「本物に触れる教育」で情操を育む…跡見

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 跡見学園中学校高等学校(東京都文京区)の創立者・跡見花蹊は「書や芸術は、人生を豊かにする」という考えを同校の教育の根底に据えた。その精神は今も受け継がれ、同校の教育、施設、教育環境は、生徒の情操を豊かにするためのさまざまな配慮にあふれている。入試広報室の高橋卓哉さんに説明を受けながら、同校内を案内する。

「跡見流」の書を通し、創立者の精神を学ぶ

「無我」と書かれた掛け軸
「無我」と書かれた掛け軸

 跡見学園中学校高等学校の校舎1階入口近くには、ガラス窓で囲まれた円形の展示ホールがある。ここには、画家でもあり書家でもあった創立者・跡見花蹊や、花蹊の養女で2代校長となった跡見李子(ももこ)の作品が展示され、花蹊が詠んだ和歌や「無我」と書かれた掛け軸、色紙、桜を描いた日本画などがぐるりと取り囲んでいる。

 日本の女子教育の先駆者の一人である跡見花蹊は、幼い頃から書や絵画、詩などを学んで芸術の才能を磨き、跡見学園の創立当初から、自ら筆を執って生徒たちに書画を教えていたという。

 力強さの中にも女性らしい丸みが感じられる花蹊の書体は「跡見流」と呼ばれている。同校は教育の中で、この書体を長く受け継ぎ、現在も中学の習字や高校の書道の授業、書道同好会で学ぶことができる。

 入試広報室の高橋卓哉さんは、「書体に秘められた優しさと強さの精神を、生徒たちは学びながら理解します。さらに書道を通して、心穏やかに周囲を気遣う思いやりと感謝の気持ちを持つ女性を養っていきます」と話す。

 生徒たちは、直接に跡見花蹊の書を見て、筆を手にして跡見流を学ぶ中で、創立者の精神を身に付ける。同校が実践している「本物に触れる教育」の原点はここにある。

自然光で、本来の布の色を見る「洋裁室」

文部科学大臣賞を受賞した刺繍作品「萬華鏡」
文部科学大臣賞を受賞した刺繍作品「萬華鏡」
繊維工芸部が活動拠点としている洋裁室
繊維工芸部が活動拠点としている洋裁室

 2階に上がると、ひときわ目を引くものがある。廊下の壁に飾られた大きな刺繍(ししゅう)作品だ。「萬華鏡(刺繍によるコラージュ)」と題されたこの作品は、創部70年の歴史を持つ繊維工芸部が制作、展示したものだ。四角い地に同心円を描いて構成した空間に、きめ細かな刺繍やレース編みなどの手法で花々をちりばめ、幻想的な雰囲気を醸し出している。この作品は第65回「手工芸美術展」(日本手工芸文化協会主催)の中学生の部で、文部科学大臣賞を受賞している。

 繊維工芸部は「手工芸美術展」だけでなく、数々のコンクールに刺繍作品を発表して受賞してきた。それらの作品は、中学から高校までの部員全員が、毎年半年以上かけて制作するという。その活動拠点となるのが5階にある洋裁室だ。ここにはミシン100台、ジグザグミシン20台が備えられている。中学の技術家庭科の実習では、1クラス約40人の生徒一人一人がミシンを使って、洋裁技術の基礎を身に付けることができる。

 この洋裁室は、採光に自然光を利用しているのも特徴だ。天窓から注がれる柔らかな光を見ながら、高橋さんは「布地の本当の色を見るためには、自然光がもっとも適しています。生徒たちは、天窓から入る光で布の色を確かめながら、色に対する感性を養います」と話す。洋裁室の造りにも、「本物」を見分ける目を養ってほしいという学校としての配慮がある。

陶芸窯や茶室など日本文化に親しむ施設が充実

作法室にある茶室で茶道を学ぶ生徒たち
作法室にある茶室で茶道を学ぶ生徒たち
中高としては珍しい陶芸窯を備えた美術室
中高としては珍しい陶芸窯を備えた美術室

 日本文化を学ぶ施設も印象的だった。離れの建物にある作法室(和室)は21畳の広さがあり、窓の外に広がる日本庭園にはさまざまな花木が植えられ、四季の美しさを楽しむことができる。

 跡見学園は、初めて茶道を授業に取り入れた学校とされるだけに、作法室には本格的な茶室も備えられている。中学の「お作法」の授業では、和室での立ち居振る舞い、にじり口から小間(こま)への入り方、茶室の構造や茶道の意義なども学ぶ。

 高橋さんは、「『放課後プログラム』では、裏千家の茶道、山田流の箏曲、古流の華道などの講座を有料で開いています。生徒たちは学校にいながらにして、それぞれの流派の専門家の指導を受けて、作法や技術を身に付けることができるのです」と話す。

 美術室には、中高としては珍しい陶芸(がま)があった。1250度まで対応する電気窯で、主に高校の芸術選択科目である「工芸科」の陶芸の授業で使用される。カップなら一度に100個ほど焼き上げられるという。陶芸の授業では、土練りから焼成まで、本格的な作陶の工程を一通り体験する。成形も1年生は手びねりだが、3年生になると電動ろくろを使った制作に挑戦する。昨年、手びねりでカップ作りを体験した高2の生徒は、「陶芸がやりたくて芸術選択で工芸を選びました。土をこねるところから、作品を作っていく過程が楽しい。今年はろくろに挑戦するのが楽しみです」と笑顔で話した。

 美術室の外には菜園がある。そこで育てているヒョウタンやイチゴ、カボチャ、ツツジ、菜の花などは、美術のデッサンや理科の実験にも使われるという。「これも本校の理念である『本物に触れる教育』の一つです」と高橋さんは説明する。

生徒の「調べ学習」を支える充実の図書館

 約7万5000冊の蔵書を誇る図書館も同校自慢の施設だ。110席の自習机があり、約2800冊の辞典類を備えたレファレンスルームや多目的ルームがある。レファレンスルームは1クラスがまるごと「調べ学習」などに利用することができる。また、多目的ルームは、予約すれば自習やミーティングなどいろいろな用途で使えるという。

 「生徒の多様なニーズに応えるのが、図書館のモットーです。年に約2000冊のペースで新しい本を購入していますが、生徒たちのリクエストを聞き、本を購入することもあります」と高橋さんは話す。

 入り口付近の書架に手芸や裁縫の本がぎっしりと並んでいるのはいかにも同校らしいが、蔵書のラインアップは、経済書や哲学書から漫画、絵本、雑誌まで幅広く、学校の図書館というよりも一般の図書館を感じさせる充実ぶりだ。

 「本校では、ものづくりを体験したり、芸術に親しんだりする機会がとても多くあります。そのための施設や設備も充実しています。本物に触れ、実際に手を動かすことで、豊かな感性を持った女性になってほしいですね」と高橋さんは話す。

 ちなみに、取材に訪れた昨年11月30日は、午後から東京・上野の東京文化会館で音楽鑑賞会を開催し、中高の生徒全員が、ドイツのドレスデン聖十字架教会合唱団とソプラノ歌手・森麻季さんによる、一足早いクリスマスコンサートを楽しんでいた。

 自分の目や耳や手で、直接に芸術やものづくりに親しむことは、豊かな情操を育てる。そのためにさまざまな機会、施設、環境を整えた同校での生活は、生徒たちの将来の人生をより豊かなものにしてくれるはずだ。

(文・写真:石井りえ 一部写真提供:跡見学園中学校高等学校)

 跡見学園中学校高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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483755 0 跡見学園中学校高等学校 2019/03/12 11:28:00 2019/03/12 11:28:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/03/20190308-OYT8I50023-T.jpg?type=thumbnail

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