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【特集】思考力・判断力・表現力を育む「課題研究発表会」…農大一

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 東京農業大学第一高等学校・中等部(東京都世田谷区)で3月、恒例の中3生による「課題研究発表会」が行われた。生徒は、自らが興味関心を抱いたテーマを1年がかりで自由に探究し、論文にまとめ、発表する。今年は新型コロナウイルス感染に配慮してサイト上での動画発表となったが、3年生全員が作品を仕上げてきたという。この取り組みを通して変化や成長を見せる生徒たちの様子を、入学時から指導してきた学年主任に聞いた。

自ら課題を見つけ考え表現する力を育成

「課題研究発表は、まさに中学3年間の集大成」と話す梶山教諭
「課題研究発表は、まさに中学3年間の集大成」と話す梶山教諭

 「課題研究発表」は、中等部が開校した2005年から行われてきた。自ら課題を見つけ、考え、表現する力を身に付けることを目的に、生徒一人一人が興味や関心を持ったテーマを1年がかりで研究・考察し、論文にまとめ、さらに一人一人がプレゼンテーションをして、その成果を生徒同士が相互評価する。

 中2の1月から研究の基本的な姿勢、論文の書き方やマナーを学んだ上で、各自が決めたテーマに従って、アンケートや取材などのフィールドワーク、データの収集・分析を行いながら研究を進めていく。

 課題研究を進めるうえで、東京農業大学と連携し、大学教授の指導のもと、研究室や農場などの施設を活用して大学レベルの探究ができる同校の環境は大きなメリットだ。実際、かなり専門的な自然科学系の研究発表も多い。昨年、中3学年主任を務めた、高1学年主任の梶山昌寛教諭は、「まさに中学3年間の集大成であり、本校ならではの学びにこだわっています」と話す。

 例年は文化祭で中間発表を行い、3月に本番の発表会を開くが、2020年は、コロナ禍のため学校行事は軒並み中止とせざるを得なかった。学校として「課題研究発表」をどうするべきか検討した末、パワーポイントを使った動画で発表してもらうことになった。

 「3~5分の動画で形式は自由」という条件を発表したのは年末であり、2月にはグーグル・クラスルームに発表動画をアップロードするという厳しいスケジュールだった。操作方法を十分に指導する時間もなかったという。「そんな状況ですし、提出するのは学年182人の3割程度でも仕方がないと思っていましたが、なんと全員が仕上げてきたのです。コロナ禍という困難な状況でも、自力でプラス思考へと持っていく。これこそもっとも大切な力です」と、梶山教諭は笑顔で話した。

エナジードの授業が主体性、積極性を養う

21世紀型スキルを身に付け、自己肯定感を育成するエナジードの授業(コロナ禍以前)
21世紀型スキルを身に付け、自己肯定感を育成するエナジードの授業(コロナ禍以前)

 コロナ禍をはね返すような生徒たちの主体的、積極的な研究姿勢について、梶山教諭は、現高1生が中1生だった2018年度に導入した次世代型キャリア教育コンテンツ「エナジード」による授業の影響を見る。

 このカリキュラムの目標は、予測不能な世の中を生きるための21世紀型スキルを身に付け、自己肯定感を育成することにあるという。授業では、「気付く」「発案する」「実行する」の三つの力を意識しながら、「AIに負けない人間の力とは何か?」のような問いかけに対して自らの考えを出し、グループで議論する。話を聞く際には、相づちを打ち、否定はせず、良いと感じたらオーバーなくらいに反応することをルールとしているという。

 「そのような経験を重ねることで、意見やアイデアを気後れなく発信できるようになり、さらに周りを巻き込んで議論を発展させ、行動に移すことが自然にできるようになっていきました」と梶山教諭は話す。

 「やらされたことはその場限りですが、自分から取り組んだことは忘れません。そして、学びの本質は自分が知りたいことを深掘りしていく楽しさだと考えています。当校はそれを体感する機会を常に用意しています」と梶山教諭は力説する。そうした環境で3年間を過ごした学年全体の意識の変化が、コロナ禍での課題研究発表会を下支えしたのかもしれない。

自ら学んだことを基に一歩を踏み出す

太田さんが英語でまとめた課題研究発表前の要旨資料
太田さんが英語でまとめた課題研究発表前の要旨資料

 今年も3月に実施された研究発表のテーマは、歯列矯正で抜歯した経験をきっかけとしたiPS細胞や歯髄バンクのリサーチや、紫外線や飼育容器の色といった環境要素から調べた金魚の色素の源など自然科学系の研究の一方、消費税や児童虐待といった社会問題、音楽やスポーツ、健康、AIなど、身近な疑問を掘り下げた研究も多く、多種多様だ。なかには内容が充実しすぎ、2倍速で録画して制限時間内にまとめ上げた生徒もいたそうだ。

  太田(おおた)琴実(ことみ) さん(現高1)は、大好きな猫の殺処分を減らすことをテーマに探究した。「研究によって、殺処分を減らすには、まず保護施設へ持ち込むことから減らせばいいと気付きました。野良猫の飼い主を探したり、1円でもいいから募金活動に協力したり。ショックや悲しみといった感情に止まっていないで、小さな一歩でいいから踏み出し、自分の行動で変えていくことの大切さを改めて実感しました」

 発表動画をまとめる時期には、パソコンが得意な太田さんに、たくさんの友達からSOSの声が届き、友達に教えることで自分も知らなかった操作法に気付くなど学ぶことが多かったという。また、太田さんは自主的に、発表の要旨を日本語と英語でまとめることにもチャレンジしたそうだ。

田中越郎校長が口にする「毎日2時間勉強」という言葉を裏付けた山口君の研究
田中越郎校長が口にする「毎日2時間勉強」という言葉を裏付けた山口君の研究

  山口(やまぐち)(かなめ) 君(同)は勉強法について探究した。田中越郎校長が、終業式に毎回必ず「毎日2時間勉強しなさい」と話すことについて、「なぜ2時間なのか」と疑問を感じたことからテーマに選んだという。「インターネットや書籍で集めたデータから、2時間が勉強効率の分かれ目で、ベネッセの学習基本調査でも2時間以上勉強している人の伸び率が大きい。さらに、1時間を15分3セットに分け休憩を入れながら勉強した方が、より効率が良いと知りました」。

 山口君は、発表動画を作成する中で、パワーポイントの使い方など未知のことを調べ、自分の知識にしていくことが楽しかったという。「今では知らないことをすぐに調べるようになりました」と自身の変化を実感している。ちなみに山口君は発表のあと、その勉強法を毎日続けているそうだ。

 すべての発表動画は在校生専用の校内サイト上で公開され、下級生からコメントや評価を受けるとともに、次年度以降の課題研究発表の参考にもされている。2020年度はこのような形式だったが、全員が中1からタブレットパソコンの「サーフェス」を所持している今年の中3生は、逆にポスターセッションに戻して、質疑応答など生のやりとりを充実させてはどうかとの案も出ているという。

 この「課題研究発表」を通して、生徒たちは答えのない問いに自ら取り組み、時に仲間たちと議論しながら考え、表現を磨いていく。「このような姿勢こそ、大学入試に求められる思考力・判断力・表現力の源ではないでしょうか。その先の人生も、自分を主語としてアクションを起こし、切り開いていってほしいと願っています」と、梶山教諭は思いを込めた。

 (文:西原槇 写真:中学受験サポート 一部写真提供:東京農業大学第一高等学校・中等部)

 東京農業大学第一高等学校・中等部について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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2255197 0 東京農業大学第一高等学校・中等部 2021/08/06 05:01:00 2021/08/06 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/08/20210802-OYT8I50017-T.jpg?type=thumbnail

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