【特集】カナダ語学研修で世界へ視野を広げる…狭山ヶ丘
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狭山ヶ丘高等学校・狭山ヶ丘高等学校付属中学校(埼玉県入間市)は、10年以上前から春休み期間中に3週間のカナダ語学研修を実施している。ネイティブの英語や異文化に触れることで生徒は世界に視野を広げるようになるという。さらに研修で高まったモチベーションを生かし、帰国後はさまざまな取り組みで英語4技能の習得をサポートしている。研修に参加した生徒と、英語教育を統括する山崎修教頭に話を聞いた。
ホストファミリーとの温かい交流が生徒を変える

同校は10年以上前からカナダ語学研修を行っている。「最初はバンクーバーで語学研修を行っていましたが、日本人の留学生や観光客が多かったので、日本人の全くいない地域を探して、ここ数年はバンクーバー近郊のラングレーという町で行っています」と山崎修教頭は説明する。
ラングレーは田舎町なので、まず日本人に会うことがなく、英語に集中できるという。また、ホームステイ先の家庭が学校まで送り迎えしてくれるので、安全面でも確かだ。「何よりカナダ人がフレンドリーで温かく迎えてくれることが、生徒にとって、とてもいいのです」
この語学研修の期間は、3月中旬から下旬の3週間。中1、中2、高1、高2の希望者全員が対象で、毎年30~70人が参加する。1家庭に2人ずつホームステイしながら、午前中は地元のトリニティ・ウエスタン・ユニバーシティで世界各国から集まる留学生とともに英語の学習を行い、午後は登山や水族館の見学など、さまざまなアクティビティーを楽しむ。そして、平日の晩や休日は、ホストファミリーとともに過ごす。
「多感な若い時期に海外の文化に触れることで、生徒たちは視野を世界へ広げ、日本の良さを再認識して、大きく成長していきます。おとなしかった生徒が積極的に変わり、自分の気持ちをもっと英語で伝えたいと感じて、英語をより勉強するようになるのです。さらに、英語ができるのは当たり前で、その上に知識を付けようとしていきます。大学生になった生徒が、再訪してホストファミリーと再会することもあり、第2の我が家のように交流を続けている生徒もいます」
「ホストファミリーの温かさに触れて、シャイだった自分が変わりました」というのは、犬竹真咲君(中3)だ。中2の時に参加した語学研修は、犬竹君の初めての海外体験で、最初はホストファミリーに話しかけるだけでも緊張したという。
「英語で何と言えばいいんだろうと調べたりして、こんな簡単なことも伝えられないんだと英語力のなさを痛感しました。でも、ホストファミリーのお父さん、お母さんが優しく接してくれて、自分の英語が伝わった時はすごくうれしかったです」

ステイ先は母親が銀行で働く一方、父親は専業主夫で、毎日おいしい料理を振る舞ってくれたという。特に週末には親戚が集まって、たくさんのカナダ郷土料理を親族みんなで楽しむ。雄大な自然が楽しめる大きな公園に連れて行ってもらったり、一緒にショッピングに行ったりして、楽しい時を過ごしたそうだ。
「帰る前の日に、お父さん、お母さんが僕に手紙を書いてくれました。すごくうれしかったけど、帰ってしまうんだと思うと、悲しくて涙が出てきてしまったのです。恥ずかしかった僕は、急いで部屋に戻って泣いていました。すると、お母さんが部屋に来てくれて、『カナダでは、そういう時はハグするんだよ』とハグしてくれたのです。本当にうれしかった」
こうした経験が、犬竹君を変えた。それまでは恥ずかしがり屋だったが、授業中も積極的に挙手するようになったという。「先日の授業参観でも、『最後に発表してくれる人いますか』と先生が言ったので、自分から手を挙げました。以前の僕では考えられなかった」
犬竹君は「英語でもっとコミュニケーションがしたい」と、英語の勉強に熱が入っている。すでに実用英語技能検定2級に合格しており、さらに英語力を上げようと頑張っている。
「今もホストファミリーのお父さん、お母さんとメールで連絡を取り合っています。将来は英語をマスターして、いろいろな国に行ってみたいと思っています」
カナダの自然、文化に触れて、世界の広さに気付く

檜司郎君(中3)は中1と中2で2回、語学研修に参加している。「カナダでは、学校も公園もスーパーも車も、何もかもが大きくて、スケールの大きさを感じました。授業中にジュースを飲みながら勉強してもよいなど、日本とは全く違う文化に驚き、世界は広いんだと実感しました」
「ラングレーでは、ブラックベリーの畑が地平線まで延々と続き、公園では見渡す限り雄大な自然が広がっていて、本当にスケールが大きいのです。それでも、大都市のバンクーバーに近く、町には最先端の設備を備えた学校もある」
スーパーで売っている物のサイズも大きくて驚いたという。「オレンジジュースもシリアルも、パッケージがすごく大きい。あるとき、僕はその大きなボトルのオレンジジュースをスーパーでこぼしてしまったのです。どうしようと焦りましたが、ホストファミリーやお店の人が『大丈夫だよ』と、とても優しく助けてくれて、親切さに感動しました」。檜君は、「スケールの大きさが、こうした優しさにつながっているのではないか」と感じている。
学校のアクティビティーでも、カナダの人たちからの大きなメッセージを感じたという。一人一人に違う絵が配られて、お互いに絵を見せずに、一つのストーリーを作るというアクティビティーをした時のことだ。
「お互いを理解できなくても、コミュニケーションを取り続けることが大事、みんなで協力することが大切、というメッセージを感じました。カナダの人は、僕が『分からない』と言っても、『分からなくても、とりあえず何か言ってごらん』『トライしてみよう』『チャレンジしてみよう』と励ましてくれます。その励ましに後押しされて、どんどん話ができるようになりました」
研修も後半になると、自信が付いてきたという。「公園に行ったとき、カナダ人の男の子に『一緒に遊ぼう』と話しかけました。すると、『いいよ』と言ってくれて一緒にサッカーをしたのです。すると、どんどんその輪が広がって、何人もの子がサッカーに加わって遊びました。自分が勇気を持って話しかければ、コミュニケーションできるんだと、とてもうれしく思いました」
こうした経験をして、檜君は「将来は海外で仕事をしてみたいと思うようになりました」と話す。「カナダの文化や、カナダの人たちの考え方、振る舞い方を知って、日本との違いを実感しました。世界は広いんだと刺激を受け、将来は英語を使った仕事をして、海外に行きたいと考えています」
檜君もすでに英検2級を取得していて、さらに勉強に励んでいるという。
研修で高まったモチベーションを4技能習得につなげる

山崎教頭は、「こうした経験が、生徒たちの英語を勉強するモチベーションを刺激しています。本校では、それを生かして英語力を向上させるために、さまざまな方法で4技能を強化できる環境を整えています」と話す。
週5時間の英語の授業に加え、朝7時20分からの「朝ゼミ」で英語を強化。英語スピーチコンテストでは中1~中3の全員が発表するという。また、中3生は文化祭で全員が英語劇に参加して、英語の表現力を磨く。
「英語劇を発表するまでの間には、人間関係のトラブルもあったりします。それを乗り越えて最後には団結し、いいものを作っていくのです。こうした経験もコミュニケーション力の向上につながっています」
英検対策も万全で、2次試験前には教師がマンツーマンでスピーキングの特訓をするという。「中3で英検2級に挑戦できるように指導しています。高校では英語運用能力測定試験のTEAP対策もしています。図書室には、オックスフォード出版の英語の本や、IBCパブリッシングの名作シリーズもそろっていて、多読できる環境も整えています。リスニングの演習コーナーもあり、4技能をまんべんなく向上できる環境になっています」
カナダでの研修で得た感激を忘れずに日々の学習に打ち込み、おのおのが将来の大きな夢をかなえられたらと思う。
(文・写真:小山美香 一部写真提供:狭山ヶ丘高等学校・狭山ヶ丘高等学校付属中学校)
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