読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

【特集】新教材開発で中高とも「未来の教室」モデル校に…新渡戸文化

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 新渡戸文化中学校・高等学校(東京都中野区)は、中学と高校それぞれが経済産業省の「未来の教室」実証モデル校に選ばれた。中学・高等学校の教育改革を手掛ける2人の教諭と教育系企業が共同開発するICTを活用した教材が経産省に注目されたという。二つの教材の特徴や今後の活用法などについて取材した。

AI型教材による学力評価の可能性に踏み込む

「AIの評価を基に、生徒に適切な声かけができ、やる気を引き出すことができます」と話す山本教諭
「AIの評価を基に、生徒に適切な声かけができ、やる気を引き出すことができます」と話す山本教諭

 同校は今年から、中学の数学と英語にCOMPASS社のAI型教材「Qubena(キュビナ)」を導入している。活用を進める中で、AIによって生徒の学力評価を補助する可能性が浮かび、COMPASS社と共同でQubena英語教材の新機能として、観点別評価をサポートする機能の開発を手掛けることになった。経済産業省は教育とテクノロジーを融合した学び「EdTech」の普及を目指す「未来の教室」実証事業を推進しており、この共同開発が今年7月、実証事業として採択された。

 同校は昨年から中学で、ICTを活用しながら、社会課題に挑戦する学びを目指した教科横断型の授業を実践している。この授業を担当しているのが、「教えない授業」で知られる英語科の山本崇雄(たかお)教諭と、SDGs(持続可能な開発目標)と実社会をつなげる授業で知られる理科の山藤(さんとう)旅聞(りょぶん)教諭の2人。今回の実証事業採択についても2人が中心的な役割を果たしている。

 山本教諭によると、コロナ禍に伴って同校でも1学期にオンライン授業が実施され、教科横断型の授業でも、ビデオ会議システムを使って一般の大人たちに生徒たちの探究学習成果を披露するなどした。こうした生徒の主体性を引き出す授業の一方、基礎学力を強化する個別最適化学習の時間で、中学の数学と英語に「Qubena」を導入し、生徒が自由に学習を進められる体制も整えたという。

 「ところがオンライン下で、どのように中間・期末テストを実施するかという問題が出てきたのです」と山本教諭は話す。「しかし、QubenaではAIが自動的に生徒一人一人の学習歴を分析してくれます。正答率や学習の量や時間、問題を解く過程や操作を分析できるのですから、評価まで自動化できるのではと考えたのです」

 COMPASS社の創業者の神野(じんの)元基(げんき)さんは、「この生徒はこの分野が苦手だからこの問題を出そう、この生徒は十分に理解しているから飛ばしてここを学んでもらおう、というようにAIが生徒一人一人に合わせた問題を出し、学習歴のデータを用いて評価を示し、先生の手助けになることを目指しています」と開発の目的を話す。「テスト作成や評価にかかる時間が省け、空いた時間でより本質的な学びができるようになるでしょう。人類にとっても大きな一歩になると思っています」と意気込む。

改訂指導要領の複雑な学力評価をAIが補助

AI教材の可能性について、リモートで話すCOMPASS社の神野氏
AI教材の可能性について、リモートで話すCOMPASS社の神野氏

 神野さんによると、千代田区立麹町中学校が2018年から数学の授業にQubenaを導入したところ、学習進度が通常の約2倍になったとする実証報告があるという。これだけでも授業の大きな効率化だが、今回の共同開発は、さらにその先の学力評価までAIに一端を担わせる点に特徴がある。

 「未来の教室」担当の浅野大介・経産省教育産業室長は、こう期待を寄せる。「学習指導要領の改訂により、2021年度から順次、中学と高校の評価も『知識・技能』『思考・判断・表現』『主体的に学習に取り組む態度』の三つの観点で行われるため、先生には大変な労力と時間が必要です。だったら、それはAIにある程度任せることで、先生は先生にしかできないこと、生徒を観察して適切な声かけをしたり、探究学習を指導したりすることに時間に使えるようになってほしい」

 AIによる学力評価について浅野室長は、「意欲を評価する場合、授業中に頻繁に手を挙げる生徒だけを評価してしまうかもしれません。しかしAIなら、生徒が問題に何度取り組んだのかも記録されますから、教師の視界に入りにくい、粘り強く問題に向かう姿勢も見落とさずに評価できるのです」とメリットを指摘する。

 山本教諭も「何も勉強しないで0点なのか、何度も問題に挑戦した上での0点なのか。たとえできなくても、挑戦した瞬間が大事で、『挑戦できるあなたはとてもすてきだよ』と声をかけると、生徒は自律的な学びの一歩を踏み出すのです。AIの評価を基に、生徒に適切な声かけができ、やる気を引き出すことができます」と前向きだ。

SDGsの探究学習と受験勉強を両立させる

社会課題の解決に向かう学びについて話す山藤教諭(左)と、教材開発で提携するZ会の野本氏
社会課題の解決に向かう学びについて話す山藤教諭(左)と、教材開発で提携するZ会の野本氏

 中学だけでなく高校でも、Z会グループと提携して取り組む「社会課題やSDGsを活用した探究活動と受験勉強を両立できる教材の開発実証」が7月、「未来の教室」実証事業に採択された。すでに生物、化学、日本史、世界史の4教科について、この教材の開発を始めているという。

 この教材の使い方について山藤教諭は「社会課題の解決に向かう学びです。誰かが困っているから、その解決のために教科を学ぶ。より良い未来の姿から逆算して現在を考えるバックキャスティング型の学びです」と説明する。

 開発実証のプロセスとして1学期は、高1の生徒を対象に、自分が興味のある分野を調べ、そこから逆算して、今何を学ぶべきかを見定める取り組みを行ったという。

 異常気象に関心がある生徒は、解決につながる行動を取れるように、理科や社会を学ぶ必要があると考える。ミュージカルが好きな生徒は、コロナ禍の暗い世界をミュージカルで明るくできるよう、英語による表現力を磨く大切さが分かるという具合だ。

 山藤教諭は「高校から入学した生徒の保護者からも、『たった1学期の間に、あの子がこんなにやる気のある子に変わった』と驚きの声が上がっています。私から勉強をやれとは言いません。それでも、生徒自ら学び始めています」と話す。「生徒からは『受験のため』という言葉は一切出てきません。これが本来の学びです。やってみたい、知りたい、深めたいと思ってそのために必要な勉強をしていたら、学習指導要領が終わっていた、やりたいことを実現させる過程で大学受験が必要になれば受験もできる、という学び方です」と山藤教諭は説明する。

 Z会の経営戦略部事業企画課の野本竜哉課長も、「学びの入り口はSDGsです。興味を持った社会課題を解決するために、必要な単元をタブレットで学んでいくと、学習指導要領をカバーして、大学入学共通テストにも役立てられるようになっています」と話す。

 2学期以降は、徳島県や三重県など地方からのオンライン・ライブ授業を行う予定だという。「現場で感じて、見えてきた課題を解決するために学んでいきます。Wi-FiとiPadがあれば、どこからでもリアルな学びを生徒に届けることができます」

 三重県の漁村では、現地の漁師らの定置網漁をライブ中継する予定だ。「高齢化が進んだ地域からの中継です。去年まで漁をしていたおじいさんが、転んで車いす生活となり、もう漁ができないということもありました。その現実を見ることで、10年後には三重産の魚が食べられなくなるかもしれないという危機感が出て、この社会課題が自分ごと化し、解決に向けて学びを深めていくわけです。誰かの笑顔のために学ぶのです。来年度は現地に生徒が行くことも考えています。その時はiPadを活用した個別最適化学習も現地でしっかり学べるデザインを考えています」

 浅野氏は「未知の課題に取り組むとき、ICTを駆使して知識を広げたり、人とつながったりしながら解決していく、この力を子供のうちに身に付ければ、難題にぶつかっても、自分で解決できる大人になります。これこそ文部科学省の目指す『生きる力』です。私たち経産省の支援で学校と企業が手を組み、その取り組みを発信することで、全国にその学びを広げたい」と話す。

 中高二つの取り組みがどういう成果を結ぶのか、これからが注目される。

 (文・写真:小山美香 一部写真提供:新渡戸文化中学校・高等学校)

 新渡戸文化中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

無断転載・複製を禁じます
1624409 0 新渡戸文化中学校・高等学校 2020/11/17 07:00:00 2020/11/17 07:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201113-OYT8I50042-T.jpg?type=thumbnail

会員校一覧

東日本 共学校ページTOP

── 女子校ページTOP

西日本ページTOP

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

新着クーポン

NEW
参考画像
お買い上げ金額から10%OFF
NEW
参考画像
1ドリンクサービス(お一人様1杯)
NEW
参考画像
1,000円以上お買上げの方に「とうきび茶」プレゼント
NEW
参考画像
「ふぞろいの牛タン・切り落とし」一品プレゼント!
NEW
参考画像
ファーストドリンク一杯無料

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)