将来の国を背負う「真の教養人」を育てる…甲陽学院

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 関西圏指折りの進学校として知られる甲陽学院中学校・高等学校(兵庫県西宮市)は、実験を重視した独自の理科教育を思考力養成の柱としている。男子校ならではの自由でのびのびした校風の中で、生徒たちは思い思いに関心、興味のあるテーマを追究している。理科教育の意義や校風の基となっている教育理念などについて、化学の授業を担当する大川貴史副校長に聞き、生徒たちの声も併せて紹介する。

邪な心を持たずに気品高く人生を送る

 ――学校の教育理念について説明をお願いします。

真の教養人の育成について語る大川副校長
真の教養人の育成について語る大川副校長

 初代校長の伊賀駒吉郎は「明朗・溌溂(はつらつ)・無邪気」を教育理念に据え、公立学校にはない自由な校風を理想としました。「自由」とは自己責任を伴うものであり、「自立」した生活と「自律」の精神の上に成り立つものです。本校は中学校と高等学校を少し離れた場所に設置し、それぞれ生徒の発達段階にふさわしい環境を整えています。中学生は「自立」させることを目的に、基礎的な学力や体力の養成、基本的な生活習慣の確立を重視します。一方、高校生になると精神的な「自律」が重要になってきます。将来の自己実現のために必要な自主性と創造性の伸長を目指した教育に取り組んでいます。本校では「進学資料室」はありますが、「進路指導室」はありません。進路選択に必要な資料は提供しますが、自分の進路は自分で決めることが本校の教育における基本姿勢であるからです。

 ――近年、共学化する私学が多いですが、男子校ならではの魅力をどう考えますか。

 青少年期には男女で発育段階にかなり開きがあります。共学校には互いに良い刺激を与え合うという面があると思いますが、肉体的・精神的発達のバランスから考えると、男女間で多少のずれがあることはいなめません。男子校のメリットとしては、男子が学習面で発揮するマニアックなまでの探究心に、教師・生徒ともに対応しやすいことでしょうか。ざっくばらんに申しますと、女子の目を気にせずに自分のやりたいことを先鋭的に追究できる。さらには男子だけであるという気軽さ、言うならば群れない絆のようなものが生涯の友情を培うのに適しているのではないかと思います。

 ――どのような人物を養成したいと考えますか。

 本校の教育方針は「気品高く教養豊かな有為の人材の育成」です。(よこしま)な心を持たないで人生を送ることは「気品」に通じます。気品とは自分自身をよく知っており、正々堂々としている(さま)でもあります。気品を身に付けるためには、教養の涵養(かんよう)が必要です。教養とは「適応・超越・自省」の上に成り立つと考えます。一つの答えを求めて効率よく問題を解く力を養うことが「適応」であり、いわば実用主義と言えるでしょう。そして、不思議だと思う心、蓄えた知識を「超越」しようと思う心、これが学問の原点です。さらには超越しようとする自らの妥当性と正当性を疑い、踏みとどまることができる「自省」。これら三つの精神がバランスよく培われた人物が真の教養人であり、将来の日本を背負っていくことができる理想の人材ではないでしょうか。

「速い頭」ではなく「強い頭」を鍛える

 ――理科教育では実験を重視し、数多く行っていると聞きます。その狙いは何ですか。

五感を刺激する化学実験
五感を刺激する化学実験

 本校をはじめ進学校と言われる多くの学校の生徒は「速い頭」を鍛えられています。豊富な知識を持ち、早押しクイズのように答えることができる能力です。しかし、本当に大切なのは失敗してもめげずに何度もトライすることができる「強い頭」なのです。理科の実験は教科書通りにいかないことが多々あります。それ故、「なぜだろう?」と成功するまで何百回、何千回も挑戦して、新しい事象の発見につながることもあるのです。理科の実験には「強い頭」が鍛えられる特性があるうえ、座学にはない「五感」を使って学習することの楽しさも味わえることから、本校ではできるだけ多くの実験の機会を提供しているのです。

 ――新しいものを発見するためには、試行錯誤が不可欠ということですか。

 創造力は自ら生み出すものです。我々はその環境を提供するだけです。実験をすればリポートを提出してもらいますが、必ず感想・考察を書いてもらいます。最初は幼い発見でも繰り返すことで内容が変わってきます。一つの正解を強要せずに、出てきたデータを大切にします。要は、「経験知」を積むことによって、新たな発見や知識を得るのです。物理学者の朝永振一郎氏はこんな言葉を残しています。「ふしぎだと思うこと これが科学の芽です よく観察してたしかめ そして考えること これが科学の茎です そうして最後になぞがとける これが科学の花です」と。「不思議だなあ」。これが学ぶ姿勢の原点だと思います。

「いろんなことにチャレンジできるのが甲陽の魅力」

文化祭で生物の解剖を披露する生徒たち
文化祭で生物の解剖を披露する生徒たち

 同校の理科教育について、生徒はどう受け止めているのだろう。中学3年の生徒3人に聞いた。

 ――理科の実験から学ぶうえで、何が重要だと思いますか。

 宮井快知君 実験終了後の振り返りの時間が大切だと思います。失敗した点についてプロセスを振り返り、原因を分析することで次に生かすことができます。将来は研究者の道に進みたいです。甲陽では特に生物と化学の実験が多いのですが、コツコツと経験を積み重ねることがきっと将来につながっていくと期待しています。

 ――印象に残っている実験はありますか。

 細野創太君 酸化還元滴定の化学実験です。最初は滴定操作が手際よくできず、失敗していました。液体の色が無色からいきなり真っ赤に変わったり……。そんな失敗を何回か重ねるうちにうまく微調整することができるようになり、実験が楽しくなりました。

 福本開君 僕は生物の実験が好きです。これまでカエルやブタの目、カニの足、ニワトリの手羽先などさまざまな解剖実験に取り組みました。体の仕組みや特徴を知ることはもちろん、生命の神秘に触れることができたことも大変良い経験になりました。

 ――甲陽学院を目指している将来の後輩の皆さんに、学校の魅力のアピールやアドバイスをしてください。

 細野君 「自分でやってみよう」という意思があれば、いろんなことにチャレンジできるのが甲陽の魅力です。理数系科目の授業が充実していますが、英語に興味のある人はオーストラリア研修に参加することもできます。

 福本君 小学生のうちから自分の好きなこと、興味のあることをとことんやっておくことをお勧めします。中学に進学した時に、勉強においてもきっと役に立つと思います。

 宮井君 塾に通っている人は多いと思いますが、塾で教わった理屈について「なんでそうなるのか」という疑問を持ってください。「理屈を求める心」が、自分自身を成長させてくれると信じています。

 (文・写真:櫨本恭子 一部写真提供:甲陽学院中学校)

 甲陽学院中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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650338 0 甲陽学院中学校・高等学校 2019/06/25 05:22:00 2019/06/25 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190621-OYT8I50003-T.jpg?type=thumbnail

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