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【特集】協働して最適解を見つけ出す中学の「情報」授業…城北

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 城北中学校(東京都板橋区)は、情報教育を核とした「総合学習」を実践し、今年5年目を迎えた。アクティブラーニングやPBL(課題解決型学習)の専用教室を拠点に、生徒たちは3年間を通してプログラミングや情報リテラシー、プレゼンテーションなど多彩なスキルを磨き、3年次には全員、好きなテーマを10か月がかりで研究、発表する「卒業研究・卒業制作」にも取り組む。この学習の概要と参加する生徒たちの声を聞いた。

アクティブラーニングやPBL用に設計した教室

「情報」授業の企画運営を担当するICT指導部長の井上教諭
「情報」授業の企画運営を担当するICT指導部長の井上教諭

 週1時間の総合学習「情報」の授業は、2017年度に新設した「iRoom」で行われている。「情報」授業の企画運営を担当するICT指導部長の井上昭雄教諭は、「アクティブラーニングやPBL用に設計した教室です」と説明する。

 中に入ると目に付くのは、 勾玉(まがたま) 形のテーブルを二つ組み合わせて円形にした4人がけのテーブルだ。前後の壁にはホワイトボード、左右の壁には大型モニターが設置され、スライドショーなどがどの席からも見やすい。床はタイルカーペット敷きで、さまざまな製作やロボットを動かす実験などもしやすくなっているなど、工夫が凝らされていた。

 「学校では2014年度から学校のICT環境整備に取り組んできました。一方でアクティブラーニング・PBLのオリジナル授業の構想も進め、『iRoom』完成とともに総合学習『情報』を立ち上げました」

 カリキュラムを構築するにあたり、井上教諭が重視したのは「生徒が意欲的になれる内容」だという。「私は高校の物理も担当していますが、授業ではディスカッションや発表中心のPBLを取り入れています。それをベースに構想を練り、時代に合った内容で生徒が主体的に参加できる、そして社会人となった時に役立つ授業を、『クリエイティビティー』『プレゼンテーション』『プログラミングスキル』『情報リテラシー』『リサーチ力』などのキーワードを基に考えました」

 総合学習「情報」では、学校が契約しているICTコンサルタントと議論しながら授業づくりを行っている。内容は、タイピングなど基本スキルの習得に始まり、「自分の街の紹介」「遠足や研修旅行の報告」といったプレゼンテーションの実習、「Sphero Edu」や「Pepper」などのロボットを動かすプログラミングの学習、ゲームを使ったネット時代のコミュニケーションの考察、テレビ番組を素材とした情報リテラシーの鍛錬、さらに音楽制作アプリ「GarageBand」を使った作曲まで、多岐にわたる。

 毎回の授業の様子について、井上教諭は「生徒たちは自主的に手を動かし、言葉を交わし、頭を働かせます。いつも誰かがしゃべっていて、にぎやかで、非常に活気のあるアクティブラーニングを実践しています」と話す。

自由なテーマを追求する中3の「卒研・卒制」

iPadなどを活用してまとめたプレゼンテーション資料
iPadなどを活用してまとめたプレゼンテーション資料
全員の発表内容をまとめた研究紀要
全員の発表内容をまとめた研究紀要

 総合学習「情報」は中2を対象に開始され、19年度から中学全学年に拡大した。その際、中3には、「卒業研究・卒業制作」を導入した。

 「中学卒業にあたり、何か記念になる取り組みをさせたかったからです」と井上教諭は話す。「本校ではiPadやBYODのノートパソコンを活用した学習発表を頻繁にやりますが、長期間の研究やまとまった量のプレゼンを行う機会は多くありませんでしたから、これを経験することで、生徒はさまざまなことが見えるようになると思いました」

 「卒研・卒制」は、通常の「情報」授業の一部として、生徒が自主的に進める。6~7月に研究計画書を作成し、夏休みに研究活動とリポート作成を行う。9~10月にそれをプレゼンテーション資料にまとめる。年明けにクラス全員が5分間のプレゼンテーションを行い、その内容を全員がルーブリックを使って採点する。Google Formsによる一斉投票でクラス代表を1人決め、年度末の修了式に生徒や保護者の前で発表する。全員の発表内容は毎年「研究紀要」という冊子にまとめている。

 テーマは、生徒自身が研究・制作したいことであれば原則的に認める。プレゼンテーションの形式もスライドショーを始め、動画やプログラム、音楽作品など自由としている。

 「下品な内容やヘイトを含むテーマでない限り、アイデアを否定しないし、結果も批判しません。プレゼン資料作成に当たっては、内容を効果的に伝えるためのアドバイスなどを行いますが、授業では通常、生徒の作業を机間巡視しながら『面白そうだな』などと感想を言ったり、生徒の質問に答えたりするのが主です」

 昨年度「卒研・卒制」に取り組んだ生徒の声を聞いた。「小さな頃からデータが好きで、アニメのキャラクターなどの設定に詳しかった」という石割 奏輝(そうき) 君(高1)は、好きなプロ野球チーム「日本ハムファイターズ」のデータ研究に取り組み、チーム全試合の得失点をイニングごとに調べ、チームの特徴を考察した。

 発表で苦労したことは、集計表や文章でまとめた14ページのリポートを、5分間のプレゼンテーション用資料に集約することだったそうだ。「伝えたい情報が浅くならないようにしながら、野球を知らない人も興味を持てるよう、入れる内容、省く内容を見極めるのに時間を使いました。まとめる力が付いたと思うし、表計算アプリを使えるようになったのも良かった」

 山口敦義君(同)は、発泡スチロールや竹ひごで翼幅1メートルほどのグライダー型模型飛行機を製作した。小学生時代に「鳥人間コンテスト」に憧れて何度か作ったことを思い出し、改めて取り組んだという。NASA(米航空宇宙局)がWEBで公開している航空力学の資料を参考にし、3D設計アプリ「Shapr(シェイパー)」を独学で習得して設計に使った。発表では、写真や図などを多くして直感的な分かりやすさを工夫したほか、製作した図面や失敗作・成功作の実験動画も取り入れ、飽きさせない構成を考えたという。

 山口君は卒業制作を通して自分の夢を再確認したという。「子供の頃、なんとなく『パイロットになりたい』と思っていましたが、はっきり将来の目標になりました。大学もこの目標を基に決めたいと思います」

STEAM教育カリキュラムへの発展目指す

修了式でプレゼンテーションを行う生徒
修了式でプレゼンテーションを行う生徒

 「3年間の『情報』授業や『卒業研究・卒業制作』の取り組みは、受験用の学力に直接結びつくとは限りませんが、進学後や社会に出た時に、必ず役立つことを教えているつもりです」と井上教諭は話す。

 井上教諭がこの授業のポイントと考えているのは、協働力や問題解決能力の育成だ。「設定されたゴールを目指し、仲間とディスカッションして多様な方法を試し、最適解を見つけ出す。どの内容もこれを外していません。今後の社会では、何より必要とされる能力のはずです」

 目に見える成果もある。生徒がICTツールを遊び道具ではなく、文具と捉えるようになったことだ。「筆記具、記憶媒体、資料源として、議論の中でも自然に使うようになっています。こうなると、ゲームよりはるかに面白いはずです」

 今後力を入れたいことの一つは、動画編集やプログラミングの強化だ。「現在多くの生徒が学校共用のiPadで授業を受けていますが、共用ではデータをクラウドから呼び出す必要があり、時間がかかってしまう。ご家庭の協力も得てBYODがある程度進めば、本格的に動画編集などをやりたい。プログラミングも、誰もがより楽しく意欲的に習得できる方法を模索しています」

 昨年度はコロナ禍に見舞われたため、授業コンテンツづくりは多少停滞したそうだが、「今後は学年ごとのステップアップを意識し、3年間のSTEAM教育カリキュラムに発展させたい」と井上教諭は意欲的に構想を語った。

 (文:上田大朗 写真:中学受験サポート 一部写真提供:城北中学校・高等学校)

 城北中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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2221034 0 城北中学校・高等学校 2021/07/29 05:01:00 2021/07/29 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210720-OYT8I50012-T.jpg?type=thumbnail

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