【特集】90年以上続く耐寒登山で山のルールや協力を学ぶ…甲陽学院

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 甲陽学院高等学校(兵庫県西宮市)は90年以上前から、地元の六甲山系で「耐寒登山」を実施している。長い伝統の中で、生徒だけでなく卒業生、父母ら学校に関係する多くの人たちが親しんでいる行事だという。今年も2月14日に行われ、高1と高2の全生徒約400人が踏破した。当日の様子や事前準備、狙いなどを指導担当の岩見誠之教諭や参加した生徒たちに聞いた。

山に親しみ、山のルールを学ぶ経験

耐寒登山をサポートする岩見誠之教諭
耐寒登山をサポートする岩見誠之教諭

 同高校の「耐寒登山」は毎年2月の第2金曜日に実施される。5月の「体育祭」、9月の「音楽と展覧の会」とともに、生徒が運営する3大行事の一つとされ、1930年に生徒自治会(現在の生徒会)が耐寒登山を実施したという記録が残っていることから、少なくとも90年以上引き継がれてきた伝統行事だ。

 時代によって登山ルートは変わってきたが、この30年ほどは高校校舎(西宮市角石町)を出発し、六甲山系のゴロゴロ岳(標高565m)、東お多福山(同697m)、六甲山(同931m)と、3山を縦走して有馬温泉に到着するルートを取っている。

 参加する高校1、2年生は、学校から10分ほどの場所にある登山道から山に取り付き、休憩と昼食時間を含めて4時間半を目安として有馬温泉まで歩く。

 耐寒登山を指導する岩見誠之教諭は、その目的を「自然環境の中で山登りのルールを守り、各自の体力を考え、グループで協力体制を取りながら安全に完全踏破すること」と話す。生徒の中には、六甲山を歩くのは初めてという生徒も少なくないといい、仲間とともに登山を楽しみ、山のルールを知る機会にもなっている。

 また、高3生が卒業した直後に実施される行事であるため、高2生にとっては運営を経験することでリーダーシップが養われ、次の行事である体育祭に向けての組織づくりにもつながるという。

岩だらけの急な坂道もある
岩だらけの急な坂道もある

 耐寒登山を支える「登山委員」は毎年、参加者の安全を確保するため事前準備から当日の運営まですべてを担当する。今年は高2生を中心とした44人の生徒が応募し、教員のサポートのもと運営にあたった。

 事前準備では、まず前年の11月から12月に教員が下見を行い、翌1月に登山委員も教員と一緒にコースを歩く。この30年ほどは同じルートを取っているが、登山道が荒れてきている箇所もあるし、台風の後は倒木もあるため、毎回、下見は欠かせない。さらに前日には教員が自動車で車道から見える範囲を確認し、念を入れる。また、岩見教諭を含め体育教員は、耐寒登山に備えて体力作りをする。

 今年、登山委員を務めた戸塚興優君(高2)は「事前の下見でルートを歩いた際、特に危険箇所はなかったので、みな安全に登山を楽しめたと思います」と話す。「委員は当日は見守り業務に就くのですが、下見で山の空気と景色を楽しむことができたので、自分としても楽しい気分を味わえました」

先発隊によるチェックと関門での見守りで全員無事

ゴロゴロ岳から眼下に広がる街並み
ゴロゴロ岳から眼下に広がる街並み

 今年2月14日に行われた耐寒登山には、高校1年と2年の全生徒約400人が参加した。事前に、体力的に同じくらいの生徒同士で4人から7人からなる約80班を作り、第1班は午前9時4分にスタート。最終班が出発したのは9時20分だった。ゴールの有馬温泉に、早い班は午後0時半過ぎに到着し、午後3時には全員が到着した。

 この日、登山委員の一部でつくる先発隊が、第1班に先駆けて出発していた。当日、急に通行止めが生じたりしていないかを確認するためだ。「2年前に、ゴロゴロ岳と東お多福山の間にある車道でガス工事があり、急きょ、迂回(うかい)ルートを設定して、予備の委員と教員が誘導に立ったことがあります。400人の生徒を安全に誘導する責任は重大です」と岩見教諭は振り返る。ルート上には六つの「関門」が設けられ、見守り業務の登山委員と教員が一緒に立って各班の通過を確認し、通過時間を記録して、各班の無事をチェックする。

 なお、当日は、事前に理想とする登山時間を決めて「シークレットタイム」とし、その時間に一番近く到着した班を表彰した。また、参加者全員が携帯する手描きの地図には「左は間違い」「一列になって登る」「車道注意」「自販機あり」など注意や目印のほか、「野鳥の声を聞きながら下る」などのアドバイスも記され、楽しく登山を楽しめるようにする工夫も凝らされていた。

 参加した大守慶太君(高2)は「ゴールしてからみんなと温泉に入り、温泉街を散策して土産を買って午後5時には帰宅できました」と愉快そうに話した。

学校に関わる多くの人々が楽しみ、思い出をつくる

いろいろなアドバイスが記されたオリジナルの地図
いろいろなアドバイスが記されたオリジナルの地図

 岩見教諭によると、この耐寒登山に親しんでいるのは生徒だけでないという。卒業した95回生が同窓会で同じルートで登ったことがあり、生徒の保護者による父母の会も、生徒から登山の話を聞いて、同じ道を歩く会を企画したりしている。トレイルランニングを趣味にする事務長も、休暇をとって耐寒登山に同行したという。

 「多様性があるのが本校の良さです。生徒、委員、教員だけでなく、関わる多くの人が、それぞれの思いで耐寒登山を楽しみ、良い思い出として記憶しています」と岩見教諭は語る。登山委員の木村碩人君(高2)も「百花爛漫(ひゃっからんまん)という言葉を先生がよく使いますが、甲陽は多様性を重視する学校です」と話す。

 今年は無事、実施することができたが、新型コロナウイルスの感染がなかなか終息しないなか、来年以降の実施は神経を使うところだ。それでも岩見教諭は「コロナには万全の対策を取りつつ、耐寒登山を実施させてやりたい」と、生徒たちの伝統を守ろうとする思いを固めていた。

 (文・写真:水崎真智子 一部写真提供:甲陽学院中学校・高等学校)

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1559789 0 甲陽学院中学校・高等学校 2020/10/21 05:01:00 2020/10/19 14:53:33 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201019-OYT8I50023-T.jpg?type=thumbnail

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