「生徒諸君、世界を舞台に一緒にワクワクしよう」…武蔵野大

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 今年度、日野田直彦氏を新校長に迎えた武蔵野女子学院中学校・高等学校(東京都西東京市)は、来年度から「武蔵野大学中学校・高等学校」と名称を改め、共学校として新たなるスタートを切る。その第1期生を迎えるための説明会を兼ねた2回目のオープンスクールが6月に開催され、日野田校長と元グーグル日本法人社長・村上憲郎氏の対談が行われた。

「世界を変えると勘違いできる力」が必要

来年度から武蔵野大学中学校・高等学校と名称を改め、共学校に
来年度から武蔵野大学中学校・高等学校と名称を改め、共学校に

 取材に訪れた6月23日、会場となった同校の雪頂講堂は、約400人の小学生とその保護者でいっぱいだった。

 説明会は日野田校長の挨拶(あいさつ)と自己紹介から始まった。日野田校長の前職は、大阪府立箕面高校の校長で、在任した2014年からの4年間に海外のトップ大学への進学者を送り出した実績を持つ。

日野田直彦新校長
日野田直彦新校長

 「まだ大阪から来たばかりで関西弁ですが、京都出身なんです」などと場を和ませながら、箕面高校でハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)の学生とともに行ったワークショップを、動画を交えて紹介。さらに日本の現状や50年後に予想できる世界情勢などに話が及んだ。

 これからのグローバル社会で生きる人々が問われる二つのキーワードとして、「Challenge」と「Who are you?」を挙げ、武蔵野大中学で育成を目指す生徒像について「失敗を恐れずにチャレンジできる人、自分が何をしたいのか、社会でどう貢献したいのかを自分の言葉で話せる人になってほしい。語学でなく、世界でいろんな体験をすることで『世界を変えると勘違いできる力』を引き出したい」と校長としての意欲を語った。

来年度から使われる新制服
来年度から使われる新制服

 その後、入試広報の小幡武憲教諭が、「GLOBAL&SCIENCE」という新しい教育方針や、入試方法について説明した。また、来年度から変わる制服が今回初めて披露された。アパレルブランド「BEAMS(ビームス)」のスクールブランド「BEAMS SCHOOL」と学生服・体育着メーカー「東京菅公学生服」が協力して製作した新しい制服だ。ちなみに、現在の在校生は現行の制服と新しい制服の好きな方を選択できるそうだ。

それぞれの海外経験で自分の生き方を発見

 説明会が終わると、生徒はワークショップに参加するため別の場所に移動し、保護者向けに日野田校長と村上氏の対談が始まった。

 テーマは「世界を舞台に活躍する人材を育てる教育」。まず村上氏が、自己紹介として、世界に活躍の場を求めることになった経緯を語った。

元グーグル日本法人社長・村上憲郎氏
元グーグル日本法人社長・村上憲郎氏

 「私たち団塊世代は子供が多い時代に生まれ育ちました。当時は国語だけでも現代文、古文、漢文があり、理科や社会、数学も細かく分かれ、ありとあらゆる学問を習得して大学を受ける時代でした。今、リベラルアーツとよく言われますが、当時は幅広く世の中の素養を身に付けることは当たり前。それが私の生き方の基本を作ったと思います」

 18歳で大分県から京都大学に進学した。当時は学生運動の真っただ中で、村上氏もご多分にもれず「勉強はまったくしませんでしたね。いつもお巡りさんと戦っていましたから」と笑う。そんな学生時代に、1968年公開のアメリカ映画「2001年宇宙の旅」を見たことが、その後の生き方を変えるきっかけとなったという。「AI(人工知能)というものを初めて見て、コンピューターに興味を持ったんです」

 大学卒業後、電機メーカーの日立電子に就職。5年間勤務した後、米ボストンに渡り、コンピューター企業の「DEC(デジタル・イクイップメント・コーポレーション)」を経てグーグルに入社した。しかし、アメリカに渡った頃は、英語がほとんどできなかったという。それでも50年間仕事をまっとうした理由を、こう語る。「一つはAIというワクワクできるテーマに出会えたこと。もう一つは、アメリカ人の中には英語ができない人間は頭が悪いとレッテルを貼る人がいましてね。悔しくて毎日猛勉強したんです。でもそれが原動力になりました」

 日野田校長も帰国生としての自分の経験を語った。「私は30年前のクーデター中のタイから戻ってきました。だから、アメリカやヨーロッパからの帰国生に比べると、英語はあまり上手ではありません。でも海外のいいところは、人脈がいろんな場面で味方になってくれること。実は私はフェイスブックを立ち上げたメンバーの1人なんですよ。収入だけで言えばフェイスブックにいた方がよかったんでしょうが、『社会に貢献したい、自分にしかできないことをしたい』と思った。そして自分にできるのは日本と世界をつなぐ仕事だと考えました」

自分で問題を探し、考え抜く力が不可欠

 両氏の話は、今の日本社会が抱える問題から、これからのグローバル時代にどんな教育が必要かという話題に移った。

 「明治以降、正解をたくさん覚えた人が高く評価されてきたこれまでの日本の教育を、立て直さなければならない時に来ていると思います。そのためには、何が問題なのかを探す力と、正解があるかどうか分からない問題をひたすら考え抜く力を持つ子供を育てることが必要です」と村上氏は語る。その基礎として、英語4技能の教育と、コンピューターを動かすためのプログラミング教育が不可欠だと強調した。

 「決してプログラマーになれという意味ではなく、アルゴリズムという概念を体感させることが重要なんです」と説明する。アルゴリズムとは、プログラミングをする時の手順だ。広い意味では、問題を解決するための手段と言える。「今は変わり目。この時代を学校がどう乗り切れるか、どう生まれ変われるか。正念場だと思います。保護者の皆さんは、そうしたことも踏まえてお子さんの進学先を選んでほしいと思います」

 日野田校長も、「その子に合う学校、合わない学校がある。子供に合わせて選択してほしい」と応じた。

心を磨く仏教教育も大切に

 対談の後半には、質疑応答の時間が設けられ、武蔵野大中のカリキュラムやクラブ活動などについて質問があった。同校の根底にある仏教教育に関する質問も複数あり、「この学校の仏教の心を教える教育は、社会で他人と関わる上でとても役に立っていると感じています。子供を入学させたいが、新しい学校改革の中で失われてしまうのでは」という懸念の声も聞かれた。

 これに対し、日野田校長は、「宗教はとても大事。宗教を理解することは、世界を理解することでもあります。心の教育も大切にしていきたいと考えています」と答え、さらに、「ここの生徒たちはポテンシャルがとても高く、秘めた積極性を持っています。着任3日目に、『私、海外に行きたいんです』と校長室を訪ねてきた子がいて驚きました。先生たちもやる気にあふれ、やりたいことを明確に持っている。そこには、この学校が大切にしてきた仏教精神が根底にあるのではと感じています」と語った。

約400人の小学生とその保護者が集まった雪頂講堂
約400人の小学生とその保護者が集まった雪頂講堂

 今回、参加した保護者に対談の感想を聞くと、「娘を入学させたい」というある保護者は、「自分も卒業生で、上の娘が今通っています。この学校には伸び伸びと何でも言い合える雰囲気があり、先生との距離感もちょうどいい。何よりも仏教の教えから、社会に出た時にベースとなる、人を思いやる心や謙虚さなどの大切さを教えてもらいました」と話した。また、「新しい改革に不安もあります。でも、娘たちは自分の考えを持ち、考え抜く力が足りないと思います。校長先生と村上さんのお話を聞き、自分でチャレンジする力を養い、やる気を出させてくれるのではと感じました」と同校の新しい教育に期待を寄せた。

 小幡教諭は、「共学化は、本校が目指すダイバーシティーの一環。今まではなかなか実現が難しかったことにも、教員たちが自主的に取り組み始めています。その道筋を、日野田校長が開いてくれました。期待だけで終わらないようにしていきたいですね」と決意を込めた。

 今回の取材で「今、日本が世界を変えるチャンス。一緒に戦える人、チャレンジを恐れない人、一緒にワクワクできる人にぜひ来てもらいたい」という日野田校長の言葉が胸に残った。新たな教育へシフトする同校の改革について、一度足を運んで確かめてみてはいかがだろう。

(文・写真:石井りえ 一部写真提供:武蔵野大学中学校・高等学校)

 武蔵野大学中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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37798 0 武蔵野大学中学校・高等学校 2018/08/23 05:20:00 2018/08/23 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180822-OYT8I50001-T.jpg?type=thumbnail

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