ICT教育の蓄積が発揮されたオンライン授業…聖徳学園

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 聖徳学園中学・高等学校(東京都武蔵野市)は、コロナ禍に伴う休校期間をオンライン授業への速やかな移行で乗り切った。それを可能にしたのは2015年から始まったICT教育の蓄積だという。オンライン授業の実際と、ICTを基盤として同校が進めているSTEAM教育が開く新たな可能性を紹介する。

ICT教育の蓄積で速やかなオンライン授業へ

オンライン授業導入について語る学校改革本部長の品田教諭
オンライン授業導入について語る学校改革本部長の品田教諭

 同校は、新型コロナウイルス対策の休校に伴い、4月15日からスピーディーにオンライン授業を導入し、「学びを止めない」環境を生徒に提供した。

 まず、オンライン授業のために特別時間割を作り、午前中は主要5教科について1コマ45分で4コマの授業を行い、午後は、生徒から個別に質問や相談を受け付ける「オフィスアワー」に充てている。

 スタート当初は、生徒の自宅の通信環境の違いなどに配慮して、あえてリアルタイムではない「非同期型」の授業を中心に行った。5月に入ったところで新学期、新学年の学びに取り組むためにオンライン授業を本格化させ、リアルタイムで行う「同期型」の授業を増やしてきたという。

 また、オンライン授業の開始に先立って、教員たちは授業動画のテーマ設定や生徒が途中で脱落しないための時間配分などを研究し、「非同期型」と「同期型」を併用する際のガイドラインを作って研修を行うなど、入念な準備を行ったという。

 学校改革本部長の品田健教諭によると、こうしたスムーズな移行が可能だったのは、2015年度に中1生から順次1人1台iPadを導入し、さまざまな形でICT教育を積み上げてきたからだという。特に教員、生徒、保護者が使える「トークノート」という学内専用SNSに親しんでいたことは、オンライン授業の導入に向けてのスムーズな連絡に役立ったそうだ。

 現在の状況について品田教諭は、「今まで授業で使ってきた環境でほぼ対応できています。新しく導入したのはZoomくらいですね」と話す。

 生徒の心身をケアするために毎朝、担任の先生らは生徒から体調について「トークノート」で報告を受けるほか、テレビ会議システムの「Zoom」で面談する。

 「Zoomでの個別面談は、担任2人と生徒1人で行います。生活の様子が垣間見えるなど、オンラインだから分かるということがたくさんありました。また、提出物に書かれた手書きの字や教科書を音読する時の声から、生徒の様子を推し量ることもできます」

 同校は、以前から中1、中2では2人担任制を取っている。生徒を複数の視点から見守り、相談に乗ることで、教員1人では気付かない生徒の長所を見付け、伸ばすことができるという。そうしたきめ細かな指導体制が、オンライン授業でも問題の早期発見や生徒の様子を把握することに役立っているという。

提出する「課題」から () せる「作品」へ

iPad導入からICT教育を支える最高情報セキュリティ責任者の横濱教諭
iPad導入からICT教育を支える最高情報セキュリティ責任者の横濱教諭
「食物連鎖」を題材に生徒たちが制作した映画のグランプリ作品
「食物連鎖」を題材に生徒たちが制作した映画のグランプリ作品

 今回のオンライン授業の下地となったICT教育は、もともとPBL(課題解決型学習)の授業に役立てるための取り組みだったという。最高情報セキュリティ責任者の横濱友一教諭は、「iPadを授業でうまく活用するために考えたことが、教科をまたいで問題解決を経験するSTEAM教育へとつながっていきました」と話す。

 「STEAM」は、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)のそれぞれの単語の頭文字を取った言葉だ。

 例えば、毎年中1生が、2学期から3学期にかけて映画を制作し、3月に発表する「聖徳映画祭」は、大切なSTEAM教育の場になっている。横濱教諭によると、2018年のグランプリ作品は理科で勉強中だった「食物連鎖」を題材に取り上げ、映像作品にしたものだったという。作品の素材は美術、シナリオは国語、動画の作成は情報、BGMの制作は音楽の要素を含む。生徒たちはiPadを駆使して情報を集め、打ち合わせし、動画を作成・編集する。教科をまたいだ課題を解決するSTEAM教育のために、ICTは欠かせないツールとなる。

 このほかにも生徒たちは、Web上の翻訳アプリやサービスを使って作成した外国語学習のレッスンムービーや、プレゼンテーションアプリと動画編集アプリを使った学習ムービーを制作するプロジェクトなどに取り組んできた。

 近年、これらの成果物を「課題」として教員に提出するだけでなく、「作品」として共有のドライブにアップし、生徒同士が学び合えるようにしたことにより、生徒たちの意識に変化が生まれたという。

 「情報」の授業を担当する品田教諭は、「STEAM教育のA、つまりArtについてはどう指導すべきか悩みどころでしたが、プロジェクトの成果物を『作品』として共有するという仕掛けによって、生徒たちに『見せる』意識が生まれ、さらに『()せる』表現を考えるようになりました」と話す。

 課題の達成だけでなく、作品による表現へと、生徒の意識が変化するのに伴って、同校のSTEAM教育も新しい局面に入ったと言えよう。

正解のない問いに対して上がるモチベーション

 映画制作だけでなく、STEAM教育は、先生が生徒に一方的に教える講義スタイルでは実現できない、学びの新しい可能性を開く。品田教諭によると、高校の「情報」の授業で行う「火星ゲーム」もそうしたものの一つだ。

 宇宙飛行士が火星に取り残されたという想定で、救助を考えていくゲームだ。救助するのかしないのかの検討から始まり、救助するとすればどうすればいいのかなどを、資料を調べ、議論して、最終的にNASAとしての声明文を作る。

 議論の最初は、「スイングバイ航法を使えば早く到達できるらしい」「宇宙で栽培できるレタスやトマトが開発されているのでそれを食べて生き延びられれば」など、さまざまな救助策の提案が出るというが、考えれば考えるほど救助の難しさが分かってくるという。

 後半になると救助を諦めるという結論も増え、「隠蔽(いんぺい)しては駄目なのか」とか、「数兆円かける予算があるなら、1人の人間より今地球で困っている人を助けた方がいい」という意見も出てくるという。

 「もちろんこの問いに正解はありません」と品田教諭は話す。「教員も初めて聞く情報がたくさん出てきます。むしろ、『先生は知らないと思うけど……』と新しい情報を報告することが、生徒にとって最大のモチベーションになっているのではと思います」

オンラインでデジタル教材の使い方を中1生に指導した倉田教諭
オンラインでデジタル教材の使い方を中1生に指導した倉田教諭

 今春入学した中1生も先輩に負けず、先生たちを驚かせている。4月15日にオンラインで行われた最初の授業で、英語科の倉田豊子教諭は「トークノート」と「ロイロノート」の使い方を指導した。最初は、「操作がよく分からない」というコメントが多かったそうだが、分かった生徒からすぐに「こうやればいいよ」と助け船が出て、すぐに教え合いが始まったという。倉田教諭も「これは、すごいな」と生徒の適応力の高さに舌を巻いたそうだ。

 この春には、中1から高3まで全生徒がiPadを所持する環境も整った。コロナ禍をバネに同校のICT教育、STEAM教育は一層の加速を見せるに違いない。

 (文・写真:山口俊成)

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1331508 0 聖徳学園中学・高等学校 2020/07/13 05:21:00 2020/07/13 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/07/20200709-OYT8I50024-T.jpg?type=thumbnail

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