自由参加の放課後ゼミで、広がる生徒の知的好奇心…農大一

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 東京農業大学第一高等学校・中等部(東京都世田谷区)は2018年度から、生徒の知的好奇心を刺激するため、放課後に幅広いテーマでゼミ形式の授業を実践している。「一中一高ゼミ」と名付けたこのゼミは、教員たちが自分の得意分野で開講し、生徒は中高を問わず希望者全員が参加できる。今年度は難関大受験者を対象とする「Tゼミ」も開講した。これらのゼミを始めた背景や、取り組みの内容について取材した。

受講する生徒も開講する先生も自由参加

「一中一高ゼミ」を統括する岡田先生
「一中一高ゼミ」を統括する岡田先生

 同校が2018年度からスタートさせた「一中一高ゼミ」は、教養講座、専門講座、教科横断型講座、外部コンテストに向けた講座など、さまざまなテーマで教員たちが用意した、少人数のゼミ形式の授業だ。平日の放課後に1時間から1時間半をかけて行われる。対象学年も、学年を限定したものから、中学生から高校生まで学年を横断したものまでさまざまで、生徒は自分の興味に応じて受講できる。

 初年度は88講座、昨年度は73講座が開講された。生徒の受講が自由なだけでなく、教員も自由に開講できるのが大きな特徴だ。毎月、実施されるゼミの案内が配布され、生徒は自分が参加したいゼミを選ぶ。1回で完結するものもあれば、数回連続して行われるものもあり、複数のゼミに参加することも可能だ。

 このゼミを始めた背景について、進路指導部部長の奥田修司教諭はこう説明する。「もともと、2012年から大学進学実績を伸ばすことを目的に、国・数・英3教科の受験対策としてゼミを行っていました。しかし、あくまでも大学合格を目的としていたために、特別な生徒だけが受けるという傾向が強かったんです。そこで、もっと多くの生徒の知的好奇心を広げたいと考えたのがきっかけです」

岡田先生が指導するゼミ
岡田先生が指導するゼミ

 ゼミの内容は多岐にわたる。総合科学雑誌「Nature」を読んでディスカッションするゼミ、生物と英語の教員によるオールイングリッシュのゼミ、合唱コンクールの指揮者のための指揮法ゼミ、映画や文学作品に出てくる食べ物を実際に作って食べるゼミ、筋トレが趣味のネイティブの教員と英語で筋トレするゼミなど、学習意欲や好奇心をくすぐるテーマが目白押しだ。

 「一中一高ゼミ」を統括する国語科の岡田康介教諭は、「教員たちが自分の得意分野や面白いと思うことをテーマにすることも多いです。開講する教員も、無理なくやれる時にやるというスタンスなので、月に10講座ということもあれば、2講座だけということもありますよ」と話す。岡田教諭のゼミでは、新海誠監督のアニメ映画『君の名は。』を題材に、この映画で取り上げられている男と女、田舎と都会、といった対立構造について意見を出し合ったそうだ。

ゼミを通して生徒の内面にもさまざまな変化

 外部のコンテストや検定などに向けて生徒のチャレンジを後押しするゼミも充実している。例えば、「全日本高校模擬国連大会」への挑戦を目指す「模擬“模擬国連”ゼミ」の受講者は、実際に予選を通過して2年連続で本選に出場した。一昨年は北朝鮮、昨年はアメリカの国連大使になりきって他国の代表たちとディスカッションしたという。また、「数学オリンピック」を目指す数学ゼミ、「科学の甲子園ジュニア」出場を目指すゼミなども開講されている。

今年度から教育連携したJAXAのゼミ
今年度から教育連携したJAXAのゼミ

 JAXA(宇宙航空研究開発機構)で働く卒業生が以前、同校のキャリア教育の一環である「キャリア授業」に登壇したことをきっかけに、JAXAとの教育連携も実現した。これも「一中一高ゼミ」のプログラムの一つとして開講する予定だ。

 こうした多彩なゼミによって、「生徒たちの内面や学力にさまざまな変化がもたらされています」と岡田教諭は話す。「中学生の作文とスピーチのコンクール『中学生の主張東京都大会』への応募を目指すゼミで、心の葛藤や思いを文章にした生徒がいます。受賞には至りませんでしたが、彼女は『自分の気持ちを文字にしたことで、気持ちの整理がついた』と話していました。また、同じゼミで学校生活について書いたことをきっかけに自分を見つめ直し、学習力が飛躍的に伸びた生徒もいます。ほかにも、憲法について学ぶゼミでは、早稲田や慶応といったワンランク上の大学を目指すようになった生徒もいました」

 奥田教諭も、「普段は教室でほとんど発言しない生徒も、少人数のゼミだと積極的に発言できるようです。また、クラブとは違う先輩との関わりの中で、ロールモデルとなる先輩に出会い、刺激を受けて変わっていく生徒もいます。それがゼミの魅力ですね」と話す。

「学問の楽しみ方を多くの生徒に知ってほしい」

「ゼミを通して知的好奇心を広げてほしい」と話す奥田先生
「ゼミを通して知的好奇心を広げてほしい」と話す奥田先生

 変化しているのは生徒だけではないようだ。「以前よりも、ゼミの輪の中に積極的に入る教員が増えてきました」と奥田教諭は話す。「根底にあるのは、ゼミを通して、学問の楽しみ方を多くの生徒たちに知ってほしいという私たち教員の思いです。教員自身が楽しい、面白いと思うものを生徒たちに伝えるために、どんな内容が生徒の興味、関心を引くのか考えたり、面白いタイトルを付けたりと、生徒を集める工夫を凝らしています。生徒だけでなく、教員も成長していると感じますね」

 今年度から、「一中一高ゼミ」と並行して「Tゼミ」もスタートした。このゼミは東大、京大、一橋大といった難関大学への受験対策を目標とする特別ゼミだ。高3生が対象で、国語、数学、英語それぞれの教科に2人ずつ選抜された教員がつき、生徒の志望校に合わせて課題を出したり、個別に添削・指導したりする。

 奥田教諭は、「これから大学や社会に出て行く時に、頑張らなければいけない時期や、自分が決断しなければならない場面が必ずやってくる。その時にやりたいことをしっかり持ち、自分を出せる人間となれるよう、『一中一高ゼミ』と『Tゼミ』の両輪でバランスよく力を付けてやりたいですね」と話す。

 岡田教諭は、「本校の生徒は、いい意味でも悪い意味でも欲がなく、のんびりとして優しい子が多い。けれども、周りの人に影響を与えられるような、他校の生徒にない個性を持っているのも本校の生徒の特徴です。そういう子たちにこそ、社会の中心で活躍できる人材になってほしいと思っています」と力を込めた。

 知的好奇心を広げ、共に語らい、楽しむ「一中一高ゼミ」は、生徒や教員が共に成長していくかけがえのない居場所となっている。

 (文・石井りえ 写真:中学受験サポート 一部写真提供:東京農業大学第一高等学校・中等部)

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1375058 0 東京農業大学第一高等学校・中等部 2020/08/03 05:21:00 2020/08/03 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/07/20200730-OYT8I50032-T.jpg?type=thumbnail

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