない。

 「仮説を立てて、データをとり、検証するという、あらゆる研究の基礎を知ることでもあります。その意味で『K-Labo』で経験することは、理系に進もうと文系に進もうと意味があると言えます。それに、第一線で研究に取り組んでいる方たちの熱意や姿勢、研究にかける思いを知ることは大切な人生経験となります」

 永井教諭は「実験やフィールドワークの魅力は、予期せぬ学びがあること」という。自然現象の投げかける問いが、教科書の知識や問題集の答えと直結しないことはしばしばあるそうだ。そのときに「なぜ」と考え、調べ、自分なりの結論を出すことが、思考を育む絶好の経験となる。そんなチャンスが「K-Labo」にはあふれているようだ。

 (文・写真:山口俊成 一部写真提供:鎌倉学園中学校・高等学校)

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48577 0 鎌倉学園中学校・高等学校 2018/11/16 05:20:00 2018/11/16 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181109-OYT8I50035-T.jpg?type=thumbnail

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