生徒の自由な思いを実践へと背中を押す学校に…北鎌倉

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 北鎌倉女子学園中学校高等学校(神奈川県鎌倉市)は今春、開成中学校・高等学校の校長を務めた柳沢幸雄氏を学園長に迎えた。同校では、新時代への対応として2018年度から強力に学校改革が推し進められている。この流れをどう受け止め、自らはどんな教育ビジョンを実現するのか、柳沢学園長に構想を聞いた。

生徒の教育は「蚕の繭から絹糸を繰り出すように」

実現を目指す教育ビジョンについて話す柳沢学園長
実現を目指す教育ビジョンについて話す柳沢学園長

 柳沢幸雄氏は、東京大学大学院を卒業し、化学物質過敏症研究の第一人者として1986年からハーバード大学、東京大学で教授などを歴任した。2011年から9年間、母校である開成中学校・高等学校の校長を務め、今春、北鎌倉女子学園の学園長に就任した。東京大学名誉教授でもある。

 ――大学での教育と中・高校の教育についてどのように考えますか。

 柳沢学園長(以下、敬称略) 大学における教育とは、学生に未知のチャレンジをさせることですが、今後は中高教育でもそれが必要と考えています。これから先の見通せない時代にあっては、個々の生徒の素質を見いだし、生きる力に結びつけることが、生き残りの道となるでしょう。ただ、それは蚕の繭から絹糸を繰り出すようなもので、急いでやると糸は切れ、遅いと絡まってしまいます。生徒に合わせた適切な速度で、力を引き出してやることが重要と考えています。

 ――北鎌倉女子学園には、どのような印象を持ちましたか。

 柳沢 学校改革で掲げた「ジエシカ」の理念に共感しています。従来は良妻賢母の理想に合わせて生徒を育てる学校でしたが、今回の改革では「自主性」を第一に掲げました。生徒の素質を花開かせるために、私が最重要と考えていることです。他の項目も皆、今後の教育に必要な点が押さえられています。

 また、先生方の熱意もすごい。WEBの学校説明会に参加しましたが、リハーサルで抽出した改良点について、本番で的確に対応する真摯(しんし)な取り組みに感じ入りました。改革に向けての団結力も高いと思います。

最も力を入れているのはICT教育と探究活動

 「ジエシカ」は、同校の藤崎一郎理事長を旗振り役に2018年度から本格的に始まった学校改革のキーワードだ。名称は「自主性の尊重」「英語教育の抜本的強化」「施設・備品の一新」「鎌倉に密着した体験学習」の頭文字を取っている。この改革を中心となって進めてきた広井修教頭を交えて話を聞いた。

 ――現在特に力を入れているのはどのような取り組みですか。

 広井教頭(以下、敬称略) 施設整備のひと段落した今では、自主性を養うことに相性のいい先進的ICT教育の実践です。1人1台のiPad環境を整え、教員全員が、iPadや関連アプリの活用に習熟した「Apple Teacher」の認定を受けました。この環境をアクティブラーニングやプレゼンテーション教育に生かすほか、習熟度に応じた教材を提供するアダプティブラーニングも取り入れています。こうした実績により、昨年秋には全国の教育機関で10校ほどの「アップル認定校(ADS)」に選定されました。

「Zoom」を使った双方向のライブ授業
「Zoom」を使った双方向のライブ授業

 新型コロナによる休校下もICTスキルが役立ち、新学期からすぐにミーティングアプリの「Zoom(ズーム)」を使った双方向のライブ授業を開始できました。毎日4時間の時間割で、午後は授業関連の課題や作文を課し、ネットを通して提出させる形です。教員の7、8割が「通常の授業と同様にできている」といい、保護者の満足度も高いですね。また、日頃発言が苦手な生徒もチャットで自発的に意見を述べるなど、オンラインならではの利点も表れています。

 ――柳沢さんは、ICT教育についてどう考えますか。

 柳沢 ICT教育は未知の領域が多く、今後も試行錯誤が必要ですが、本校はスタートとスピードがはやかったため、他校に先んじて良い手法を確立しつつあると思います。今回の休校を機に、教育界は「子供はなぜ学校に行くのか」という大きな問いを突き付けられました。ネットで知識が簡単に手に入り、登校しなくても授業が出来る。では学校の存在意義は何だろうか。私は「社会性を育むこと」と考えます。集団活動を通して、社会の中でより良く生きる知恵を育む場としての役割が大きくなるでしょう。それを踏まえて、新たな取り組みも考えたいですね。

 ――学校改革の中でほかに力を入れている取り組みは。

 広井 昨年度、中1から高2の5学年に導入した「総合探究」学習です。「『鎌倉』から『グローバル』を考える」という方針により「KGプロジェクト」と名付けました。5~10人のグループで1年間の探究活動に取り組みます。テーマ選定や活動計画の策定・実施まで、全て生徒たちが自主的に行います。

海洋プラスチックの調査のためのフィールドワーク
海洋プラスチックの調査のためのフィールドワーク

 地元「鎌倉」に着眼して、近隣の海岸で海洋プラスチックの調査を行い、環境問題を考えた活動や、鎌倉のホテルや観光客へのアンケートを踏まえた観光PR手法の研究、地元名物「鳩サブレー」の魅力や流通に着目した活動がありました。上の学年では「グローバル」へと視野を広げ、2020オリンピック招致の候補国比較から国際問題を考察したりする活動などもありました。

 秋の文化祭ではポスターセッションで中間発表をしました。この3月も協力企業を招いて発表会を行う予定でしたが、休校のためかないませんでした。今年度はぜひやりたいですね。また、進行中の活動をWEBで発信したいとも考えています。さらに今年は、グループでの創作活動も考えています。ものづくりや歌、演劇など自由に取り組ませたいと、構想を進めています。

 柳沢 KGプロジェクトの進め方は、実は大学の研究活動や企業の商品開発などで行うことに近い。問いを立て、リサーチや実験を繰り返し、成果に落とし込んでいく。こうした5年間の経験を、大学や仕事でも生かしてもらいたいと思います。

今年度から「普通コース」を「先進コース」へ

 同校では、生徒の自主性を育て、素質を引き出す新カリキュラムもスタートし、今年度の中1から「普通コース」を「先進コース」へと変更した。四つのC(コミュニケーション・コラボレーション・クリティカルシンキング・クリエイティビティ)の育成を目標に、最先端のツールや学習手法を取り入れつつ、生徒主体の授業を目指している。

学校改革を中心となって進めてきた広井教頭
学校改革を中心となって進めてきた広井教頭

 ――先進コースでは、どのような授業を行うのですか。

 広井 従来の板書と講義のスタイルを脱却し、PBL(課題解決型学習)やCBL(チャレンジ設定型学習)に移行していきます。テーマには現在学内で啓発活動を行っているSDGsやグローバルなどの内容を取り入れ、生徒間の議論を中心に授業を進めます。

 また、「先進的な学びの時間」という科目を導入します。すでに木工工具や3Dプリンターを備えたものづくり工房、プログラミングラボ、プレゼンテーションルームなども新設しました。

 ――こうした学習環境の整備を踏まえ、今後どんな教育に取り組んでいきたいですか。

 柳沢 生徒が将来「ここで学んで良かった」と思えることが大事です。ポジティブな気持ちを持って、その後の人生の土台となる学びや経験ができる学校でありたいですね。そのために、生徒の自由な思いやアイデアをどんどん受け入れ、実践へと背中を押す学校にしたい。試行錯誤でもいいんです。「自分の考えを実行に移せた」と実感できれば、次のステップに進めますから。

 ――受験生や保護者の方々にメッセージを。

 柳沢 同調圧力のない学校、教育を目指しています。自分と異なる考えや好みを持つ多様な集まりを「楽しい」と思える子供たちに、ぜひここで学校生活を楽しんでもらいたいと思います。英語教育の充実や国際性の(かん)(よう)など十分にお話しできなかった点については学校説明会や学校訪問でお尋ねください。

 (文:上田大朗 写真提供:北鎌倉女子学園中学校高等学校)

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1285729 0 北鎌倉女子学園中学校高等学校 2020/06/19 05:21:00 2020/06/19 09:41:45 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/06/20200618-OYT8I50028-T.jpg?type=thumbnail

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