壮観の「体育祭」支えるリーダーシップの伝統…六甲学院

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 六甲学院中学校・高等学校(神戸市)は、いかにも男子校らしい勇壮な「体育祭」で知られる。とりわけ約1000人の生徒が上半身裸、はだしで行う一糸乱れぬ「総行進」は同校の名物行事だ。この体育祭は毎年、ほぼ生徒たちだけの手で準備され、運営される。先輩から後輩へと受け継がれる自主自律の伝統を通して生徒たちはリーダーシップを体得するのだという。体育祭準備でにぎわう同校を訪問し、生徒たちの表情を追った。

1000人の「総行進」に目を見張る

体育祭の「総行進」の練習風景。上半身裸、はだしで約1000人が行進する
体育祭の「総行進」の練習風景。上半身裸、はだしで約1000人が行進する
「総行進」で描かれた体育祭のテーマ「鋒(きっさき)」の文字
「総行進」で描かれた体育祭のテーマ「鋒(きっさき)」の文字

 同校の第78回「体育祭」は6月8日に開催された。今年のテーマは「(きっさき)」。「新時代の先陣を切る」心意気を示した言葉だという。この体育祭を目前に控えた5月30日、同校を訪問し、グラウンドで行われていた「総行進」の練習風景を見た。

 「総行進」は、全校生徒約1000人が一糸乱れぬ隊列で行進し、約50分間さまざまな図柄を描いてみせる演技で、近年有名になった日本体育大学の「集団行動」を彷彿(ほうふつ)とさせる。神戸の街を見下ろす坂に立つ同校の地形を生かし、グラウンドの北面には傾斜の付いた観覧席がある。その席から見学していると、幾何学模様や、平成と令和の元号発表シーンなどさまざまな図柄が生徒たちの行進によって描かれていく。特に、左右から6列で近寄って来た生徒たちの行進が、ぶつかることなく通り過ぎる「交差」の演技は圧巻だった。体育祭担当の安達英二教諭が「『総行進』は六甲学院の体育祭の目玉で、毎年、楽しみに多くの方が見に来られます」と語った。

 この勇壮で精巧な「総行進」を生徒たちは毎年、1日1時間、わずか10日ほどの練習で仕上げるという。それは生徒たち自身が作り上げた練習や運営のノウハウが伝統となって受け継がれているからだ。

 「体育祭実行委員」は高3生を中心に高2生も交じって務める。委員長と2人の副委員長の三役、企画、広報、警備、救護、演技、競技の各担当パートがあり、生徒が企画から運営まですべて行っているという。安達教諭の役割は主に見守ることだ。

 グラウンドの生徒の中に、上半身裸、はだしで、ひときわキビキビと、しかも楽しげな表情で行進を先導する生徒たちがいる。12人の先頭役員だ。1000人を見下ろせる場所で、その場で足踏みをしながら指令を出しているのは委員長。体育祭当日に「警備」と「救護」にあたる生徒はグラウンドの周りの植栽の枯れ葉掃除に取り組んでいた。今年の図柄を考え、行進をデザインするのは「企画」担当だ。「演技」と「企画」そして有志の役員が広大なグラウンドに目印のポイントを打つ。体育祭のプログラムはもちろん「総行進」だけではない。玉入れやリレー、騎馬戦などの多くの競技の段取りを「競技」担当が取り仕切る。

後輩一人一人に声をかけながら体育祭を作り上げる

体育祭担当教員として生徒たちの主体的な活動を見守る安達英二教諭
体育祭担当教員として生徒たちの主体的な活動を見守る安達英二教諭

 この日の放課後、「体育祭主任会議」が開かれ、三役と各担当の代表、計19人が集まった。議題は「総行進」の指導方法についてだった。

 「総行進」は同校の名物だけに、憧れを感じて練習に打ち込む生徒は多いが、反面、全員参加で炎天下に50分歩くことに納得できず、練習に集中できない生徒もいる。練習中に指示を聞いていない中1、中2に先輩としてどう対応すべきかが課題だ。

 「初対面で、怒る、ほえるでは、壁ができてしまう。たとえなめられても、その子とのコミュニケーションができる方法を探りたい」「中に入って関係を作っていこう」「黙らなあかん雰囲気を作る」など、ときに語気鋭く、本気の意見が交わされていった。

 会議後、委員長の西岡功太郎君は、「総行進を初めて見たのは小学生の時です。1000人を統括する委員長が格好良く、入学しようと決めました。今、その立場にいます」と体育祭にかける思いの深さを話した。副委員長の安田智洋君は「中1、中2の頃は、なぜ歩かされるのかと不満でしたが、先輩が先頭で楽しそうに行進する姿を見ているうちに、総行進には人を(とりこ)にするものがあると考え、それを知りたいと思いました」と委員になった動機を話す。同じく副委員長の吉松昌悟君は「六甲学院は上下の関係が柔らかです。委員会でも異なる学年が協力して一緒に同じ目標に向かうのがいいところです」と話した。

 先輩たちが一人一人の後輩に声をかけ、納得させ、参加意識を高めることで「体育祭」を実現していることがよく分かる。

6年かけてリーダーシップを身に付けていく学校

指導員の先輩を取り囲み、報告や相談をする中1生たち
指導員の先輩を取り囲み、報告や相談をする中1生たち

 会議中に、企画パート副主任の勝村亮太君から、「中1のとき、西野宏志先生が『リーダーシップってなんだと思う』とみんなに問いかけたことがあって『次のリーダーを育てることだよ』と話してくれた。今、まさに、僕らはそのことをしていると思う」という発言があった。リーダーシップの自覚も「体育祭」の大きなテーマだ。

 安達教諭も「体育祭は、高3生にとってリーダーシップ教育の集大成です。体育祭だけでなく、本校には先輩と後輩が一緒に活動する機会は多い。6年かけてリーダーシップを身に付けていく学校なんです」と力説する。

 リーダーシップを養うという意味で、同校ならではの取り組みと言えるのが「中1指導員制度」と「訓育委員会」だ。「中1指導員制度」とは、新入生が学校生活にスムーズに慣れていけるよう、高2生が寄り添う仕組みだ。四つのクラスに1人ずつ付いて、入学前のオリエンテーションから1学期の終わりまで、教室で朝礼、昼休み、終礼、放課後をともに過ごす。大役であるため、成績優秀で人物も申し分ないとして教員が指名した高2生のうち、本人も了解した4人が選ばれている。

 「訓育委員」は、中3と高校の各クラスから選出され、登校指導や、服装、掃除を監督する係だ。同校の生徒は詰め襟の制服で登校し、校内着と呼ぶ白い上下の服装に着替える。体育用の運動着もある。決められたシーンに決められた着方をしていない「異装」は訓育委員が指摘し、記録する。放課後に生徒全員で行う掃除にも先輩から後輩へと伝えられる方法があり、訓育委員が指導、監督にあたる。

 他にも社会奉仕委員、図書委員などのさまざまな委員会、生徒会、文化祭・体育祭実行委員、また、多くの生徒が入部している部活動があり、学校生活の多くの場面で先輩が後輩の指導にあたっている。

「憧れだった先輩のように自分はできているか」

 「中1指導員」を務める高2生4人に、引き受けた役目についての感想を聞いてみた。

 小幡響君は「自分が中1の時、指導員は何でも知っていると思い、尊敬できる対象でした。いざ自分が指導員になってみると、意外と教えられなかったり、答えられなかったりすることに気付きます。高校生の代表としてもっとしっかり中1を見守ることができるようになりたい」と話す。

 谷田匠君は「自分が教えてもらった指導員の先輩のようにできているのか、と考えます。思い出すのは指導員や訓育委員の先輩らが今までいろいろな姿を見せてくれたことです。柔らかな注意の仕方なども教わっていたことに、指導する立場になって気付きました」と話す。

 下川奨太君は「中1の時、指導員の先輩とあまり話せなかったのが残念でした。でも、指導員になった今、自分から全員に話しかけると決めて実行しています」と話す。

 竹林祐太君は「どうやって勉強したらいいか、よく聞かれます。ゴールデンウィーク前に、全員に自分のノートを見せながら、こうやって勉強するといいよ、とアドバイスしました」と話す。

 今春、同校は東京大学10人、京都大学18人を含む国公立大学に133人、うち国公立大の医学部医学科へは18人の合格者を出している。学年の半数以上が現役で国公立大学に合格する進学校だが、小学生たちの受験校選びについて竹林君は、「勉強がしたいだけなら六甲に来る意味はありません」とアドバイスする。「六甲はただの進学校ではなく人間的に成長できる学校なんです」。後輩に迎えたいのは、これが分かる子供たちなのだ。

 同校は、毎年6月の第2土曜に開催される「体育祭」だけでなく、文化祭を始めとする多くの行事を公開している。校門へと延びる坂道をいとわずに足を運べば、先輩から後輩へと受け継がれるリーダーシップの伝統を目の当たりにできるかもしれない。

 (文・写真:水崎真智子 写真提供:六甲学院中学校・高等学校)

 六甲学院中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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678844 0 六甲学院中学校・高等学校 2019/07/08 14:27:00 2019/07/08 14:27:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190708-OYT8I50039-T.jpg?type=thumbnail

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