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【特集】国際バカロレアとSDGsで学びと社会をつなぐ…昌平

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 昌平中学・高等学校(埼玉県杉戸町)は4月から、高2を対象に国際バカロレア(IB)のDP(ディプロマ・プログラム)を本格的にスタートさせた。中学では5年前からMYP(中等教育プログラム)を実践しており、並行して進めている「SDGs(持続可能な開発目標)」の学びとともに、生徒たちは社会との関わりを考えながら「自分の学び」を深めている。

実社会とのつながりを意識して学ぶIB

「IBもSDGsも目指す方向は同じです」と話す城川雅士校長
「IBもSDGsも目指す方向は同じです」と話す城川雅士校長

 IBは、IB機構(本部:スイス・ジュネーブ)が提供する教育プログラムで、同校は2015年に埼玉県内初のMYP認定校となり、中学1~3年の全生徒がMYPを学んでいる。昨年10月には16~19歳向けのDPも認定され、昨年度設置された「DPクラス」の高2で4月から本格的に履修が始まった。同クラスの高1は準備段階としてDPの探究型授業に必要なスキルや英語力を身に付けている。

 「コロナ禍のため、オンライン授業でのスタートとなりましたが、DPクラスは昨年から1人1台のパソコンを毎日使用していたため、4月8日からスムーズに授業が始まり、Zoomでディスカッションをするなど、ポジティブに活動できました」と城川雅士校長は胸を張る。

 IBの授業と通常の授業との違いについてIBコーディネーターである前田紘平教頭は、「従来の知識ベースの学びではなく、概念ベースの学びです。学ぶ事柄と現在の実社会のつながりを考えながら学ぶ点に特徴があります」と説明する。

 例えば国語では、通常、物語を読む際に、登場人物の心情を読み取ったり、作者の思いを考えたりするのが主な内容だが、IBでは物語同士を比較して考えを深めたり、物語の続きを自分たちで考えたりする。

 数学や理科でも、数式や化学式などをただ暗記していくのではなく、それがどのように実社会で応用されているか考えながら学ぶ。そのため、「この勉強が何の役に立つのか」とよくある疑問を抱くことがないという。また、理科では自分で仮説を立て、それを検証するための実験も考えて行うため、主体性が自然と身に付くという。

 協調性を育み、思考力、表現力を付けるためにディスカッションやディベート、プレゼンテーションを多く取り入れているのも特徴的だ。

 「中3の1学期の公民では、出生前診断の是非について、資料を読んでディスカッションしました。このように正解のない問題について考えることで、積極的に学ぶ意欲が出てきます。MYPの学びで中学のうちに勉強の意欲を付けると、高校でDPクラスに進んでも、他のコースに進んでも、勉強への取り組み方が違ってきます」と前田教頭は話す。

MYPの下地の上に一段と深いDPの学びを

「行動が人を変えるのです」と話す前田紘平教頭
「行動が人を変えるのです」と話す前田紘平教頭

 同じIBの学びでもDPはMYPよりさらに密度の高い学びになる。4月からDPの授業を受けている生徒は「覚えるのではなく、考える勉強。一段と深い学びになって、難しいけれど面白い」などと話すそうだ。

 社会科の石澤淳一教諭が行っているDPの授業では現在、第2次世界大戦を取り扱っているという。たとえばヒトラー政権がなぜ生まれたかを考える際、多くの資料を読み込んでクラスで話し合う。ベルサイユ条約がドイツに厳しい内容だからヒトラー政権が生まれたという説、ブロック経済でドイツ経済が追い込まれたからナチスが勢力を伸ばしたという説、ヒトラーの個人的な資質が原因だとする説など、さまざまな歴史家の見方を分析して意見を出し合う。

 「資料の分析力や批判的思考力を育むことが目的です。原因が一つではない、イエスかノーで答えられない複雑な問題を考えます。また、自分の意見を言う時には、反論の可能性を考えて、根拠を示しながら話す方法を学んでいきます」

 DPではさまざまな教科の学習を貫く方法論として、「知の論理(Theory of Knowledge)」を学ぶ。同校では高2で週3時間、高3で週1時間学んでいる。

 「自然科学、人間科学、歴史、数学、倫理、芸術のそれぞれの領域で、知識の位置付けを議論する授業です。複数の知識の領域を、教科横断的に学び、正解のない問いについて考え、批判的思考力を育てます」と前田教頭は説明する。

 前田教頭は自らの「知の論理」の授業で、人間と自然科学の関係性を、食糧問題を通して考えている。「農業では、肥料や化学薬品が使われ、品種改良や遺伝子組み換えといった技術もあります。感情としては『添加物や遺伝子組み換え食品はできるだけ避けたい』と考える生徒もいますが、現実問題として費用や食糧供給量を考えるとそれらはなくてはならない。そうした感情と論理の兼ね合いについて考えていきます。すでに生徒は自ら考える下地ができているので、私たち教師が問いかけなくても、どんどん自分たちで問いを立てて議論し、生物など他教科と結びつけて考えていきます」

SDGsの学びで大人と接し、意識が変化する

「届けよう、服のチカラ」プロジェクトでSDGsを学ぶ中2生
「届けよう、服のチカラ」プロジェクトでSDGsを学ぶ中2生

 同校は、このIBの学びと両輪をなす形で、「SDGs」の学びを進めている。

 中1では、「JICA地球ひろば」(東京都新宿区)を訪問し、青年海外協力隊の経験者から話を聞く。途上国の課題を知り、SDGsの目標の中から、自分ができることを考えてリポートを作成する。

 中2では、ユニクロの「届けよう、服のチカラ」プロジェクトに参加し、不要な子供服を回収して途上国に届ける活動をしている。「最初は安易な気持ちでも、やってみて初めてその意義に気付くのです。昨年はミャンマーに届けました。ユニクロから届けた時の動画が送られてきて、ミャンマーの子供たちの笑顔を見たとき、生徒たちもやって良かったと感じたようです」と前田教頭は話す。

 中3では、自分の将来の目標に合わせた社会貢献活動を行う「コミュニティープロジェクト」を行う。昨年は男子5人のグループが、未成年の死因1位が自殺であるというデータを得て、自殺を減らす取り組みを行う国立精神・神経医療研究センターに寄付する活動を行い、卒業論文にまとめた。

「コミュニティープロジェクト」で奉仕活動をする中3生
「コミュニティープロジェクト」で奉仕活動をする中3生

 厚生労働省を訪れたり、街頭の募金活動を行ったりする中で、生徒たちはさまざまなことに気付き、気持ちも変化したという。論文には次のような内容が書かれてあった。「最初は『募金なんて簡単だ』という思考回路だったが、完全な間違いだった。徹夜で慣れない募金活動の申請書を書いても、警察署からダメ出しを受け、自分がどれだけ無知かを知った。最初は募金活動中に受けた質問に答えられず、とても落ち込んだ。その悔しさを胸に、原点に立ち返って考え、徹底的に調べた。翌日は同級生を自殺で亡くしたという男性から寄付があり、とても考えさせられた。気持ちが伴うことが重要だと感じた。自分の気持ちの変化とお金が集まる達成感で、小さくとも役に立っている実感が湧いた」

 前田教頭は「行動が人を変えるのです。なかなか自分から動けない子、だらしない子、子供っぽい子もいます。しかし、大人と接する場面に遭遇し、頼りにできる大人がいない中で、自分でなんとかしなくてはと意識が変わります」と話す。

 城川校長は「IBもSDGsも目指す方向は同じです。学んだことをどう社会貢献につなげていくかを考える。両方がお互いにいい作用をして、生徒が成長していきます」と話す。

 「単に『覚えればいい』とは思わなくなるのです。物事の背景を考えることが染みついてくる。すると、学問の面白さに気付き始めます。やらされてやるのではなく、自分なりの視点を持つと、自分でどんどん学んでいきます。『世界の貧しい国の子供に教育の機会を与えたい』という視点を持って学んできた生徒は、今年現役で東京大学に進学しました。生徒が本校の学び、自分の学びを深めた結果です」

 IBとSDGsの両輪で、自分の学びの視点を見つけ社会とつなげる、それは生涯にわたって役に立つ学びの基礎となることだろう。

 (文・写真:小山美香 一部写真提供:昌平中学・高等学校)

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1486656 0 昌平中学・高等学校 2020/09/23 05:01:00 2020/10/21 16:29:05 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200918-OYT8I50003-T.jpg?type=thumbnail

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