自らの使命を考えさせる二つの海外交流…栄光学園

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 イエズス会系のキリスト教校である栄光学園中学高等学校(神奈川県鎌倉市)は、海外のイエズス会系の学校と連携してグローバルリーダーを育てる国際教育を行っている。特にフィリピンの学校との短期交換留学とアメリカのボストンカレッジで行われる夏季研修プログラムへの参加は、生徒たちが自分を見つめ、世界への視野を広げるうえで重要な気付きの場となっているという。

交換留学先のフィリピンで「幸せとは何か」を考える

フィリピンの人々との交流を通して視野を広げる生徒たち
フィリピンの人々との交流を通して視野を広げる生徒たち

 栄光学園はイエズス会系の学校で、世界のイエズス会の学校との交流を通して、グローバルリーダーを育てる国際教育を行っている。

 フィリピン・セブ島のイエズス会学校「セークリッド・ハート・スクール(以下、SHS)」との交流は1996年から始まり、昨年で24回目となった。例年、5月にSHSの生徒たち10人が来日し、栄光学園の生徒の家に2週間ホームステイしながら学校に通い、8月には栄光学園の生徒10人がSHSの生徒の家に2週間ホームステイに行くという、交換留学が続いている。

 西田陽太君(高2)は、「ホストブラザーのニール君とは、ディズニーランドやサムライミュージアムなどへ遊びに行って、友情が深まりました」と話す。「8月にニール君の家にホームステイし、再会しました。フィリピンでは上流階級の家庭でしたが、それでも水が出なくて、おけで水をすくって体を洗ったり、トイレを流したりします。町では、水を運んでいる子供たちを見かけ、家に水道が通っていないのも普通と聞き、驚きました」

 廣田樹音(たつと)君(高1)は、「文化祭の栄光祭で、ホストブラザーのノア君と一緒に、フィリピンの食などの文化を紹介し、伝統のバンブーダンスを披露したことが印象に残っています」と話す。力を合わせて頑張ったことで友情を深め、お別れ会では涙を流したが、「再会したときには、ハグして喜び合いました」と言う。

 栄光学園の2人がともに「強く考えさせられた」と話すのが、ホームステイ期間中に訪れた一般市民のコミュニティーの有りようだ。そのコミュニティーは人々が貧困から抜け出せるよう、支援団体によって建設された家で形成されており、2人も家を建設する作業を手伝ってコミュニティーの人たちと交流した。

 西田君は、「ホストファミリーの裕福な家庭と違い、みんな貧しいけれど、とても明るくハッピーに暮らしていました。小さい子たちがすぐに集まってきて一緒に遊び、夜の集いでは大合唱で僕たちを迎えてくれました。とても楽しかったけれど、素直に喜べないところもありました」と振り返る。「貧富の差を目の当たりにして、僕が勉強したくないなんて、怠けている場合じゃないと思いました」

 廣田君も、「とても衝撃的でした。日本に比べたらすごく貧しいのに、日本の子や、フィリピンの上流家庭の子よりも、ずっと幸せそうなんです。家族や近所の人など、人と人のつながりが深いからではないかと思いました。そして、自分が日本に生まれ、きれいな校舎で勉強できる環境にいることが、どれほど恵まれていることか痛感しました」と語る。

 引率した林真理子教諭も、コミュニティーでの夜の集いを「それはすてきな空間でした」と振り返る。「大歓迎を受け、自分が受け入れられることが、こんなに幸せなんだと生徒たちは感じたのです。幸せとは何だろうと考え、そして、幸せをまた別の人に勇気を持って差し伸べようと生徒たちは考えていくのです」

 生徒たちは学校行事のスポーツ大会などで、かき氷を販売するチャリティー活動をして、売上金をこのコミュニティーの家の建築費用として寄付しているそうだ。

英語のディスカッションで「自分とは何か」を見つめる

ボストンカレッジでの夏季研修
ボストンカレッジでの夏季研修

 もう一つのプログラムは、アメリカ・マサチューセッツ州にあるイエズス会の大学、ボストンカレッジで行われる夏季研修だ。栄光学園から毎年30人の生徒が参加し、全米から集まったアメリカ人の高校生、メンター役の大学生、神父、教授と英語でディスカッションをして、イエズス会の精神やリーダーシップを考える。

 プログラムは5日間で、「無償の愛」「自分とは何か」「人生の決断をどう下すか」「他者のために働くこととは」「人生において卓越性を求め続ける」などのテーマで話し合う。さらに、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学を訪れ、現地で学ぶ栄光学園の卒業生との交流も図っているという。

 このプログラムに参加した渡辺丈君(高2)と中村嘉伸(よしのぶ)君(高1)の話を聞いた。

 渡辺君は、「『自分とは何か』、日本語でも普段話さないテーマなのに、英語で考えてディスカッションするのは大変でした。一番心に残ったのが、『Don‘t make secondary primary(思い込みに縛られるな)』という神父さんの言葉でした」と振り返る。進路についても、自分のやりたいことにとらわれ過ぎず、もっと広い分野から、自分がやるべきことを見つけていけばいいと考えるようになったという。

 「外国に行きたい、アメリカ人と話をしてみたい、という軽い気持ちで参加したのですが、キリスト教の価値観に触れて、将来の自分の選択に役に立つのではないかと感じています。そして、それは、本校の精神でもある『MEN FOR OTHERS, WITH OTHERS(他者のために、他者とともに生きる人)』にも通じていると感じています」

 中村君は、「語学研修ではなく、一生徒としてアメリカ人の生徒と一緒に授業を受けられることに興味を持って参加しました」と話す。アメリカ人の生徒は積極的なので、グループディスカッションに入っていくのは大変だったが、雑談などで徐々に打ち解けて、ディスカッションに入っていけるようになったそうだ。

 神父の話を聞き、ディスカッションなどを通して「自分がたどってきた道、自分自身について知り、考えることが、将来自分が何をしたいかという問題の答えになると感じました」と話す。「今回の経験を生かして、将来、仕事なのかボランティアなのか、今は分かりませんが、人のために貢献できることをやりたいと思っています。やはり、栄光の『MEN FOR OTHERS……』の精神が自分の中にあるのだと感じます」

 引率した葛西一仁教諭は、「言語化して深く内省することで、自分の価値観が揺らいだり、壊されたりすることもあるでしょう。自分とは何か、すぐに見つかるものではありませんが、それが立脚するキリスト教的価値観を見いだしていく、意義のあるプログラムです」と語る。

二つのプログラムが生徒たちのあり方を変える

海外研修で成長していく生徒の様子を語る林教諭(左)と葛西教諭
海外研修で成長していく生徒の様子を語る林教諭(左)と葛西教諭

 葛西教諭と林教諭は、この二つのプログラムを通して、生徒たちが変わっていく様子を目にしてきたという。

 林教諭は、「ほとんど声を聞いたことのなかったおとなしい生徒が、これらのプログラムに参加して、自分のカラを破り、文化祭などで自分から発信する生徒に変わっていくこともあります」と話す。「特にフィリピンでは世界を見る視野が広がって、自分は幸せなんだと感じて帰ってきます。自分が幸せでないと『MEN FOR OTHERS……』の精神も発揮できません。幸せを感じたからこそ、幸せをもっと世界の人々に感じてもらおうと、自分の使命を考えていくのです」

 葛西教諭も、「ボストン夏季研修では、英語で話すので、日本語よりも照れずに愛について語り合うことができます。そして、キリスト教的価値観に触れて、自分は受け入れられている、無条件に愛されている存在だと感じるのです。アメリカ人が自分のやりたいことを自らの使命としてつかみ取っていく姿を見て、自分も本当にやりたいことを、自分の使命にしようと、進路変更していく生徒もいます」と話す。

 二つのプログラムは、生徒たちにとって「MEN FOR OTHERS, WITH OTHERS」の精神について考え直すいい機会のようだ。自分の生き方が周囲の幸せにつながる、そんな使命をこれからじっくり探していけばいい。

 (文:小山美香 写真:中学受験サポート、一部写真提供:栄光学園中学高等学校)

 栄光学園中学高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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993976 0 栄光学園中学高等学校 2020/01/14 05:23:00 2020/01/14 05:23:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/01/20200110-OYT8I50021-T.jpg?type=thumbnail

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