まだ見ぬ新入生のため中学生が「英文法の辞書」を手作り…東京成徳深谷

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 多くの学校同様、新型コロナ感染対策で休校を余儀なくされていた東京成徳大学深谷中学・高等学校(埼玉県深谷市)で、中学生たちがオンライン授業の一環として「英文法の辞書作り」をした。少人数教育と親身な指導を持ち味とする同校は、生徒同士や先生・生徒の距離が近いのが特徴であり、休校期間中もさまざまな心の交流があったという。中3の担任を務める福田雅貴教諭に話を聞いた。

後輩のために中2、中3生が力を合わせる

菊地さんのまとめた現在完了形の英文法
菊地さんのまとめた現在完了形の英文法
瀬出井君のまとめた一般動詞の英文法
瀬出井君のまとめた一般動詞の英文法

 同校は、共学の高校に2013年から中学が併設され、中高一貫校となった。高校から入ってくる生徒に比べ、一貫コースの生徒は少人数なのが特徴で、中学の各学年は1クラスずつとなっている。福田教諭が担任を務める中3のクラスは13人だ。

 3か月以上にわたる休校期間中、福田教諭は「担任する13人のことを昼も夜も考え続けていました」と話す。6月1日に学校が再開したとき、「久しぶりの登校で生徒たちに会ったとき、私の元気は、生徒たちからしかもらっていないんだと実感しました」と目頭を熱くしたという。

 この13人と中2の全学年9人が、まだ顔を見ない新入生を思って、「英文法の辞書作り」プロジェクトに取り組んだ。初めて英語を学ぶ後輩に、先輩として分かりやすく文法を教えたいという思いからだ。

 この「辞書」は、be動詞や一般動詞から現在進行形、助動詞や比較、分詞など中学の3年間で習う文法項目を分かりやすく説明した内容となっている。文法項目ごとに生徒に分担が与えられ、それぞれがA4の紙に手書きでまとめた。

 この「辞書」をまとめることは、中2、中3生自身にとっても休校期間を生かしたいい学習になったという。中3の菊地真純さんは、キャラクターや図を駆使して、現在完了形の部分をまとめた。「自分の忘れていたところを再確認できましたし、学ぶ力が付いたと感じました。友達もこれを見て復習できたようですし、いいことずくめの勉強でした」

 中2の瀬出井瑛晄君は、一般動詞の文法をまとめた。「見出しは大きく、簡潔な文で分かりやすいように心がけました。先生になったみたいな気持ちで楽しかったです」

 「どの生徒も熱心に仕上げてくれました。図を使ったり、キャラクターを作って説明したり、その出来栄えに驚きました。英語が嫌いな生徒も、後輩のためだと頑張れるのですね」と福田教諭は笑顔で話した。

自分の弱みを打ち明け合ってクラスがまとまる

少人数教育で先生と生徒の距離が近く、生徒同士も仲がいい
少人数教育で先生と生徒の距離が近く、生徒同士も仲がいい

 この「辞書作り」に見られるような、生徒同士のまとまりや先生・生徒の関係性の近さの背景には、少人数教育ならではの親身な指導がある。

 「中3生の13人は6年間を共に過ごします。最高のチームになるためには、育ってきた背景も一人一人違う生徒たちが、お互い尊重し合うことが重要です。ですから、中1から仲間づくりに力を入れてきました」と福田教諭は話す。

 指導方法も独特だ。「なるべく私は口を出しません。私が一方的に叱れば、生徒は考えなくなってしまいます。生徒に考えるきっかけを与えて、思考させるのです」。例えば、授業中に生徒が寝てしまったら、ただ叱るのではなく、なぜその生徒は寝てしまったのか、周りの生徒はなぜ起こさなかったのかを、クラスで話し合う。

 「先生の前でいい子にしているだけでなく、先生がいなくても、何か起こったら声を上げて話し合う、独りぼっちの子がいたら声をかける、そんなクラスになってほしいのです」

 こうした指導を続けていくうち、少しずつ生徒たちの姿勢は変化し、誰に言われなくても全員が朝自習をするなどの、まとまりが生まれてきた。それを大きく推し進めるきっかけとなる出来事が昨年度の1学期にあった。それはホームルームの時間に行った「自分の弱みをさらけ出す」という授業だったという。

 この授業の目的について福田教諭は、「いろいろな悩みがあっても、心のよりどころがあれば乗り越えられる。生徒たちには、自分の弱みをさらけ出し、自分を見つめ、これがあるから頑張れるという、心のよりどころを見つけてほしかった」と話す。

 福田教諭がまず、自身の母が外国人だったことから、小学生の時にいじめに遭って苦しんだ体験を話した。次いで生徒が一人一人順番に自分の弱みを話していく中で、ある生徒がこう発言した。「私は小さい頃から言いたいことが言えなかった。自分が感じたことを周りがどう思うか分からないと思うと、怖くて言えなかった。でも、今初めて、自分が言いたいことを言える環境、このクラスがあることに気が付いた」

 そう言い終わると、みんなの前で初めて涙を流した。周りの生徒たちももらい泣きし、教室は温かい空気に包まれたという。

 その様子について菊地さんは、「当時はクラス全体が、だらだらした雰囲気でした。そんな時に受けたこの授業で、私も感極まって泣いてしまいました」と振り返る。「その時から、クラスの雰囲気が変わりました。オンとオフのメリハリがつけられるようになり、勉強する時はみんなで勉強する、遊ぶ時は遊ぶ、いいクラスになったと感じます」

オンライン授業でも生徒に考えるきっかけを

「最高のチームになるためには、お互い尊重し合うことが重要」と話す福田教諭
「最高のチームになるためには、お互い尊重し合うことが重要」と話す福田教諭

 生徒に考えるきっかけを与え、思考させる授業は、休校中の4月13日から始まったオンライン授業でも行われたという。

 福田教諭はホームルームの時間に、インターネットで視聴できる無料の講演サービス「TED Talks」で、民間の中小企業ながら宇宙開発を手掛けている植松努さんのスピーチ「思うは招く」を生徒たちに紹介した。

 子供の頃から宇宙に憧れた植松さんは、先生に「宇宙開発なんて、すごく頭が良くないとできないんだから、どうせおまえには無理」と言われてきたという。しかし、祖母が教えてくれた「思うは招く」という言葉を信じて宇宙への憧れを持ち続け、ついに人工衛星の打ち上げや、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同打ち上げ実験を達成したという。

 このスピーチを聞いた生徒たちは、それぞれ長い感想文を書いてきた。福田教諭はそれに感想を返して、やりとりを重ねた。「植松氏にとって『思うは招く』という言葉が、頑張れるよりどころとなったように、生徒にも、そうしたよりどころを何か見つけてほしい。こうした授業で、私が少しでも生徒をインスパイアできたらうれしい。生徒の悩みも聞くし、悩みを解決もしたい」と福田教諭は話す。

 「中学時代、自分のことを考えてくれる大人がいると思えば、きっと勉強でもなんでも頑張れるはずです。生徒一人一人が、『私はこれを頑張った』と言える中学生活にしてやりたい」

 休校期間中に誕生日を迎えた福田教諭は、生徒から手作りのプレゼントをもらい、保護者からもメッセージを送られたという。「本当にうれしくて、思わず涙が出ました」

 生徒同士、先生・生徒が互いのことを考え、思いやれる環境こそ、同校の教育の大きな財産なのだろう。

 (文・写真:小山美香 一部写真提供:東京成徳大学深谷中学・高等学校)

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1325999 0 東京成徳大学深谷中学・高等学校 2020/07/09 05:21:00 2020/07/09 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/07/20200707-OYT8I50008-T.jpg?type=thumbnail

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