推薦入試で難関国立大を突破させた力…小林聖心

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 小林聖心女子学院中学校・高等学校(兵庫県宝塚市)は今春、東京大学、大阪大学、神戸大学へ推薦入試で合格者を送り出した。私立大に比べれば、まだなじみの薄い国立大学の推薦入試はどのように行われるのか。それぞれの大学に進んだ卒業生3人に、推薦入試の実際や志望動機、どんな経験と準備を積んで臨んだのかなどを聞き、併せて同校の教育の特色を紹介する。

国際経験と学びへの情熱で東大合格を手に

ホームステイの時期について話す井置涼花さん
ホームステイの時期について話す井置涼花さん

 小林聖心女子学院中学校・高等学校は近年、進学実績で注目される女子の名門だ。特に今春、難関国立大学に推薦入試で合格者を出したことは大いに話題を呼んだ。大学の推薦入試といっても私立大と国公立大では制度も実情も大きく異なる。私立大の場合、「公募制」と「指定校制」がある。指定校となった高校には推薦枠が与えられるので、校内での選考で推薦が得られれば、出願イコール合格に近い。しかし、国公立大の場合、大学が求める条件を満たしたうえ、高等学校長の推薦を得て出願できる「公募制」しかない。しかも、私立大に比べれば募集人員が少なく、筆記試験を課すところも多い。推薦といっても一般試験と同等かそれ以上の「狭き門」なのだ。

 井置涼花(いおきすずか)さんは今春、推薦入試で東京大学経済学部に進んだ。東大の推薦入試の募集人員は例年通り今年度も約100人で、このうち経済学部は10人程度。2人しかいない志願者から選考の末、井置さんただ1人が合格した。

 井置さんは父親の仕事の都合で7~14歳まで中国の上海で過ごした帰国子女だ。「小学生の時に数学オリンピックに出場したのですが、アジア各国から集まった参加者に大きな刺激を受けました。どのような環境であっても、与えられた環境で努力してベストを尽くす。それが特別なことではないことを間近で見て、私自身の視野が広がりました」と話す。

 多様な価値観に触れてきた井置さんは中学2年で帰国した後も常に海外に目を向け、高校時代にも1か月、米国でホームステイを経験した。「ちょうど進路について考えていたころでした。ある日、ホストマザーと話していて『なぜ一番を目指さないの。成功に苦労は付き物。しっかりとやることが大切』と言われたんです。そこから、日本国内で一番環境が整っていて、優秀な頭脳を持つ人たちとともに学びたいという気持ちが強まりました」

 経済に興味を持ったのも、この米国滞在中だ。「シリコンバレーに行ったとき、予想以上にホームレスの人が多いことに驚き、現代社会の光と影を目の当たりにしました。世界で起こっている経済格差をなんとか解決したい。そのために経済・金融の知識を身に付けたいと心を固めました」

 帰国後は1年間、米国エール大学の金融学講座をインターネットで受講した。「レベルが高くて苦労しましたが、内容が面白かったので続けることができました。難しいことが理解できた時の喜びは,言葉で表現し尽くせませんでした。新しい発見の連続でした」と井置さんは目を輝かせて話す。

 学校長の推薦を得て昨年秋に出願し、書類選考を経て志願者が絞られた12月下旬、東大で面接が行われた。「確率や数列など数学の問題を面接官の前でホワイトボードを使って解答しました。課題遂行能力が求められているんだな、と感じました。自己PRは中国語で行いました」。さらに1月のセンター試験の成績も評価に加味され、井置さんは見事、合格を果たした。「日々の高校生活に真剣に取り組み、エール大学の講座を最後まで続けたこと、そして『将来の自分はこうありたい』という強い気持ちが合格につながったと思います。学びへの情熱が何よりも大切だというのは、どの大学、学部、どのような入試方式であっても同じではないでしょうか」

 東大の「推薦入試のアドミッション・ポリシー」は、「本学で教育・研究が行われている特定の分野や活動に関する卓越した能力、()しくは極めて強い関心や学ぶ意欲を持つ志願者を求めます」としている。井置さんの学びへの姿勢は、この志願者像通りだ。

課外・校外活動への積極的な参加を阪大にアピール

課外活動について熱く語る主田眞子さん
課外活動について熱く語る主田眞子さん

 主田眞子(ぬしだまこ)さんは大阪大学医学部保健学科看護学専攻に推薦入試で合格した。

 小学4年の時に小林聖心の小学校に転入してきた主田さんは、「小学生時代から高校時代まで悩むことがあると保健室で相談に乗ってもらっていました。その時に私を受け入れてくれた先生たちの優しさに触れ、『私も将来は困っている生徒たちの助けになりたい』と決心しました」と振り返る。

 主田さんは高3になっても課外活動に積極的に取り組んだ。「小学5年から参加している地域の合唱団の卒業演奏会が9月に予定されていたため、それまでは日々の練習や夏休み合宿、演奏会の準備に追われて受験勉強に専念できないことは分かっていました」。ときおり保健室でケアを受けながら合唱団活動を続け、日々の勉強も頑張った結果、希望していた推薦を得た。

 書類選考による第1次選考の後、センター試験の成績評価と口頭試問による第2次選考が行われた。「出願書類には私のアピールポイントをしっかり書きました。TOEICのスコアから陸上部のクラブ活動を頑張ったこと、学院祭で実行委員をやったこと、もちろん合唱団活動のことまで。日々の練習や発表会のことだけでなく、東日本大震災の被災地にある高齢者住宅にボランティアに伺い、合唱を披露したことなどをつづりました」

 今年度は8人の募集人員に対して32人が出願していたが、主田さんは見事に志願倍率4倍の高い壁を乗り越えた。「やはり学力は必要なので一生懸命に勉強しました。ただ私の場合、高校生活を受験勉強だけで終わらせず、興味あることに取り組めたことはこれからの人生において大きな自信になりました」と力強く語った。

推薦だけでなく、一般入試を受けてでも神戸大

小林聖心で学んだことなどを話す吉岡百音さん
小林聖心で学んだことなどを話す吉岡百音さん

 吉岡百音(もね)さんは、神戸大学経営学部に推薦入試で進学した。高校1年時から経営、会計、商学を学びたいという気持ちがあり、神戸大を選んだのも「日本で2番目に設立された官立商業学校の神戸高等商業学校が起源で、日本の経営学、会計学、商学分野の研究、教育をけん引してきた歴史と伝統があるからです」と、迷いがない。

 一般入試で受験するつもりだったが、学業成績や生活態度などが評価され、学校長から神戸大経営学部への推薦を得た。経営学部の推薦入試では書類選考とセンター試験の成績だけで選抜が行われ、筆記試験は免除される。それでも吉岡さんは神戸大に進みたいという強い思いから、推薦入試だけでなく一般入試にも出願し、2次試験の勉強にも懸命に取り組んだという。

 今年度の経営学部の推薦入試は40人の募集人員に対し、212人の志願者があった。志願倍率は一般試験の約3.3倍を上回る5倍強だ。吉岡さんは「このような厳しい試験に合格することができたのは、小林聖心の生徒であったからこそ。学校にはとても感謝しています」と笑顔を見せた。

母校で身に付けたのは知識量では測れないもの

聖堂内に集まった3人の卒業生
聖堂内に集まった3人の卒業生

 推薦入試には、単なる受験のための知識量では測れない多様な人材を求める狙いがある。その推薦入試で難関国立大学への切符を手に入れた3人が、母校・小林聖心での学校生活から学んだものは何だったのか。

 吉岡さんは「毎日の祈りの時間や黙想会を通して沈黙し、自分を見つめ直す習慣が身に付きました。受験勉強は常に自分の足りないところを客観的に分析し、埋めていく作業の繰り返しです。小林聖心の12年間で身に付いたこの習慣が非常に役立ちました」と話す。

 井置さんは、こう話す。「小林聖心は英語教育を重要視していますが、それは大学受験のためだけでなく、海外への視野が広がる教育となっているのが特長だと思います。ボランティア活動を通し、苦しんでいる人たちの状況を間近に見て、奉仕の精神が芽生えたことも大きな収穫です」

 主田さんは、「学院祭の実行委員をやったとき、みんなが気持ちよく過ごせるように美しい環境を整える『整美』を担当しました。その時の経験から、積極的に人のために行動すること、誰かのために尽くすことの大切さに気付き、実践するようになりました。それは将来も、私の強みになると確信しています」と話す。

 小林聖心のキリスト教教育の精神は「魂を育てる」「知性を磨く」「実行力を養う」の三つの教育方針に表されるという。3人の卒業生が語ったことを「沈黙して自らの内面を見つめること」「視野を広げて他者への共感を抱くこと」「自分の力を尽くして社会に積極的にかかわっていくこと」とまとめるならば、それぞれが三つの教育方針に合致している。同校の教育の精神が生徒たちの心に染みとおっている深さに驚かざるを得ない。

 (文・写真:櫨本恭子)

 小林聖心女子学院中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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631424 0 小林聖心女子学院中学校・高等学校 2019/06/12 05:21:00 2019/06/12 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190611-OYT8I50024-T.jpg?type=thumbnail

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