正解のない問いに挑む、総合的な学習…川村

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 川村中学校・高等学校(東京都豊島区)は2011年から、高1の総合的な学習の時間に教育プログラム「クエストエデュケーション」を取り入れ、正解のない問いに挑む学びを実践してきた。企業からのミッションに取り組み、仲間と協力しながら探求型の学習にいち早く取り組んできた同校の授業をリポートする。

高校生らしい自由な発想で企業の課題に取り組む

 取材に訪れた高1生の教室では、住宅・建設業「大和ハウス工業」と総合旅行会社「エイチ・アイ・エス(HIS)」のミッションに挑む四つのチームが、それぞれディスカッションを繰り広げていた。机には模造紙が広げられ、アイデアを書き出した付箋紙が所狭しと貼られている。

 生徒たちが取り組んでいるのは、教育支援業の「教育と探求社」(東京都)が提供している教育プログラム「クエストエデュケーション」のうちの企業探究コースだ。このプログラムでは、実在している企業から出されたミッションに対して、探究し、プレゼンテーションを行う。

「目標は将来、社会を作り上げていく生徒一人一人の生きる力を育てること」と話す舘野由紀江教頭
「目標は将来、社会を作り上げていく生徒一人一人の生きる力を育てること」と話す舘野由紀江教頭

 「目標は、将来、社会を作り上げていく生徒一人一人の生きる力を育てることにあり、社会を知ることも、その一つだと考えています」と舘野由紀江教頭は話す。企業からのミッションには正解がなく、グループで話し合い、考えをまとめていく過程で、生徒たちは社会の営みを知り、自分が将来どんな道を目指すかについても気づくきっかけとなっている。

 今年、「企業探求コース」にはエイチ・アイ・エス、クレディセゾン、大和ハウス工業、テレビ東京、パナソニック、富士通、メニコン、良品計画の8企業からミッションが提供された。いずれも企業理念や創業者の思いをベースにしながら、高校生らしい自由な発想を期待しているものが多い。

 生徒たちは、各企業について調べることからはじめ、興味を持った企業でインターンシップを体験する。その企業の得意な分野、苦手な分野、世間のイメージなどを調査しながら、企業への理解を深めた上で、ミッションをクリアするため週に1~2時間、1年近くかけて話し合い、導き出した答えを12月に学内で発表する。

 その後、全国の「クエストエデュケーション」プログラムへの参加校がその成果を競う「クエストカップ」にエントリーし、全国大会への出場をめざす。2018年の大会は、全国150校から約2万人の小中高生が参加した。同校は、その全国大会に7年連続で出場している。

建学の精神である「女性の自覚」につながる学び

アイデアを付箋に書き出し模造紙に貼っていく
アイデアを付箋に書き出し模造紙に貼っていく

 大和ハウス工業のミッションに取り組んでいるSさんは最近、大規模な災害が多く、対策が必要だと感じているという。「今は自然災害の被害をどうすれば防ぐことができるか、日本だけでなく世界の対策を調べています。全国大会に出場するために、みんなで意見を出し合って内容を深めていきたいです」と語る。同じミッションに別のチームで取り組んでいるRさんは「高度な建築技術を使い、空中や水中に商業施設を作るプランを検討しています。建築について考える中で、自分は環境問題にも興味があると分かったことが収穫です」と新たな関心領域について話してくれた。

 エイチ・アイ・エスのミッションを選んだYさんは「障害がある人やマイノリティーの人のように旅行に行きづらい人にも旅を楽しんでもらうために、当事者である、それらの人を社員として雇用することを考えました」と話す。さらに「今までのグループワークでは自分たちが良いと思う答えを出せばよかったけれど、今回はビジネスとして成立するかどうかも重要なので、社会や現実を見る視点が鍛えられます」という。同じく「エイチ・アイ・エス」のミッションを選んだMさんは「メンバーそれぞれ思うことが違っていて、自分一人では考えつかないアイデアが生まれることが魅力です。みんなで協力することの意味をあらためて感じています」とチームワークの大切さを語ってくれた。

 授業の進行を見守る武田(しのぐ)教諭は「話し合いの中で、驚くような発想が生まれています。最終的にミッションへの回答になるかどうかはともかく、大人が考えつかないようなアイデアがたくさんあって、担当教員としても楽しみです」と話す。

 生徒たちは、生き生きとした学びの中で、対話しながら考え、意見を交換し、発信することを繰り返す。もちろん意見が衝突することはあるが、主体的に仲間と協働して、自分たちならではの答えを導き出す過程で得るものは大きい。

 舘野教頭も「社会の移り変わりはますます激しく、10年後、20年後を生きる彼らには、一人一人が考え、粘り強く前へ進む力が必要とされます。本校の建学の精神でもある『女性の自覚』を促すためにも、この授業は重要と感じています」と語る。

考え抜くことで劇的に成長する生徒たち

「大和ハウス工業」の小林征人氏から話を聞く生徒たち
「大和ハウス工業」の小林征人氏から話を聞く生徒たち

 この日のディスカッションには企業の担当者も参加し、さまざまな質問やアドバイスを投げかけていた。実現性の低さや採算性について厳しく問われると、答えに窮することもある。しかし、それは、さらに深く考え、より良いプランへと昇華するステップになる。

 10年以上、このプログラムに携わっているという大和ハウス工業のCSR部社会責任グループグループ長・小林征人氏は「基本はあくまで企業人の立場。会社の考え方も踏まえて、刺激を与えられたらと思っています」と、この授業にかかわる自分の立場を説明する。その上で、「意見が分かれたり、いろいろぶつかったりすることもありますが、壁を乗り越えてやり抜いたとき、生徒たちは劇的に成長します。それを目撃できることが喜びです」と語った。

「エイチ・アイ・エス」の渡辺真理氏アドバイスを聞く生徒たち
「エイチ・アイ・エス」の渡辺真理氏アドバイスを聞く生徒たち

 また、エイチ・アイ・エスWEB旅行営業本部の渡辺真理氏は「初めて授業に参加しましたが、一見すると無理難題にも思われるテーマに真剣に取り組み、何とか解決策を探ろうとする姿に感心しました。このプログラムを通して働くことの意味、大切さ、楽しさを感じてくれたらうれしいですね」と生徒たちの取り組みを評価した。

 教育と探求社のキャリア教育コーディネーター・永島宏子氏は「このプログラムの魅力は、正解がない問いと向き合い、考え抜くことにあります。この経験をもとに、彼女たちの生きていく、これからの社会や未来について考える姿勢を持ち続けてほしい」と期待を語った。

 同校の総合的な学習の時間は、各学年テーマを設けて段階的に学習を進めることに特徴がある。そこには舘野教頭が言う「自分はどういう人でありたいか、社会の中でどんな貢献ができるのかを見つけるきっかけにしてほしい」という意図がある。クエストエデュケーションのプログラムに取り組む中で、調べものや企画、発表など、一人一人が得意分野を生かし、役割を果たす責任感も芽生える。学んだ知識を使って課題解決を探る経験は、将来の社会生活に必ず役立つはずだ。

(文・写真:山口俊成 一部写真提供:川村中学校・高等学校)

 川村中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

52712 0 川村中学校・高等学校 2018/12/07 05:20:00 2018/12/07 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181205-OYT8I50001-T.jpg?type=thumbnail

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