「伝統の中の新しさ」を見いだして躍進…小林聖心

無断転載禁止
メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 カトリック校の小林聖心女子学院中学校・高等学校(兵庫県宝塚市)は近年、医歯薬系を含む有名私大、国公立大学へ安定的に合格者を出すなど、その進学実績が注目されている。好実績の背景には、キリスト教的価値観に基づく伝統ある教育と新しい時代への対応の融合がある。「伝統の中の新しさ」を追求する同校の教育方針を紹介する。

少人数教育で安定的に国公立、有名私大に合格者

児童、生徒らは緑豊かな坂を上って登校する
児童、生徒らは緑豊かな坂を上って登校する

 同校の2017年度卒業生95人の大学合格状況を見ると、いわゆる「関関同立」に多数合格しているほか、大阪大学や神戸大学などの国公立大、上智、早稲田など関東の有名私大にも合格者を出している。また、医歯薬系への進学者数は14人(現役5人・浪人9人)に上る。

 さらに、2017年と16年の「進学先実績」を見ると、生徒全体の約5割が難関大学(国公立・早慶上智・関関同立・医歯薬獣医系)に進学しており、姉妹校の聖心女子大学を合わせると約7割に達する。

 さらに、東京大学・大阪大学・神戸大学など難関国公立大学の推薦入試にも合格者を出している。同校は、これからの新しい大学入試制度にも対応できる学校だと言えるだろう。

 背景には少人数教育のメリットがある。同校は、1学年110人前後と生徒数が比較的少ない。その分、カリキュラムを弾力化し、丁寧な指導ができる。高校では2年から多くの選択科目を設けて、さまざまな進路希望に対応している。これによって、生徒は難関大学・学科だけでなく、芸術系大学へのチャレンジも可能だ。

 直接的な進学対策に加えてキャリア教育の力も大きい。姉妹校の聖心女子大学と連携した「大学での学び」体験講座、進学ガイダンス、夏期講座などの多彩なメニューを用意し、大学入学後を見据えた指導によって生徒のモチベーション向上を図っている。

「進学実績は自ら学ぶ姿勢の成果」と話す宇津野・入試広報室長(奥)
「進学実績は自ら学ぶ姿勢の成果」と話す宇津野・入試広報室長(奥)

 宇津野仁・入試広報室長によると、同校の進路指導の柱は「生き方」「キャリア」「進級・進学」の三つだという。キャンパスをともにする小学校と連携し、これら三つの柱について12年間を見通した指導が展開される。発達段階に合わせた「4-4-4制」という独自のカリキュラムを取っているのも、その表れだ。発達のステージに合わせた取り組みにより、児童・生徒一人一人が確かな未来をつかみ、自ら考え、実際に行動できる自己実現の力を育て、使命感を持って他者に貢献できる女性を育成しているのだ。

 また、同校の生徒たちは中学1年から、自分で考え、問いかけ、自分自身の考えを文章に書くことを日常化しているという。「静かに自分自身を内省し、思考する習慣を身に付けさせる」という教育方針が徹底されており、自分の考えを同級生の前でスピーチする機会も多く与えられる。

 「生徒たちは『考えることって面白い』と気付くと、学問が楽しくなり、勉強が好きになります。与えられる勉強から自ら学ぶという姿勢に転向し、『スイッチが入る』のです。そうなれば自然に将来の方向性が定まり、進学の目的が明確化します」と宇津野・入試広報室長は話す。

 近年の好調な合格実績は、「生き方」「キャリア」「進級・進学」の三つの歯車がうまくかみ合った成果だといえそうだ。

「魂を育てる」「知性を磨く」「実行力を養う」

 こうした取り組みの根底にあるのは、同校のキリスト教教育の精神だ。小林聖心は、カトリック修道会「聖心会」を母体としている。前身である「住吉聖心女子学院」は1923年に兵庫県内に設立された。3年後に現在地に移転して「小林聖心女子学院」と改称し、現在に至っている。

 同校の教育方針は「魂を育てる」「知性を磨く」「実行力を養う」の三つだ。「魂を育てる」は、キリスト教の価値観に基づいて祈りを大切にし、それを通して謙虚に自己を見つめ、他者と共感できる豊かな人間性を育むことを、「知性を磨く」は、自ら学び、判断し、明確に表現する力を育てることを、「実行力を養う」は、社会と積極的に関わる力、リーダーシップを養うことを、それぞれ意味する。

 これら三つの教育方針によって磨かれる力は、これからの時代に求められる「新しい学力」と多くが重なり合うことが分かる。4年先の創立100周年に向かって、同校が新たに掲げる「伝統の中の新しさ」というモットーは、この意味で変化の時代に対する同校の姿勢を象徴していると言えそうだ。

英語の授業はクラスを2、3分割した少人数で行う
英語の授業はクラスを2、3分割した少人数で行う

 「伝統の中の新しさ」を求めて、実際の授業の中で現在、特に力を入れているのは「英語教育」と「ソフィータイム」の二つだ。

 英語教育はキリスト教学校の伝統として創立当初から力を入れてきただけでなく、グローバル時代に対応した国際理解教育としても力を入れている。

 授業は1学級を2、ないし3分割した少人数で行い、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能をバランスよく学ぶ。「聞く」「話す」が中心だった小学校時代に対して、中学、高校では「聞く」「読む」を通してインプットした内容を自分の考えとしてまとめて意見交換を行い、そこから得た気付きを表現することに力を入れる。通常のリーディングや文法の授業に加え、表現力が重視され、中3では英語でショートエッセーを書けるまでの力を身に付けるという。

 「ソフィータイム」は、聖心会創立者の聖マグダレナ・ソフィア・バラの名にちなんだ同校独自の総合的な学習の時間。現代社会の課題に自ら関わり、「自ら学ぶ力」「思考する力」「判断する力」「表現する力」を養うことが目標だ。

約13万冊の蔵書が利用できる「学習センター」で行われる「調べ学習」
約13万冊の蔵書が利用できる「学習センター」で行われる「調べ学習」

 中学1年では、約13万冊の蔵書を備えた「学習センター」と、1人1台所有している個人端末のパソコンを活用して「調べ学習」の基礎を学び、2年では自然科学の分野で仮説、実験、結果という思考サイクルを身に付け、3年では現代社会が抱える諸問題についてディベートを行い、論理的思考力を磨く。中学1~3年を通してフィリピンや大阪・釜ヶ崎地区への支援活動も行われる。生徒たちが世界の貧困問題をリアルに理解し、国際的な支援のあり方を考える機会となっている。高校1、2年では老人ホームでの介護体験もあり、中学で身に付けた基礎的な思考スキルを総動員して、自らの生き方を考える内容となっている。

 「英語教育」と「ソフィータイム」の二つを通して同校が目指しているのは、「真の国際理解教育」だという。使える英語を身に付け、世界の人々と関わり合い、異文化を知って国際社会でどう生きていくのか、そして、自分に何が必要なのか考えられる人間を育成したい考えだ。

「誰かのために尽くしたい」という生き方

 同校の卒業生たちが活躍する分野は幅広い。医師や報道記者、アナウンサー、航空会社の客室乗務員、外資系企業、宇宙開発に関わる仕事など、それぞれの分野で社会に貢献している。

 進路指導主任の凪美歩子教諭は「本校の卒業生に『あなたはなぜ、その職業を選んだのですか』と聞くと、『自分の持っている力で世のため、人のためになる仕事は何かと考えたら、今の仕事に行きつきました』という答えがよく返ってきます。この世に生まれて自分の人生をどう生きるか自分自身に問うとき、究極の目的は誰かのために尽くしたいということになるのですね」と話す。

 凪教諭によると、同校では「沈黙」という習慣が大事にされているという。「静寂の中に身を置き、心の中に響いてくる声に耳を傾ける。その中で自分自身が神からも人からも愛されているかけがえのない存在であることを知り、他者も同様に神からも人からも愛されている存在であることに気付きます」

 「本校で6年間、あるいは小学校からであれば12年間を過ごした生徒は、自然とそのような思考ができる人に育っていくのだと思います。世の中の人みんなが『人のために』という視点を持つようになると、世界平和につながるのではないでしょうか」

 校名の「聖心」は「みこころ」とも読むという。神の「みこころ」に触れる体験を積み重ね、自分の未来について考える時間を持つことが、生徒たちにとって未来を示す指針となるようだ。

 (文:櫨本恭子 写真提供:小林聖心女子学院中学校・高等学校) 

 小林聖心女子学院中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

451780 0 小林聖心女子学院中学校・高等学校 2019/02/20 05:21:00 2019/02/28 12:46:49 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20190219-OYT8I50025-T.jpg?type=thumbnail

会員校一覧

共学校ページTOP

女子校ページTOP

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ