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【特集】国際バカロレアが育む「主体的に学ぶ」姿勢…昌平

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 昌平高等学校(埼玉県杉戸町)は10月、国際バカロレア機構(IB)によるディプロマプログラム(DP)認定校となった。同高は今年度、IBコースを新設しており、来年度から一層本格的に世界水準の教育が始まる。また、中学ではすでにIBの中等教育プログラム(MYP)を導入して5年目となり、主体的に学ぶ生徒たちが育っているという。城川雅士校長と国際教育部長の前田紘平副教頭に、その取り組みについて聞いた。

中学生全員と高校のIBコースが対象

地球環境問題について白熱した議論を繰り広げる生徒たち
地球環境問題について白熱した議論を繰り広げる生徒たち

 中3の「公民・物理」の授業で今年、IBプログラムの一環として、生徒が世界各国の政治家を代表して地球環境問題を論じるディベートが行われた。

 アメリカ役 「私たちが最先端技術で、再生可能エネルギーの開発を進めて、他の国に提供するから、その代わりに、火力発電を続けさせてほしい」

 ブラジル役 「それは無償で提供するのか。今の状況は、アメリカなど先進国がこれまでに出した温室効果ガスのせい。私たちが尻拭いをさせられているのはおかしい」

 中国役 「先進国は温室効果ガスを多く排出してきた。不公平だから、中国は今後の産業発展のために同じくらいの温室効果ガスを排出する権利がある」

 ミッションは、政治家として自国の利益を考え、選挙で再び当選するための国民の支持も考慮に入れながら、世界全体の解決策を見いだすこと。授業は非常に白熱し、生徒の希望で1時間の予定を2時間に延長したが、それでも終わらず、昼休み中もディベートが続いたという。

「IBで『学びの器』を身に付けてほしい」と話す城川校長
「IBで『学びの器』を身に付けてほしい」と話す城川校長

 「アクティブラーニングを取り入れる学校が増えていますが、本校が導入しているIBプログラムは、IB機構(本部スイス・ジュネーブ)による厳しい基準をクリアして評価された内容になっていて、本質を学ぶ、より深い学びになっています。ディベートの様子からも分かるように、主体的に発言し、学ぶ生徒が育っています」と城川校長は胸を張る。

 IBプログラムは、IB機構が提供する国際的なカリキュラムで、世界の約5000校で実施され、日本でも文部科学省の推奨により、国内146校(今年7月時点)が認定校になっている。IBプログラムには、3~12歳が学ぶPYP(初等教育プログラム)、11~16歳が学ぶMYP(中等教育プログラム)、16~19歳が学ぶDP(ディプロマプログラム)がある。DPは、2年間の履修後に最終試験で所定の成績を収めると、国際的に認められる大学入学資格が得られる。

 同校は2015年度からMYPを中学生全員が学び始め、17年にはIB機構により埼玉県内で初のMYP認定校となった。また、今年度から高校にIBコースを設置し、この10月にはDP認定校に決まった。このコースの高1はDPを学ぶための準備期間として、英語力や思考力の養成に力を入れ、高校2、3年でDPのカリキュラムを履修する。現在は、英語と数学の授業を英語で行うほか、担任のカナダ人教諭が英語でHRを行っている。

 「高校のIBコースは定員15人の募集でしたが、予想を超えて応募があり、21人でスタートしました。IBの授業を受けてきた内部進学生だけでなく、公立中出身の生徒も熱意を持って入学してきています。大きな期待を感じています」と城川校長は話す。

「学びの器」を身に付け能動的に学ぶ

コミュニティープロジェクトでの発表 
コミュニティープロジェクトでの発表 

 IBを指導する前田副教頭は、「IBでは何のために学ぶのかを常に意識し、概念を考えることを重視しています。物事の本質を複数の視点から考え、ディスカッションやディベートなどを通じて、自分の考えを説明する力を付けていきます」と語る。

 中学のIBのカリキュラムの中で特徴的なのが、中3で学ぶ「コミュニティープロジェクト」。自分の興味ある分野や将来につながる分野を見つけ、その分野で社会の役に立つことを考え、奉仕活動をするという内容だ。

 前田副教頭によると、「医療関係に進みたい」と言っていたある生徒は、古本募金の活動をしたという。杉戸町内の200軒を回って協力を仰ぎ、60軒の協力を得て集めた600冊の古本を売って、収益を『がん研究会』(東京・江東区)に寄付したという。「こうした活動を通して、大人とのつきあいを学び、失敗もして、世の中を学んでいきます。大人しかった生徒でも、人を助けることが自分自身の喜びであると気付いていくのです」

 城川校長は、「IBを中学生全員に導入したのは、こうした『学びの器』を作るのが目的です。受け身の学習ではなく、自分が世界におけるさまざまな問題を解決するにはどうするか、その意識を作っていくことが必要です。この器を身に付ければ、高校でIBコースに進学しても、一般のコースに進学しても、能動的に学ぶので、吸収力が全然違ってきます。すると爆発的に成長していくのです」と語る。

 IBプログラムを学んだ生徒たちの間では、確かにさまざまな学びや活動が主体的に行われている。「放課後研究会」もその一つ。みんなで議論しながら学び合いたいという有志の生徒たちが集まって開いている勉強会だ。現在は、「死刑と無期懲役の線引きはどこにあるのか」「男女平等は真の意味で実現可能か」などの議論を行っているという。

 また、「社会歴史研究部」は、7月の参議院議員選挙で独自に出口アンケート調査を実施し、民主主義と選挙制度についての考察を行った。現在の選挙制度では、1枚の投票用紙に一つの選択肢しか書けない多数決だが、これで民意を反映した政治ができるのかを考え、理想の選挙制度についての考えを文化祭で発表したそうだ。

新しい大学入試にも追い風になるIB

IBを統括指導する前田副教頭
IBを統括指導する前田副教頭

 来年度、大学入試センター試験に代わって行われる「大学入学共通テスト」について、城川校長は、「IBを学んでいる本校にとって追い風です」と話す。

 「今後の英語の試験では、これまでのリスニングとリーディングだけでなく、スピーキングとライティングも含めた4技能の評価になっていきますが、本校の生徒は英語を話す、書くという機会を多く設けているため、4技能のほうが、評価が高くなる傾向にあるからです」

 IBでは、普段の授業やテストでも記述を多く取り入れているので、記述問題が導入される大学入学共通テストや、同様の国立大学2次試験でも有利だという。

 前田副教頭は、「自分で考えて書くので、ただ暗記をするよりも、結果的によく覚えているのです。高3になって大学入試の問題を解いても、『中学の時に書いたことを覚えているからすらすら書けた』『中学の時から多く記述を書いていたから、今は楽勝』と言う生徒もいます」と話す。

 城川校長は、「IBの学びは、新入試や、主体的・対話的で深い学びを目指す新指導要領に直結しています。今、社会で求められている教育は、IBの理念と同じなのです」と話す。

 IBコースで学び、DPの卒業試験に合格できれば、海外大学の入学資格であるIB資格を取得できる。東京大学や慶応大学、早稲田大学など、推薦入試やAO入試をIB資格で受験できる国内大学も増えており、城川校長は「IBコース卒業生のために、海外大だけでなく、国内の大学も視野に入れて、受験体制を整えていきます」と抱負を語る。

 同校は今、中学、高校を通してのIB教育の体制が整いつつある。「学びの器」を身に付け、主体的に学ぶ力を磨けば、大学に進み、社会に出てからも前向きの人生を送れることだろう。

 (文・小山美香 写真・中学受験サポート 一部写真提供:昌平中学・高等学校)

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934747 0 昌平中学・高等学校 2019/12/06 05:21:00 2020/11/17 10:42:26 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/12/20191205-OYT8I50003-T.jpg?type=thumbnail

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