自分と向き合い、自分の中にある進路を探せ…立教女学院

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 立教女学院中学校・高等学校(東京都杉並区)は、進路指導にあたって生徒が自分とじっくり向き合って決める過程を大切にしている。生徒の約6割は系列の立教大学へ推薦入学するが、他大学に進路を求める生徒も多い。同校は、揺れ動く生徒の志望を見守り、自ら答えを出すよう導くという。進路学習指導主任の下村理央教諭と今春、進学を果たした5人の卒業生に話を聞いた。

進路指導とは生き方そのものを考えさせること

緑豊かなキャンパスに立つ立教女学院
緑豊かなキャンパスに立つ立教女学院

 「進路指導とは大学に行かせることだけではありません。生徒自身に自分の生き方そのものを考えてもらうことです」と下村教諭は話す。「本校で最も大切にしているのは、自分と正直に向き合ったかどうか。少しでも自分と向き合っていない部分があると、何かうまくいかなくなったとき、他人や親のせいにしてしまうことがあります」

 同校は、毎日の礼拝、キリスト教週間、キャンプ、ボランティア活動などさまざまな教育活動の中に、生徒が自分と向き合うきっかけを作っている。中でも「土曜集会プログラム」は、重要な役割を果たしているという。このプログラムでは月に1回程度、牧師や大学教授、医師、研究者など、さまざまな分野で活躍する識者を招き、キリスト教のテーマに沿った講話を聴く。

 今春、同校から早稲田大学社会科学部社会科学科に進んだ鶴岡由梨奈さんも、「私の軸は、土曜集会の学びにありました」と話す。

東京大学の山﨑さん(左)と早稲田大学の鶴岡さん
東京大学の山﨑さん(左)と早稲田大学の鶴岡さん

 鶴岡さんは高1の時に、土曜集会で「ペシャワール会」現地代表の医師、中村哲さんの講話を聴いたのが、進路を考え始めたきっかけだという。

 「アジアで少数民族へのボランティア活動をする中村さんの生の声は、衝撃でした。国際協力は現地に飛び込んで地域の課題に向き合うことが大切だと気付いたのです」

 春休みに、鶴岡さんは1人でタイ北部の少数民族の村を訪れた。村人と共に水路を作り、子供たちに運動会を企画するなどのボランティアを行ったという。

 「驚いたのは、無国籍の人が多くいたことです。国籍がない、自分の国というアイデンティティーがないことが、想像できませんでした。自分には偏見があると痛感し、異文化理解について深く考えるようになりました」

 鶴岡さんは自分と向き合い、国際関係の仕事に就きたいと考えた。国際協力の諸問題を解決するためにさまざまなアプローチができるよう、法・政治・会計・国際関係からマーケティングまでさまざまな学びができ、かつ、現場で学ぶことを大切にする早稲田大学の社会科学部を選んだ。

 「立教女学院は個性を伸ばす環境が整っています。今の私があるのも、母校のおかげです」と振り返った。

キリスト教の平和教育が進路への指針に

(左から)国際基督教大学の大石さん、立教大学の飯倉さん、慶応大学の矢部さん
(左から)国際基督教大学の大石さん、立教大学の飯倉さん、慶応大学の矢部さん

 慶応大学法学部政治学科に進んだ矢部美咲さんは、「立教女学院は、私にとって家以上に家でした」と語る。「ホームルームの自分の席に座っているときが、一番自分らしくいられたのです。受験も、友人や先生が支えてくれたので挑戦できました」

 矢部さんが大きな影響を受けたのは、立教女学院の「平和憲章」だという。創立以来の平和教育を2008年に改めて憲章として定めたものだ。戦いやさまざまな暴力からの解放、飢えに苦しむ人へ日々の食事から少しを分け合う精神、環境保護、それらを実現するために地域社会の仲間と共に協力していくことを定めている。

 「この精神の下、中3と高2の修学旅行では長崎や沖縄で平和学習が行われます。原爆の被害の記録を見続ける中で、なぜ戦争が起こるのか考えるようになりました」

 矢部さんはこれをきっかけに広く国際問題に関心を持ち、大学で国際政治を学ぼうと決心し、慶応大学法学部を選んだ。「大学に入ってから、キリスト教がいかに自分に根付いているか感じました。他者を尊重し、初対面の人でも隣人として接することができるようになったと感じています」

 国際基督教大学教養学部に進んだ大石利紗さんも、同じく「平和学習が今の私につながっています」と話す。さらに、模擬国連の全国大会に参加したのが、同大学に進む大きなきっかけになったという。

 「イラン大使の役で、イスラム教の立場から、ジェンダー平等の協議に関わるという難しい内容でした。日本ではイスラム社会は男女不平等というイメージがありますが、イスラムなりの男女平等があるのだと勉強になりました」

 大石さんは、グローバル時代の多様な価値観を理解し、偏見のない人間になりたいと考えたそうだ。そこで幅広く知識を学べるリベラルアーツの大学で学ぼうと、国際基督教大学教養学部を選んだ。

 「私は塾に行かず、学校の勉強だけで合格しました。勉強の指導はもちろん、私の話を前向きに聞いて下さり、私の意思を最大限に尊重してくれた先生方に感謝しています」

生徒自身の中から進路への答えを導く

「進路指導とは生き方を考えてもらうこと」と話す下村教諭
「進路指導とは生き方を考えてもらうこと」と話す下村教諭

 同校では高2から、「理系クラス」、文系の他大学を目指す「文1クラス」、立教大学の推薦を目指す「文2クラス」にコースが分かれる。生徒の約6割は立教大学に推薦入学するが、文Iクラスから医大に進学する生徒や、文2クラスから他大に進学する生徒もいる。

 「理系では医学部や看護学部への進学が多いのが特徴です。キリスト教教育の中で生死について考える機会が多く与えられているからでしょう。また毎年、芸術系の学部に進む生徒がいるのも特徴です」と下村教諭は話す。

 学校は生徒の意思を尊重し、成績のいい生徒だからといって他大学の受験を勧めるようなことはしていない。進学相談の面談では、生徒自身の中から答えを出すように導いていくという。「生徒の個人的な経験や思いが、本校の日々の学びや行事とリンクして、進路へのプロセスにつながっていきます」

 東京大学理科2類に進んだ山崎優希さんは、中学入学時から立教大学への進学を考えていたという。ただ、幼い頃から祖母の家庭菜園を手伝うのが好きで、農学部で学びたいという気持ちがあった。立教大学には農学部がないため、高3の秋まで迷っていた。立教大学に進ませたいと考える両親と意見が合わないことにも悩んでいた。

 「そんなときに担任の先生から『自分のやりたいことを学んだほうがいい』とアドバイスを受けて決心がつきました」

 反対のケースもある。立教大学異文化コミュニケーション学部異文化コミュニケーション学科に進んだ飯倉花実さんは「他大学受験を考えていたのですが、本当に学びたいことは立教大学にありました」と語る。

 「フィリピン留学へ行った時には、貧富の差の大きさにショックを受けました。アメリカのカリフォルニア大学デービス校に留学した時は、チームで英語のプレゼンを成功させ、積極的にコミュニケーションを取る大切さを痛感しました。そういう経験から、さまざまな世代の人、さまざまなバックグラウンドを持った人と関わりたいと思い、異文化コミュニケーションを学びたいと思うようになりました」

 大学を調べるうちに、立教大学異文化コミュニケーション学部が、自分の最もやりたいことが学べる学部だと分かった。「高3の卒論『現代日本においてJKビジネスが減らない原因の考察』で、ジェンダー問題を論述しました。大学でジェンダーの授業もあるので、今後も学ぶつもりです。立教女学院で得た知識やさまざまな学びが今の大学の学びに生かされています」

 下村教諭は、「他大学を受験する生徒も、推薦で立教大学へ進学する生徒も、お互いを刺激し合い、自分と向き合っていきます。じっくりと考えた過程は、夢に突き進むエネルギーへと変わります」と話す。

 大学名ではなく、真に学びたいことを見つけるまで生徒たちを辛抱強く見守る。それが立教女学院の進路指導なのだろう。

 (写真・文:小山美香)

 立教女学院中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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648400 0 立教女学院中学校・高等学校 2019/06/25 05:21:00 2019/06/25 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190620-OYT8I50031-T.jpg?type=thumbnail

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