「横断型プログラミング授業」で論理的思考を養う…大妻中野

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 2020年度から小学校で「プログラミング教育」が必修化されることに対応し、大妻中野中学校・高等学校(東京都中野区)は5月から、高3生を除く全クラスで「横断型プログラミング授業」をスタートさせた。各教科の時間を使って行う、教科横断型の授業だ。情報科の教諭にこの授業の狙いや今後の展望を聞くとともに、保健体育の時間に行われた中3の授業を見学した。

「STEM教育」の一貫として導入

「横断型プログラミング授業」について語る平野恵教諭
「横断型プログラミング授業」について語る平野恵教諭

 「横断型プログラミング授業」は、「STEM教育」の一環として位置付けられている。「STEM教育」は「Science(科学)」、「Technology(技術)」、「Engineering(工学)」、「Mathematics(数学)」の頭文字を組み合わせた言葉だ。IT(情報技術)やAI(人工知能)の急速な発展で、これらの分野の教育や人材の重要性はますます高まっているという。同校が、今年から算数1科目の入試を新設したのも、「STEM教育」重視の表れだ。

 「横断型プログラミング授業」は年間6、7回、各教科1時限ずつタブレットなどを使いながら、教科の内容に沿ってプログラミングの基本を学ぶ。目的は、プログラミング言語の習得ではなく、プログラミングの考え方を学ぶことにある。試行錯誤しながら手順を考え、論理的な思考力を鍛えるのだ。

 この授業が可能になった大きなきっかけは、タブレット環境が整ったことだ。同校は2013年の新校舎完成を機に、Wi-Fi(ワイファイ)環境や電子黒板の導入を進め、16年には1人1台のタブレット所有を実現させている。教科の枠を超えた授業を推進する同校の方針や、小学校でのプログラミング教育の必修化を受け、「今後入学してくる子供たちに継続的な学びを提供したい」という教員たちの思いから導入が決まった。

 最初の授業となった「社会科」では導入編として、現代ではAIが進化し、プログラミング技術の重要性が高まっていることなどを説明。そのうえで、これから各教科で始まる「横断型プログラミング授業」の意義を伝えた。

 次いで7月に行われた「数学」の授業では、プログラミングのゲームを通して「フローチャート」を学んだ。まず、初心者向けのプログラミング学習サイトでキャラクターを指示通りに動かすゲームに取り組む。画面上には「右に進む」「左に進む」など動作内容が書かれたブロックがあり、それを並べることでキャラクターを動かせる。出題通りに動かせれば得点が入って各ステージをクリアできる仕組みだ。

 間違えても、正解するまでは何度でもトライできる。生徒たちは試行錯誤を繰り返しながら、正しい手順で過不足なくブロックを並べないと意図した通りに動かないことを習得する。その上で、数学の「フローチャート」という考え方を使えば、問題解決の手順を視覚化できることを教えた。その後、生徒たちにフローチャートを使ってゲームの手順を説明させたという。

フローチャートを基に紹介動画を製作

フローチャートを使って遊び方を説明できるようにする
フローチャートを使って遊び方を説明できるようにする

 取材に訪れた9月12日は、3回目の「横断型プログラミング授業」となる中3の「保健体育」の授業が行われた。鬼ごっこのルールをフローチャートで説明し、それを基に紹介動画を製作するという内容だ。数学の授業で学んだフローチャート作成の復習も兼ねている。

 情報科の平野恵教諭が「ロイロを起動して」と声をかけると、生徒たちは一斉にタブレットに向き合った。同校は、教師と生徒の双方向授業を可能にする授業支援アプリ「ロイロノート・スクール」を利用している。このアプリを使うと教材の配布・回収・共有などがワンタッチで行える。中3生たちは入学時から全員タブレットを持っている学年であり、閲覧・提出などの操作も実にスムーズだ。

 まずは一人一人、知っている鬼ごっこの種類をタブレットに書き出していく。「近くの人と話し合っていいから、できるだけたくさん挙げてみて」と先生が声をかける。生徒たちのタブレットをのぞくと「色おに」「バナナ鬼」「ドロケイ」「アスレチック鬼ごっこ」などさまざまな種類の鬼ごっこが並んでいる。

 「『話し合っていい』と指示したのは、鬼ごっこの中身を知らない子がいたら、説明してあげることが必要になるからです」と平野教諭が説明する。分かっているつもりでも、実は、あやふやということは多い。他人に説明することで自分の考えも整理されるからだという。

鬼ごっこのルールをフローチャートで説明し、紹介動画を製作する
鬼ごっこのルールをフローチャートで説明し、紹介動画を製作する

 アイデアが出たところでタブレットを使い、全員の回答を集めてクラスで共有する。次は3、4人のグループに分かれ、グループごとに一つの鬼ごっこを選び、フローチャートを使って遊び方を説明する。制限時間は5分。全教室に設置されているというタイマーをセットすると、生徒たちは大急ぎで、紹介する鬼ごっこの要素を紙に書き出すなどして、遊んでいる様子を思い浮かべながらフローチャートに落とし込んでいく。

 今度はフローチャートを参考にして、各グループで、その紹介動画を作る。他クラスの例を見せると、生徒から感心したような声が上がる。実例を目にしてモチベーションが上がったようだ。制限時間は20分。タブレットのカメラで鬼がタッチするところを撮影したり、インターネットで説明に使えそうな画像を集めたり、生徒たちは思い思いに製作に取り組む。ときおり先生に()かされながらも、時間内にはすべてのグループが動画を完成させた。イラストを多用したところもあり、仕上がりはさまざま。この課題は、他のいろいろなスポーツ競技にも応用できそうだ。

各グループで紹介動画を作る
各グループで紹介動画を作る

 授業を受けた生徒たちは「フローチャートを作るのは難しいけど、考えるのは楽しい」「どうなったら、鬼ごっこが終わりになるのかを説明するのが難しかった」などの感想を漏らしていた。

 来年度以降は、各教科でそれぞれの教員が「横断型プログラミング授業」に取り組む予定になっている。教室の後ろで見守っていた保健体育科の青木恵理衣教諭は「今度は保健という切り口から、たばこの害を訴える動画を作らせてみたい」と話していた。どんな授業が展開されるか今から楽しみだ。

タブレット操作がやる気のスイッチになる

 「横断型プログラミング授業」には、同校が昨年から推進している「妻中サクセス」という学習方法も相まって効果を上げている。「妻中サクセス」とは例えば、「メモを取る」ことにより脳を意識的に活性化させつつ、「時間を区切って取り組む」など、やる気を持って学習に取り組むための工夫のことだ。

 タブレットを活用するスタイルも、操作を通して脳に刺激を与えられるので、それ自体が工夫の一つだ。また、タイマーを使って各課題に制限時間を設けることも、生徒の集中力を引き出すのに効果的だろう。

 「横断型プログラミング授業」がスタートしてから半年弱。平野教諭は「中1には不安もあったが、意外とついて来ている。教員がいろいろ教えなくても、自分たちで試行錯誤しながら感覚的に理解できるようです」と頼もしげに話した。

 同校は、年に数回「ロイロノート・スクール」の開発者から活用事例を聞く機会も設けていて、教員の質の向上にも余念がない。操作の習熟度を確認するテストも定期的に行っている。「各教科の先生方から、こういった使い方はできないだろうかという相談を受けることも増えている」という平野教諭の言葉に、同校の教員の熱心な姿勢がうかがえた。

 複雑な事柄を整理して理解したり、物事を筋道立てて説明したりする力は将来の社会生活でも、プレゼンテーションや商談の際に役に立つ。「横断型プログラミング授業」は生徒たちが、こうした基礎的な力を培ううえで大きく役立つことだろう。

 (文・写真:佐々木志野 一部写真:大妻中野中学校・高等学校提供)

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52432 0 大妻中野中学校・高等学校 2018/12/04 05:20:00 2018/12/04 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181129-OYT8I50034-T.jpg?type=thumbnail

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