【特集】「得意」を伸ばす伝統の教育に大学の「知」を加えて…日本学園

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 日本学園中学校・高等学校(東京都世田谷区)は昨年12月、明治大学と系列校化基本合意書を締結した。2026年度からは現在の男子校から共学校となり、校名も「明治大学付属世田谷中学校・高等学校」に変更される。系列校化に踏み切った背景や目的、これからの展望などについて、同校の卒業生でもある 水野(みずの)重均(しげまさ) 校長に聞いた。

10年以上に及ぶ高大連携の学びをさらに深める

明治大学和泉キャンパスを見学に訪れた生徒たち
明治大学和泉キャンパスを見学に訪れた生徒たち

 「今回、系列校化を図った大きな理由の一つは、昨今、中高の学び方が変わってきていることです」と水野校長は話す。「正解というものがあるのは学校だけで、社会に出れば一つの物事に対していくつもの答えがある。正解のない社会を生き抜くために、知識を詰め込むのではなく、自分で学び取るという教育に変わってきている。そうした時代に対応するためには、大学の『知』をどれだけ活用できるかがとても重要だと考えました」

 同校と明治大学の間には、すでに10年以上の連携の歴史がある。同校と同大和泉キャンパスは徒歩10分ほどの距離にあり、この立地を生かして相互の理解を深めようと、12年度から高大連携事業がスタート。同大教授による出張講義や、大学図書館、研究室を見学するキャンパスツアーなど、さまざまな高大連携プログラムが行われてきた。

 同大教授による出張講義は、年に1回、高校生の希望者を対象に行われている。高1では理系、高2では文系に関連した専門性の高いテーマについて学ぶ。知的好奇心を引き出し、大学やその先の将来に向けて学習のモチベーションを高めるのが目的だ。これまでに、「建築デザイン」「お金に関わる初歩的な話」「なぜ幽霊が怖いのか、不思議なことを信じてしまうのか、人間の感情や思考の本質に迫る」「メディアを通して伝達・構築されるファッション現象を通して現代社会の問いについて考える」などのテーマで開講されてきた。

 例えば、2019年に行われた総合数理学部の宮下芳明教授による「AI、スマートフォン、VRゲーム、3Dプリンターの先には何がある?」という講義では、今や身近になったさまざまなICT技術を切り口に、新しい技術を使うためには知識と視点が必要であることや、どのようなコンピューターを作れば人が幸せになれるかといったことを学んだという。

 「講義の中身はもちろんですが、より専門的な学びを通して大学ではどんな研究ができるのかを知り、こんなことをしてみたい、こんなことを学びたいという知的好奇心をくすぐることが一番大事だと思っています。系列校になることで、この高大連携の学びがより強化できると期待しています」

独自の「創発学」で本当に学びたいことを見つける

 こうした高大連携の歴史に加えて、両校の教育理念が合致していることも、系列校化実現の大きなカギとなったと水野校長は見ている。

 「『独立自治』を建学の精神とする明治大学は、個を強くすることを教育理念に掲げていて、その考え方がまさに本校とマッチしています。大学の系列校化というと、大学の方針や理念に合わせなければならないのではと思われがちですが、明治大学からは『これまでの日本学園の特色を生かしてほしい』と言われています。とてもありがたいことです。本校の理念をそのままに、さらに大学との連携によってどう伸ばしていくかが今後の課題です」

 同大に評価された日本学園の特色は、同校の創立者である杉浦 重剛(しげたけ) にさかのぼる「天才を創るよりも各人の天分を () かす」という教育方針にあるという。杉浦はこれを「人は得意な道で成長すればよい」という言葉で言い残している。

 同校が実践している独自の教育プログラム「創発学」は、この精神に基づいて水野校長が、情報科の教員だった時に同僚とともに開発し、03年にスタートさせたものだ。創発学の目的について水野校長は、「どの大学に行きたいかではなく、何を学びたいかを見つけることです」と強調する。

 創発学の「創」は、調査・研究・取材・まとめを通して育む「創造する力」、「発」はその成果を「発信する力」を意味する。この二つの力を身に付けるために、農業体験や林業体験などの「フィールドワーク」、体験をまとめ、発表する「プレゼンテーション」、さまざまな職業への取材を通して自分の将来を考える「キャリアエデュケーション」という三つのプログラムが用意されている。

「創発学」の一環で中学入学直後に行われる林業体験
「創発学」の一環で中学入学直後に行われる林業体験

 「フィールドワーク」では、中学入学直後に林業体験があり、夏休みに漁業体験、中2の夏休みには農業体験があり、その度に生徒は、体験を基とした「プレゼンテーション」を行う。

 「林業従事者の方に直接取材し、それらをまとめて新聞を作るのですが、その過程で自分たちが聞き足りなかったこと、不足していたことが分かります。すると、次の漁業体験や農業体験では不足がないように、どう取材すればいいか、どんな写真を撮ればいいか、事前にしっかり準備するようになります。こうした経験を繰り返し、積み重ねることによって、何のために学ぶのか、自分が何をしたいのか、そのためにどの大学に行けばいいかがクリアになるのです。中3の研究論文で恐竜について発表した生徒がいますが、彼は専門の先生がいる新潟大学に進学し、恐竜の研究をしています」

 「何をしたいか」を自覚することは、さらに大学以後の生き方にも影響を及ぼすという。「ある大手コンピューター会社に採用された卒業生は、面接で『コンピューターは便利だけれど、人を幸せにしません。私は人を幸せにするコンピューターを作りたい』と話したそうです。やりたいことを明確に持ち、そこに向かって進んでいく姿勢こそ、創発学の成果だと思います。系列校化によって、大学の選択肢が増え、さらに受験勉強に費やす時間を創発学の時間に活用できるようになればと考えています」

これからも変わらない「意欲を伸ばしていく学び」

「明治大学の系列校になることで、高大連携の学びがより強化できる」と話す水野校長
「明治大学の系列校になることで、高大連携の学びがより強化できる」と話す水野校長

 系列校化に対して、OBや保護者からも数多くの声が寄せられているそうだ。「共学になったらぜひ娘を入れたい」と歓迎する保護者もいる一方、心配の声もある。「一番多いのは、本校の理念を失わないでほしいという声ですね」と水野校長は語る。

 この「理念」について水野校長は、自らの在学中の思い出を振り返って説明した。「高校時代、先生に質問しにいくと、答えを教えてくれる代わりに『この本を読みなさい』と本を手渡されました。その時に本当に教えてもらったのは、自分で学び取ることの大切さでした。本校には、今もそういう教育が伝統的に受け継がれています」

 「『霧の中を行けば覚えざるに衣湿る』という言葉がありますが、机に向かってガリガリ勉強すれば力が付くのではなく、普段の学校生活の中でいろんなことをやっていて、気付いたら知らない間に力が付いていたというのが本当の学びだと思うんです。自分が成長していることを 俯瞰(ふかん) して見ることができれば、自信が付き、ぶれなくなります。本校には、いろんなことに興味を持ち、やってみようという気持ちや行動力のある人を受け入れ、伸ばす環境があります。大学と連携していく中で、これからも一層、一人一人の意欲を伸ばしていく学びができるようにしていきたい。伸び続ける人を育てたいですね」

 (文:石井りえ 写真:中学受験サポート 一部写真提供:日本学園中学校・高等学校)

 日本学園中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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2896101 0 日本学園中学校・高等学校 2022/04/06 05:01:00 2022/04/06 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/04/20220405-OYT8I50044-T.jpg?type=thumbnail

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