UNDP代表と質疑応答、世界と自分を見つめ直す…川村

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 川村中学校・高等学校(東京都豊島区)は6月18日、校外学習として国連大学ビル内にある「国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所」(東京都渋谷区)を訪問した。参加したのは高校3年生16人で、UNDPの活動内容などについて駐日代表の近藤哲生さんと質疑応答した。豊かな国際感覚の育成を目指し、国際理解を深めることを目的とするこの訪問の様子をリポートするとともに、同校の国際理解教育について聞いた。

生徒が自ら調べ、考えた質問を近藤代表に問う

生徒たちに、UNDPの取り組みについて話す近藤哲生代表
生徒たちに、UNDPの取り組みについて話す近藤哲生代表

 「今日は皆さんにお会いできることを楽しみにしていました。何でも聞いてください」。UNDPの近藤駐日代表の言葉で、生徒たちとの質疑応答がスタートした。

 今回の訪問に向けて生徒たちは、パンフレットやウェブサイトを参考にして、UNDPが取り組む「持続可能な開発目標(SDGs)の達成」などについて事前学習をした。さらに、質問したいことを60項目以上リストアップしたうえで3項目に絞り込んできた。

 最初は、近藤代表がUNDP入職前、20年以上、外務省に在籍していたことを踏まえ、「日本の国家公務員と国連の国際公務員を両方経験されて、それぞれ違いや良さはありましたか。また、出身地や価値観が異なるスタッフが集まる多文化の環境で働く難しさなどはありましたか」と質問した。

 近藤代表は「私の人生を振り返るような質問ですね」と微笑(ほほえ)み、「2001年に起こったアメリカ同時多発テロが、外務省から国連に移ったきっかけです」と語り始めた。「当時、私は外務省からニューヨークのUNDP本部に出向しており、職場の窓から、世界貿易センタービルに旅客機が激突するのを目の当たりにしました。さらにテロの後、イラクなどで戦争が始まり、毎日何千人もの人が亡くなったと報告が入ってくる。そこで、オフィスではなく、現場に行って傷ついた人に寄り添う仕事がしたいと思い、国連に移りました。現在は外務省とは違う立場で人々をサポートしていますが、どちらの仕事もやりがいがあります」。

 さらに、多文化の環境で働くことについては、「文化が違う場所では、自分の常識が通じません。そこで何が起きているのか、現地の人のそばにいて一緒に感じ、考えることが大切です」と答えた。

近藤代表への質問を考えるため、生徒が事前に調べた資料
近藤代表への質問を考えるため、生徒が事前に調べた資料

 次の質問は、「日本人国連職員の数と、津波避難訓練、女性のエンパワーメントなどUNDPの具体的な取り組みについて教えてください」というもの。

 近藤代表は「UNDPの正規職員は85人で、まだまだ足りない」としつつ、同機関の取り組みの一つとして、インドネシアなどアジア太平洋諸国で行われている津波避難訓練について説明した。「UNDPが避難訓練をする前、インドネシアの人たちは『災害は神様の考えによるものだから逃げても無駄。祈りましょう』という状態でした。そこで私たちは、きちんと逃げられるよう避難訓練を行うと同時に、災害時は高台のリゾートホテルを開放してもらうなど避難場所を確保しました」と答えた。

 最後は、「SDGsについて、開発と環境保全の両立は実際に可能だと思いますか」という質問。これに対し、近藤代表は「大企業の役員会で出た質問と全く同じですね」と驚きの表情を見せながらも、「例えば開発によって発生し、気候変動の原因となる二酸化炭素を減らすべく、企業を含めさまざまな分野で脱炭素化の動きが世界中で見られる。企業の社会的責任活動を通した植林なども多く行われている」と答えた。

 質疑応答が行われたのはわずか20分ほどだったが、生徒は近藤代表と真剣に向き合い、熱心にメモを取っていた。

質疑応答が、自分自身を見つめ直すきっかけに

 質疑応答の後は、同じビル内にある「ウ・タント国際会議場」と「国連大学ライブラリー」を見学した。最後は生徒に同行した同校の石川薫理事が、「皆さんは日本という豊かな国で育ちましたが、近藤代表のお話を踏まえて多様な人々と幸せを分かち合うにはどうしたら良いか、考えてください」と訪問を締めくくった。

 生徒たちに、この日の訪問について感想を聞いた。最初の質問をした生徒は、「私は将来、医療の仕事に就きたいと思っています。今の日本の病院では、日本人だけをケアするわけではありません。私はこれまで、日本の問題と世界の問題は別だと考えていましたが、日本と世界を同じつながりの中で見ていかないと、さまざまな人を助ける職業には就けないと感じました」と話した。

 2番目の質問をした生徒は、「日本では津波が来たら避難するのが当たり前ですが、インドネシアでは何もしないで受け入れるという教えが浸透し、助かる可能性のある命が失われていたことがショックでした。日本は災害が多く、来年は東京オリンピックもあるので、災害時に、その場にいる外国人と一緒に行動できるようコミュニケーション能力を高めたいと思います」と述べた。

 質疑応答に参加した他の生徒たちも「私が日本で普通に生活をしている間にも、世界では戦争で多くの人が亡くなっていると実感し、武力や圧力で相手を支配しようとする考えや、地位や権力があるからと相手を下に見る姿勢は止めるべきだと感じました」「貧困などUNDPが取り組む問題は、自分とはかけ離れたものと思っていましたが、近藤代表のお話を聞き、身近なものだと感じました。これからも世界で起こっている問題に、日本がどのように協力しているか調べていきたいです」など、それぞれに自分たちと世界とのつながりに考えを巡らせていた。

異文化を理解し、国際社会を生きる力を育成

UNDP訪問の狙いについて話す原田大靖教諭
UNDP訪問の狙いについて話す原田大靖教諭

 今回のUNDP訪問は、政治・経済の授業の一つだ。社会科担当の原田大靖教諭は、「グローバルにコミュニケーションを図るには、英語だけでなく、相手の国の事情や歴史的経緯、日本との関係、その国に対する日本外交の取り組みを把握しておくことが重要であり、それによってより理解が深まります。生徒にも、そうした視野を広げてもらいたいと考えました」と、この日の訪問の狙いを語る。

 この訪問だけでなく、同校は生徒たちの「生きる力」を育むため、学年ごとにテーマを設け、「総合的な学習の時間」に校外で体験学習を行っている。特に英語教育や国際感覚の養成は1924年の創立以来、力を入れているテーマだ。

 中学2年次は「国際理解・国際交流」をテーマとしている。今年度から、日本にいながら英国文化を体験できる福島県の施設「ブリティッシュヒルズ」での「イングリッシュキャンプ」を実施する。中学2年生は全員が参加し、オールイングリッシュの集団生活を通じて英語力を伸ばし、異文化への理解を深める。また、中1~高3の希望者も夏季休暇などに参加できるようにするという。

校外学習の意義について話す堀内美由紀副校長
校外学習の意義について話す堀内美由紀副校長

 さらに、中高の希望者を対象とする英国・コッツウォルズ地方での語学研修も実施している。生徒は1人1家庭の割合でホームステイを行い、現地の文化や生活を体験する。

 堀内美由紀副校長は、「机上で学ぶことに加え、実際に異文化の中に身を置くことが、真の国際理解につながります」と校外学習の意義を語る。

 「現地に足を運ぶ校外学習は、生徒が事前に調べ、考えをまとめる貴重なアクティブラーニングとなります。さらに、国内外の情勢に目を向けることは、自分のやりたいことや、自分を生かせる環境について考えるうえで非常に大切です」と語る。 

 今回の校外学習でも、生徒がそれぞれに各国の状況を思いやり、今の自分にできることを考える姿が印象的だった。こうした学習機会を通じて体験を深め、やがて国際社会で活躍できる人物に育ってほしい。

 (文:籔智子 写真:中学受験サポート)

 川村中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

無断転載禁止
859936 0 川村中学校・高等学校 2019/10/28 05:21:00 2019/10/23 16:41:55 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/10/20191023-OYT8I50026-T.jpg?type=thumbnail

会員校一覧

東日本 共学校ページTOP

── 女子校ページTOP

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
The Japan News
発言小町
OTEKOMACHI
ささっとー
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ