音楽と勉強の相乗効果で、生徒の可能性を広げる…国立音大附

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 今年、創立70周年を迎えた国立音楽大学附属中学校(東京都国立市)は、今年度からこれまでの「普通コース」を発展させ、「文理コース」と改称した。同時に、一層の学力強化のため「特別選抜プログラム」を新設。学習コーディネーター「PlusT(プラスティー)」の学習コーチングにより、自主的に学ぶ力の養成を目指す。「文理コース」と並ぶ「音楽コース」では、これから音楽を学びたい生徒のための「音楽準備プログラム」を導入した。同校の「生徒の裾野を広げる」新しい入試システムや、教育の取り組みについて聞いた。

「学習コーチング」で学習計画と自己管理を習慣化

学習コーチングを実施している「PlusT」の清水章弘氏
学習コーチングを実施している「PlusT」の清水章弘氏

 国立音楽大学附属中学校には、「音楽コース」と「文理コース」がある。「音楽コース」は、義務教育の課程に加えて専門的な音楽の基礎教育を行う。「文理コース」は、音楽に囲まれた環境で学力と感性を磨き、音楽系以外の進路を目指す。どちらのコースに入学しても、一人一人の希望や進路により、入学後のコース変更が可能となっている。

 「文理コース」はさらに、国公立・難関私大合格を目指す高校普通科の「特別進学コース」に向けた「特別選抜プログラム」と、基礎力を定着させて自ら考え実行する力を伸ばす「総合プログラム」の二つに分かれる。「特別選抜プログラム」では、英語、国語、数学の授業を少人数制の別クラスで実施し、進度を速め、内容も濃くした学習指導を行う。

 特別選抜プログラムの特徴は、学習コーディネーター「PlusT」による学習コーチングがあることだ。月2、3回、土曜日に2時間のカリキュラムが組まれ、1時間はコーチング、1時間は小テストや課題に取り組む。学習コーチングでは、専用の学習ノートを用い、1週間の学習計画を生徒自身が立て、次週にそれが達成できたかをチェックしていく。PlusTの清水章弘氏は、「勉強のやり方を学び、授業の吸収率を上げ、学習習慣を身に付けるのが目的です。指導というより、生徒に“伴走”していくというイメージですね」と説明する。

 同校が学習コーチングを導入したのは3年前だ。清水氏は、同校での学習コーチングの成果は「群を抜いている」と驚く。「一人一人の学習ノートを先生と私たちの双方で共有できているのが、この学校の長所ですね。月2回は先生方と打ち合わせして情報共有をしていますが、学校とPlusTがこれだけ密に連携している学校は他にありません。小規模校の良さとアットホームな校風の賜物(たまもの)だと思います」

音楽準備プログラム新設の意図を説明する滝澤秀副校長
音楽準備プログラム新設の意図を説明する滝澤秀副校長

 滝澤秀副校長も「学習コーチングの成果は目に見えて上がっている」と話す。「ちょっとしたすき間の時間に、本を読んだり学習したりする生徒の姿を目にすることが増えました。学習習慣が身に付いている成果だと感じます」

 この特別選抜プログラムは、音楽コースの生徒も入試の成績などによって受講することができる。音楽コースでフルートを学ぶ中1の女子生徒は、入学時に先生に薦められたことがきっかけで特選プログラムを受講したという。

 「毎日のスケジュールをしっかり立てることで、時間にゆとりができ、自主学習の時間が増えました。自分が立てた計画がちゃんとできると達成感があるので、『また頑張ろう』と思えるようになります」と、実感を話す。また、フルートとの両立についても、「勉強とのメリハリがつき、毎日のフルートの練習も前より集中力が上がったと思います」。

 清水氏は、「音楽や趣味など、それぞれが大切にしている時間にちゃんと集中させてあげられるよう心がけています。音楽と学習を両立することは、どちらにもいい影響を与えると思います」と話す。さらに、二つのコースの生徒が一緒に学ぶメリットを、「特別選抜プログラムの中に音楽を頑張っている生徒がいることで、文理コースの子たちにも、勉強と他の何かを両立した中学生活を送ってみたいという空気が生まれる。お互いにいい影響を与え合える環境だと思います」と語った。

生徒の門戸を広げる実技不要の入試

生徒たちが自主的に運営している「校内演奏会」
生徒たちが自主的に運営している「校内演奏会」

 生徒の能力や資質を拡張する取り組みは文理コースだけではない。音楽コースでも、今年の入試から国語・算数・作文・面接で受験できる「音楽準備プログラム」を新設した。この入試で入学した生徒もレッスンやソルフェージュの授業を通して、音楽を基礎から学ぶことができる。

 滝澤副校長は、新設の意図を「音楽の素養や楽器の経験は少ないけれど、これからここで音楽を学んでみたいという生徒さんにも入学の機会を広げたいという考え」からだと説明する。

 昨年、「声楽準備(現・音楽準備プログラム)」で入学した中2の女子生徒は現在、声楽を学んでいる。「幼い頃から歌が大好きで、小4の時から歌を習っています。歌の先生のお友だちが本校の出身で、その方に薦められたのがきっかけです」と、志望した理由を話す。「好きな音楽はJ-POP。でも、どんな歌も基本はクラシックなので、基礎からしっかり声楽を勉強したいと思いました」

 1年生の時は声を出す訓練、2年になるとどこから声が出るのか、喉をどう使うのかといった理論を学んだ。「以前は地声で歌っていましたが、裏声やミックスボイスを使えるようになり、より声が楽に出せるようになりました」と女子生徒は話す。将来の夢は、オペラ歌手だ。

 「オペラは世界中の人と関われるのが魅力。舞台で歌うために、声量を増やすのが課題です。また、英語だけでなくイタリア語やドイツ語も学びたいと思っています」と思いを熱く語った。

音楽にも勉強にも楽しく取り組む

少人数で行われる「特別選抜プログラム」の授業
少人数で行われる「特別選抜プログラム」の授業

 6月29日、いくつかの授業をのぞいてみた。少人数で行われている「特別選抜プログラム」の授業では、生徒たちの集中力の高さと真剣さが際だって感じられた。また、スタジオと呼ばれる広々とした遮音室では、音楽コースの校内演奏会がちょうど終わったところで、生徒たちのほっとした笑い声が響いていた。この校内演奏会は音楽コース3年生が全員ソロプログラムで出演し、プログラム制作からセッティング、司会進行まで、すべて生徒たちが自主的に行うという。

 ちなみに、通常の教科は「音楽コース」と「文理コース」の区別なく一緒に授業を受けている。滝澤副校長は、「音楽も勉強もしっかり取り組める環境を作るのが、学校の役割だと思っています。社会で通用する人材になるためには、勉強は不可欠。しかし、音楽に囲まれた環境で身に付けた表現力やコミュニケーション力は、将来の大きな武器になるとも考えています」と語る。「先日、音楽コースで特別選抜プログラムを受講している生徒に『頑張ってますか』と声を掛けたら、『音楽も勉強も好きなので、楽しいです』という声が返ってきました。そういう子が増えてほしいですね」

 清水氏も、「勉強の楽しさを知ることが学習コーチングの最終ゴール。学ぶ楽しさを見つけられたら、あとは自主的に勉強できるようになるんです。それを伝えていければ」と意欲を見せた。

 音楽を究めていきたい生徒も、学びを深めたい生徒も、将来の夢をかなえるための階段はここに用意されている。

 (文:石井りえ 写真:中学受験サポート)

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716281 0 国立音楽大学附属中学高等学校 2019/08/08 05:21:00 2019/08/08 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190730-OYT8I50072-T.jpg?type=thumbnail

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