【特集】オンライン授業でコロナの危機を乗り越える…新渡戸文化

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 新渡戸文化中学校・高等学校(東京都中野区)は4月から、新型コロナウイルスへの対策としてオンライン授業をスタートさせた。今春、米アップル社の認定するADE(Apple Distinguished Educator)資格者を始め、気鋭の教師17人を迎え、教師陣は必要なICTの知識を学び合ってオンライン授業に必要な体制を素早く構築した。オンライン授業の内容と、そのための教員研修を取材した。

生徒全員、初回からスムーズにオンライン授業

「生徒全員が参加してオンライン授業がスタートできました」と話す小倉校長
「生徒全員が参加してオンライン授業がスタートできました」と話す小倉校長

 同校は約1年前からICT教育を展開しており、中学校の生徒には全員iPadが配布されている。高校と小学校のクラスの生徒・児童も、家庭にあるパソコンやスマートフォンを使用し、全生徒に対するオンライン授業が可能になっている。

 基幹となるプラットフォームには、米グーグル社の提供している学習管理ツール「Google Classroom」を使う。これによって先生から生徒へ、連絡や課題の配信をしたり、生徒から先生へ課題を提出したりできる。また、オンライン授業では「Zoom」というWeb会議システムを使う。「Zoom」のアプリを開くと、分割された画面に先生とぞれぞれの生徒の顔が映り、会話も可能になる。先生や生徒のパソコン画面を映すこともでき、一斉に授業をしたり、グループごとに分かれて話し合ったり、質問があれば挙手もできる仕組みになっている。

 小倉良之校長は、「円滑で実りあるオンライン授業を目指して会議を重ね、4月1日にはコミュニティサイトを開設しました。3日に生徒の緊急招集日を設けてオンライン授業の準備を行ったため、6日の初回授業から全ての生徒が参加して、スムーズにスタートできました」と説明する。

 コミュニティサイトでは毎日、「Zoom」のミーティングIDと課題が配信され、教員のコラムが掲載される。午前10時に各生徒がその日のミーティングIDからログインして朝学活が始まる。映像で出欠、健康観察を行った後は、日々の不安や悩みを共有する。

Web会議システムを使ったオンライン授業 
Web会議システムを使ったオンライン授業 

 「生徒の安全安心の場を作り、学びを止めないことが最上位の目的です」と小倉校長は話す。「学校は何のためにあるのか、などの哲学対話の時間を設け、今この難局をどう乗り切っていくか、生徒たちと考えます」

 授業は午前11時に始まる。英語、国語、数学、理科、社会、保健体育の授業を日替わりで行い、12時には終了。午後2時からは曜日替わりで国語・数学・英語のZoom自習室が開き、生徒は任意で参加。担当教諭に質問しながら個別学習に取り組むことができる。生徒たちは午後8時までに「Google Classroom」で課題を提出する。

 「ほぼ全ての教員が在宅でオンライン授業をしています」と小倉校長は話す。「もともと一方的な講義スタイルは取らないという認識を教員で共有していたからこそ迅速な対応ができました。初回授業では、『未来の〇〇』について考えました。車の未来や料理の未来、生物の未来など生徒の興味関心に応じて情報を検索し、文章や絵でまとめる活動です。どの生徒も創造力豊かで、私たち教員の想像を超える作品もたくさん出てきました。生徒たちはデジタルネイティブですから、すぐに適応できます。問題なのは僕らの年代の教員ですね」と苦笑する。

新しい教育を目指す気鋭の教師たちが集結

学園の教諭らによるICT研修で講師を務めた芥教諭 
学園の教諭らによるICT研修で講師を務めた芥教諭 

 そこで教員の資質を高めるために、オンライン授業のスタートに先駆けて3月30日、学園の小中高の教諭約50人が参加するICT研修が行われた。

 この研修の講師として中心的な役割を果たしたのが、4月から同校に着任した芥隆司教諭だ。芥教諭は、米アップル社が、同社のテクノロジーを使って教育改革を進める教師として認定するADEであり、前任校の三田国際学園中学校高等学校ではICT活用委員長として活躍した。

 三田国際では数学の授業で、生徒たちが考えた「選挙」「SNS」「心理的安全」などのテーマを、データ分析や図形・デザインの利用など、論理的、数学的手法によって分析し、それをもとに実際の社会的行動につなげる授業を行ってきた。この独特の授業スタイルから「教えない先生」と呼ばれてきたという。

 「こうした授業を模索している中で、2年ほど前に山本崇雄(たかお)先生、山藤旅聞(さんとうりょぶん)先生と、それぞれ別々のセミナーを通して知り合いました。私がiPadを通じて教育を考えていく中で見えてきた理想の学習を、お二人はすでにそれぞれ実践されていたのです。縁あって同じ職場で同じ志で本質的な教育を目指していくこととなり、光栄に感じています」

 統括校長補佐を務める山本教諭は「教えない授業」と呼ばれる英語のアクティブラーニングの第一人者で、山藤教諭もSDGsと理科をかけ合わせたプロジェクト学習を推進して注目されてきた。ともに昨年度から新渡戸文化の新しい教育「未来授業デザイン」を担っている。

 小倉校長は「今年は17人の新しい教員が新渡戸の教育に参加します。2人の教諭の引力が大きいですね。新しい教育にアンテナを張っていた先生たちが彼らに共鳴して、新渡戸が複数の線の交差する点になったのでしょう」と語る。

 新任17人の中には、文化学園大学杉並中学・高等学校でICTを駆使したSDGsのプロジェクト学習を行ってきた生物の奥津憲人教諭や、玉川聖学院中等部・高等部で世界の課題に向き合うプロジェクト学習を行ってきた社会科の高橋純司教諭、順天中学校・高等学校で保健体育のアクティブラーニングを行ってきた小林光一教諭らがいる。各科目で新しい教育に挑戦しようとするリーダー的教員が顔をそろえた感がある。

テクノロジーと熱意で立ち向かう教師たち

 この日の研修は、新しく着任した先生たちも交えて一緒に行われた。iPadを使った教員同士の自己紹介ビンゴゲームに始まり、ビデオアプリを使って授業用の動画を作成したり、「Zoom」を使ったオンライン授業の実習をしたりと、盛りだくさんの内容だった。

 芥教諭はときどき「どんどんおしゃべりして、アウトプットしてください」「相手をほめるのを止めてはいけません」と、積極的な参加を促していた。新任の奥津教諭も講師として、教育支援アプリ「ロイロノート・スクール」の使い方のレクチャーを行った。各先生も実際にアプリにログインして、シンキングやプレゼンテーションのツールとしての使い方や、提出箱の管理方法を試すなどして、研修会は終始、真剣な中にも楽しげな雰囲気で続いた。

 研修の後、芥教諭は「教員のみなさんが食いついて、前のめりでやってくれる感じが良かったですね」と話した。「ICTは勉強の道具というより、社会につながる道具だと思っています。私は生徒に対して、『因数分解って何だろう』『三平方の定理は日常のどんな場面で使えるか』というように大まかな問いしか投げかけません。すると、そこから生徒はICTを使ってワクワクしながら能動的に学び、自分と社会とのつながりを見つけていきます。知りたいことを深めていく過程で、英語や理科などの教科も必要になってくるでしょう。それがおのずと新渡戸の進めるクロスカリキュラム(教科横断型授業)にもなっていきます」

 小倉校長もこの日の研修について「のちに振り返ったときに、あの時期に、こうしたテクノロジーがあって良かった、と思えるような研修になったと思います。もちろん、オンラインだけでは学校として十分ではなく、人間関係を構築した学び合いの場が必要ですが、今の危機を、テクノロジーで乗り越えていきたいと考えています」と話した。

 新型コロナウイルスがもたらす危機を、テクノロジーと熱意で乗り越えようとする個性的な教師たちの姿は、生徒たちにとって大きな刺激となるに違いない。

 (文・写真:小山美香)

 新渡戸文化中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1180917 0 新渡戸文化中学校・高等学校 2020/04/24 05:21:00 2020/11/18 16:25:08 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/04/20200422-OYT8I50050-T.jpg?type=thumbnail

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