思う存分「好き」を追求できる校風…暁星

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 暁星中学・高等学校(東京都千代田区)は2018年に創立130年を迎えた。男子の進学校として知られる一方、歌舞伎役者やスポーツ選手、俳優などさまざまなジャンルの人材を輩出している。今回、シェアサイクル事業という異色のベンチャー企業でCEOを務める卒業生が母校を訪問し、飯田雅章校長と語り合った。生徒の個性を大事にし、育て、伸ばす同校の特色ある校風が2人の会話に垣間見えた。

生徒の興味関心を妨げない校風

卒業生の中島幹彰さん(左)と飯田雅章校長(125周年事業で建て替えた講堂で)
卒業生の中島幹彰さん(左)と飯田雅章校長(125周年事業で建て替えた講堂で)

 約20年ぶりに母校を訪れた中島幹彰さんは、シェアサイクル事業及びシェアサイクル支援事業を行っている企業「コギコギ」(事務所:東京)のCEOを務めている。小学校から12年間暁星に通い、早稲田大学理工学部に進学。卒業後は証券会社やコンサルティング会社などでの勤務を経て、2013年に「コギコギ」設立に参画し、翌年から現職。迎える飯田雅章校長も、同じく小学校から高校まで暁星育ち。1977年に上智大学文学部フランス文学科に進み、大学院を修了した後、女子高教諭、大学教授を経て2016年から校長を務めている。

 飯田雅章校長(以下、校長):一般に暁星には、「お坊ちゃん学校」という印象があるようです。中島さんもそう感じていましたか。

 中島幹彰さん(以下、中島):実はそうでもないんです。礼儀の教育がしっかりしているので外部からはそうした印象になるのかもしれませんが、僕から見れば「どんな(やつ)もいる学校」でした。

 校長:個性の強い生徒が多いのは、私の頃から変わりません。今の言葉でいう「オタク」も多かった。生徒の興味関心を妨げない校風が昔からあるように思います。

 中島:クラスメートの一人が自由研究で、日本にどんな名字が多いかを綿密に調べ、外部のコンテストで賞を取ったことがありました。多い順にランキングを付けて、こちらが名字を言うと即座に順位を答えるんです。マニアですよね。

 校長:それはすごい。マニアと言えば、卒業生には俳優で歌舞伎役者の香川照之さんがいて、最近は昆虫マニアの一面もよく知られています。香川さんは実はボクシングもプロ級の腕前で、試合の解説をすることもありますね。こうした一芸、二芸に秀でた生徒は今もたくさんいると思います。

 中島:僕も好きなことにいろいろ取り組ませてもらいました。中学前半では将棋に熱中し、部員でもないのに勝手に将棋部で部員と指していました。美術部にも勝手に行って、土をこねて何か作ったりして。顧問の先生も適当に相手をしてくれました。

 校長:部活は音楽系に所属していたとか。

 中島:中2から、クラシック系の「室内楽研究部」でピアノとフルートをやっていました。中3から高1にかけては、帰宅してから8時間くらい練習していましたね。こんなふうに没頭できたのも、自由にやらせてくれる校風のおかげだったのかな。あまり宿題も出ませんでしたし。

 校長:私は小学校でサッカー、中学でフェンシングをやったんですが、けがをしてしまい、高校からはジャズ系の「音楽班」に所属してサクソフォンをやりました。

 中島:部活自体がマニアックなものが多いですよね。

 校長:鉄道研究会はもちろん、パソコンを自作するコンピューター部とか。科学系の部は物理・化学・生物・地学と四つそろっています。音楽系ももう一つ合唱部があるし、珍しいところではチェス部や競技かるた部とかも。皆、好きなようにやりたいことをやっています。

 中島:そんな生徒たちが世の中に出ると……。

生徒の個性を大事にし、育て、伸ばす校風について話す飯田校長
生徒の個性を大事にし、育て、伸ばす校風について話す飯田校長

 校長:いろんなジャンルで頭角を現しています。歌舞伎役者の卒業生が多いのは知られていますが、鉄道写真家の中井精也さんもそうですし、私の「音楽班」の1年上の先輩がアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の音楽を担当した鷺巣詩郎さん。同期には甲冑(かっちゅう)を作る職人なんて人もいますよ。

 中島:自分の個性を丸ごと受け入れられた経験が、今も支えになっている面はありますね。僕はもともと自己主張が強く、同調圧力や暗黙のルールなど気にしない性格でした。母親は「こんなことで無事、卒業できるのか」と心配だったようです。僕自身、学校に居場所がなかったら卒業していなかったかも、と思います。

卒業後に先生を訪ねて進路相談

シェアサイクル事業のベンチャー企業でCEOを務める中島さん
シェアサイクル事業のベンチャー企業でCEOを務める中島さん

 校長:他に、学校時代の思い出はありますか。

 中島:いい生徒だったとは言えませんね。数学は割と得意でしたが、授業を真面目に聞く方ではなかったですね。隠れて本を読んだり。

 校長:どんな本を。

 中島:例えば「ジュラシック・パーク」の原作小説です。DNAや非線形方程式なんかの話が出てくるのが面白かったですね。でも、授業の問題も前もって解いておき、当てられたら答えていた。相当、マイペースな生徒でした。フランス語や体育は先生が厳しかったこともあり、割と真面目に聞いていましたね。でも、先生方から勉強を強制される感じはありませんでした。

 校長:懐が広い先生が多いし、生徒と先生の距離がとても近い。やんちゃな生徒はもちろん怒られるけれど、それで関係が深まったりね。私立なので教員の異動が少ないこともあり、卒業してからも度々生徒が訪ねてきて、教員と話をしたりしています。

 中島:相当厳しい先生もいましたが、なぜか親しみを感じました。思えば、先生方も多様でした。怒るとすごく怖い強面(こわもて)の先生がいる一方、すごく情熱的な授業をする先生とか。古文の先生は、1月になると教科書をやらずに小倉百人一首の大会を始めるんですよ。その時期、学校全体がすごく盛り上がる。それから現代国語の先生は、一見ぼーっとしたような、達観したような人でした。

 校長:東大医学部出身で国語を担当しているという、変わり種の先生ですね。

 中島:そう。その先生に、進路の相談に乗っていただいたんです。暁星は医学部に進む生徒が多く、友達と話す時も医学部の話題が多かったので、なんとなく自分も……という気分がありました。早稲田の理工に受かって進学はしたものの迷いが抜けず、次の年に医学部を受け直そうかと悩んでいました。

 その冬、先生が自宅で餅つきをやるというので遊びに行き、なんとなく相談したところ、おっしゃったのが「どんな道に進んでも、後々考えれば『これで良かった』と思えるものだよ」と。それでフッと気が楽になり、医学部にこだわるのはやめました。

「書く」授業とキリスト教教育が培う力

「地の塩、世の光」と書かれた額
「地の塩、世の光」と書かれた額

 中島:暁星の教育で今、一番ありがたいと思っているのが、「自分の考えを書かせる」授業です。国語はもちろん歴史や理科なども、とにかく書く。小学校の頃から小論文に取り組んでいるようなものです。

 校長:宗教の時間でも聖書の一節を読ませて「自分の考えを書きなさい」という授業をやっています。

 中島:おかげで「書く」ことにストレスを感じません。書くことで自分の考えを整理できる面もあり、それが今のベースになっています。会社のプレスリリースも新聞原稿も、商品やサービスのポイントも、人に任せず自分で書いています。

 校長:卒業生の皆さんは暁星を後々まで懐かしく思ってくださるようで、長く交流が続いています。毎年の成人の日には、学年の7~8割の卒業生が恩師を訪ねてきて、聖堂でミサやパーティーを行っています。「仲間を大切に」「人に対して思いやりを」という隣人愛の精神が皆に根付いていると感じますよ。

 中島:キリスト教教育も、社会に出てから支えになっています。僕のようなスタートアップを仕事とする人間は、既存の枠を壊すのがなりわいで、行き過ぎて問題視されるケースもありますが、暁星の教育のおかげで「だましてはいけない」など、人として守るべきルールの基準が自分の中にできました。

 「暁星出身」のブランド力も感じますね。役所や企業の人と少々激しいやり取りをした後に「まあ、暁星出身だから心配していませんが」と冗談めかして言われたりします。基本的に安心感があるようです。

 校長:「地の塩、世の光」という言葉があります。生徒全員が学ぶ聖句の一つで、キリスト教の社会貢献の精神を象徴する言葉ですが、卒業生は「世の中のため」という意識を持って社会に出ていくので、自分が目立とうとして頭角を現すのではなく、懸命にやった結果、目立っていたという人が多いのかもしれませんね。

 20歳ほど離れた2人だが、卒業生として暁星の校風について語るとき、世代の垣根を越えてしきりに共感し合っている様子だった。特色ある校風をともにして築かれる絆や友愛の心は、生徒たちの将来にとって大きな財産だ。

 (文:上田大朗 写真:中学受験サポート)

 暁星中学・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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507416 0 暁星中学・高等学校 2019/03/27 05:21:00 2019/03/27 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/03/20190325-OYT8I50039-T.jpg?type=thumbnail

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