校舎や制服を一新、ICTで学びも新しく…北鎌倉

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 北鎌倉女子学園中学校高等学校(神奈川県鎌倉市)は、「のびやかな自立した女性の育成」を新しい教育目標に掲げて学校改革を進めている。使い勝手のいい教室作りや音楽校舎の整備などの大改修に加え、ICT(情報通信技術)の積極活用による教育の質の刷新にも取り組んでいる。創立80周年となる2020年に向けて進む同校の改革を見て来た。

グループ学習しやすいオープンで自由な空間

日本家屋「千草庵」を背にする入試広報部長の川島彩教諭
日本家屋「千草庵」を背にする入試広報部長の川島彩教諭

 同校は1940年、医学者・教育家の額田豊博士の手によって設立された。東京帝国大学医科大学を卒業したばかりの額田博士は1907年、医学研究を深めるためにドイツへ留学し、ドイツ女性の合理性や教養に感心させられる。そこから、日本でも精神的にも肉体的にも健康で科学的な思考力を身に付けた女性を育成しよう、という思いで教育に傾倒していったという。この思いが同校の教育理念であり、創立80周年となる2020年に向けて、現在進められている学校改革にも、この理念が生かされている。

 「以前は礼儀やしつけに厳しい学校として知られていましたが、今回の改革の背景には『のびやかな女性の能力を、より育成する』という目標があります。建学の精神に立ち返ったとも言えるでしょう。高雅な品性を涵養(かんよう)しつつ、自分の力で考えて判断する女性、国際社会で活躍できる人材を育てます」。入試広報部長の川島彩教諭はこう説明する。

 学校改革は、授業プログラムの改革、英語力の強化、地元鎌倉に密着した体験学習などの柱があるが、特に目を引くのが施設・設備のリニューアルだ。

ホワイトボードとプロジェクターを設置した教室にはキャスター付きの机と椅子
ホワイトボードとプロジェクターを設置した教室にはキャスター付きの机と椅子

 当初は校舎の建て替えも検討されたが、校舎群は古都鎌倉の丘陵にあって、建て替えには遺跡発掘調査が必要となるため断念。代わりに現校舎内部を3年がかりで大胆に改造した。全教室から黒板を取り外し、ホワイトボードとプロジェクターを設置。ICT環境を整えて授業を効率化した。また、机と椅子はすべてキャスター付きの物に替え、グループ学習の際に自由に移動することができるようにした。教室を広々と使えるよう、私物入れはあえて廊下に設置するデザインとしている。

 職員室は廊下との壁をなくし、訪ねてくる生徒との距離を縮めた。職員室に来た生徒は、カウンター越しに気楽に先生と話すことができる。役所の窓口のような雰囲気だ。勉強の質問をする生徒のために、職員室の隣には先生と一緒に学習できるスペースも用意されている。

伝統の音楽教育を、充実の音楽校舎で

先生と生徒が対話しやすい新しい職員室
先生と生徒が対話しやすい新しい職員室

 同校の大きな特徴は、中学に全国でも数少ない音楽コースがあり、高校にも音楽科があることだ。中高6年間、通常の教科の授業を受ける一方、ピアノ、声楽、弦楽器、管楽器、打楽器、作曲、音楽総合の各専攻別のレッスンを受ける。卒業生の多くは東京芸大をはじめ、各音楽大学に現役合格を果たしている。

 それだけに音楽校舎のリニューアルも大切な課題となっていた。そこで、今春から、中学校の教室を高校と一緒の校舎に移し、中学校舎全体を音楽校舎に変更した。ピアノがある防音装置付きの練習室12、視聴覚施設を整えた音楽室二つ、レッスン室九つが収容されており、目をみはる充実ぶりだ。

 50周年記念の時に造られた図書館に隣接して、自習室も新設された。グループ学習したり、教え合ったりできるように私語が許されている。図書館の約2万冊の蔵書も同校卒業生の司書の下で入れ替えが行われ、授業に直結した実践的な蔵書を増やしたそうだ。また、「図書便り」や図書委員会からの通知は生徒たちが1人1台所有するiPadに連絡されるようになった。

 敷地内にある日本家屋「千草庵」は耐震補強をして内部を整備し、礼法の授業に使っている。水屋も整えたため、茶道の部活動にも使えるようになった。

 英語教育の拠点となる「イングリッシュルーム」にはネイティブの先生が常駐。英検(実用英語技能検定)対策のため各種の教材もそろっている。

 リニューアルされた環境に対し、生徒の受け止め方も上々だ。「照明が良くなって、目が疲れません」「電源を取る場所が多くなって楽になりました」「自習室で教え合えるのが楽しいです」など、声を弾ませていた。

新しい学びを可能にするICT環境

コシノジュンコ氏のデザインでリニューアルされた制服
コシノジュンコ氏のデザインでリニューアルされた制服

 「リニューアルの成果は日々の授業で大いに反映されています」と川島教諭は話す。「一方的に教えるのではなく、今は課題を出して学ばせる授業が主流です。そのためにはグループ学習が必須で、移動できる机や椅子が役立ちます。生徒は調べたことをプロジェクターでプレゼンテーションしています」と話す。

 ICT環境の充実も重要な変化だ。生徒用のiPadには、一人一人のペースに合わせて学習を進められるデジタル教材「すらら」や、授業の動画を見てチェックテストを受ける「スタディサプリ」などのアプリが入っている。「保護者も見られますので、学習の進み具合が分かり、好評です。『スタディサプリ』では一問一答がネットで交信でき、生徒は電車の中でもどこでも好きな時間に勉強できます」と、川島教諭は説明する。

 1人1台のiPadを活用することで、授業での課題の回答や、保護者アンケート、出欠の連絡などは検索大手グーグルの「フォーム」というサービスを使ってスピード化できた。取材に訪れた6月28日、生徒たちが書きこんだNHKの番組「映像の世紀」の感想の一覧を見せてもらったところ、かなりの長文もあり、読み応えのあるものが多かった。

 これらの施設リニューアルによって可能になった新しい学びを同校は「KGプロジェクト」と呼んでいる。プロジェクト名は北鎌倉の「K」と、グローバルの「G」の頭文字だ。川島教諭によると、「テーマを決めて取り組む『総合探究』という授業を今年4月から開始しました。しっかりと充実した総合学習をやるために、中1から高2までの5年間に315時間を充てます」という。

 中2のあるチームは「鎌倉野菜」について学習した。実際に買って調理し、歴史的な由来、特徴などを調べ、さらに知名度を上げるにはどうしたらいいかを考えた。高校生はさらに、地元鎌倉のフィールドワークから見つけ出したテーマを、国や世界の問題につなげていくことを目標とする。

 「世界的な問題も、地域の中から発見できます。由比ヶ浜に打ち上げられたプラスチックごみから海洋汚染を調べている生徒もいます。地元のお店・豊島屋の鳩サブレーを調べて、原料の小麦価格は政府が決めていることを知り、世界の食糧問題を見つめた生徒もいます。途中経過は今年の文化祭で発表されるので、地元の方も楽しみにしています」と川島教諭は話す。

 ちなみに今年の新入生から制服も、セーラー服からブレザーにリニューアルされた。ファッションデザイナーのコシノジュンコ氏のデザインで、ちょっと大人っぽい印象だ。学校改革とともに掲げた新しい教育目標「のびやかな自立した女性」にふさわしい印象を受けた。

 (文・写真:水無瀬尚 一部写真提供:北鎌倉女子学園中学校高等学校)

 北鎌倉女子学園中学校高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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801560 0 北鎌倉女子学園中学校高等学校 2019/09/24 05:21:00 2019/09/24 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/09/20190918-OYT8I50024-T.jpg?type=thumbnail

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