理学部の研究室体験で理科の面白さに目覚める…学習院

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 学習院中等科・高等科(東京都豊島区)は毎年、学習院大学理学部の「夏休み研究室体験」という特別講座に参加している。この「研究室体験」をきっかけに理工学系への進学を考える生徒も多いといい、生徒たちが自然科学への興味を深める大切な場となっている。理学部物理学科の渡邉匡人教授が指導するモデルロケットの実験を取材し、中等科の理科の土屋良太教諭に、「研究室体験」が生徒に与える影響などを聞いた。

自分たちで組み立てたモデルロケットを空に

モデルロケットの製作に挑戦する生徒たち
モデルロケットの製作に挑戦する生徒たち

 「夏休み研究室体験」は、学習院の一貫教育の理念に基づき、大学理学部の教員・学生らが初等科生、中・高等科生を対象に、毎年開催している体験授業だ。今年は、理学部の化学科4研究室と物理学科2研究室、生命科学科2研究室及び、実験装置の設計・製作などを行う理学部の工作工場で開催され、中・高校生28人が参加した。

 この「研究室体験」は、中等科と高等科の全学年の生徒が受講でき、中等科からは毎年20~30人の生徒が応募する。各研究室の定員は、実験装置が参加者に十分行き届くように、5人から多くて15人ほどの少人数だが、空きがあれば、複数の研究室を選ぶこともできる。

 取材に訪れた8月5日、物理学科の渡邉教授の研究室では「ロケットを飛ばそう」というテーマで、モデルロケットの発射実験が行われた。高さ30センチほどのモデルロケットを校庭から飛ばし、パラシュートを開かせて回収するという内容だ。この体験授業には中等科から9人、高等科から1人が参加した。

 この日の授業は、モデルロケットの組み立てから始まった。使用したのはアメリカのモデルロケット製造・販売会社「Estes社」製のモデルロケットの製作セット。製作に必要な部品や装置がすべてそろっており、アメリカの学校教育でも採用されているという。

 授業の初めに生徒たちはペアを作り、渡邉教授から製作上の注意を聞いた後、早速全員に一つずつ配られた製作セットの組み立てに入った。初めは、緊張気味で静かだった教室も、だんだん質問や話し合いの声が満ちていく。「この部品はどうやって付けるの」などと周りに尋ねる生徒もいれば、早くもロケットを完成させて他のペアに見せている生徒もいる。

校庭で次々と打ち上げられるロケット
校庭で次々と打ち上げられるロケット

 生徒全員のロケットが完成すると、いよいよ発射実験だ。青空の広がる同校の校庭に出ると、発射台にモデルロケットをセットする。みんな打ち上げの直前、「飛ばします。3、2、1」と周りに声をかけ、燃料に点火するが、最初はどのロケットもうまく飛ばなかった。

 そこで渡邉教授の指導を受けて問題点の洗い出しと修正を行うと、今度は次々と打ち上げに成功し始めた。「何でそんなに高く飛ぶの」と他のペアに質問している生徒もいれば、失敗続きのペアを「頑張れ」と励ます生徒もおり、打ち上げ会場は終始生徒たちの声でにぎやかだった。

 参加した高1生は、ロケットの点火から打ち上がるまでの流れをスマホで動画撮影した。実験後は、みんなでその動画を見て、この日の実験を振り返った。

 中3の清水友太君は、中1の時も同じロケット実験の体験授業に参加したという。それでも「簡単には飛ばないですね」と感想を話す。「ケーブルの接続に問題があるのか、電源が切れているのか、火薬の量に問題があるのか、いろいろな原因を考えては直してみて、何とか飛ばすことができました。打ち上げの瞬間を見たときは、本当にうれしかったです」

 中1の山口修平君は、小学生のとき、理化学研究所のペットボトルロケットを飛ばす実験イベントに参加したことがある。それをきっかけにロケットが好きになり、今回の体験授業に挑戦した。「ペットボトルのロケットとは打ち上げの迫力が違い、夢中になりました」と声を弾ませる。この日、山口君のロケットはパラシュートがうまく開かなかったという。来年もこの体験授業に参加し、完全な打ち上げを成功させたいそうだ。

素朴な疑問を大切にして理科の学びにつなげる

生徒たちに「素朴な疑問を持ってほしい」と話す学習院大学の渡邉教授
生徒たちに「素朴な疑問を持ってほしい」と話す学習院大学の渡邉教授

 渡邉教授は長年、鉄などの金属の有効利用につながる結晶物理工学の研究を行っている。昨年3月には、教授が携わる研究グループが、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」を使い、微小重力下で浮かせた金属を熱して、融溶状態での性質を調べる実験に成功したそうだ。

 研究内容が宇宙と関わりが深いだけに、渡邉教授の指導する「研究室体験」にはロケットや宇宙開発に興味のある中高生が数多く参加する。約10年前から「研究室体験」を指導する中で、アメリカの「スペースX」社のロケット打ち上げについて質問する生徒や、種子島でロケットの打ち上げを見たことがある生徒もいたという。今回参加した高等科の生徒は、茨城県つくば市にある筑波宇宙センターを見学したそうだ。

 そうした生徒たちについて渡邉教授は「まず『ロケットがなぜ上がるのか』など、素朴な疑問を持ってほしい」と語る。疑問への答えを知りたいという思いが、理科の学びへと自然に導いていくからだ。

 「研究室体験」をきっかけに理工学系の大学への進学を考える生徒も多いという。なかには学習院大学の物理学科に進学し、「研究室体験」と同じ教授の研究室を選んだ卒業生もいたそうだ。

大学の研究室の実験は、自然科学の面白さに気付く場

中高大連携の理科教育を追求している同校の土屋良太教諭
中高大連携の理科教育を追求している同校の土屋良太教諭

 この「夏休み研究室体験」は子供の理科離れが懸念されていた20年ほど前に始まった。その効果もあってか現在は、「中等科と高等科の両方において潜在的に理系進学志望者が多いという感触を得ています」と中等科の理科を担当する土屋教諭は語る。「大学の研究室で行われる実験は、私たちの実生活に関係の深い、生きた自然科学を学べる場でもあります。まず、多くの生徒に体験してもらい、理科を身近に感じて、好奇心を持ってほしいです」

 土屋教諭によると、この「研究室体験」は、生徒たちを自然科学の面白さに気付かせるきっかけとなるだけでなく、理学部への進学を不安に思う生徒を勇気づける効果もあるという。

 「せっかく理科に興味を持っても、進級するにつれて勉強が難しいと感じたり、大学の理学部は難度が高いという先入観を持ったりして、進学の選択肢から外してしまう生徒がいます。しかし、この研究室体験に参加することで理科の面白さに気付き、再び学習意欲を持つ生徒が多くいます」

 渡邉教授によると、宇宙開発や宇宙ビジネスは、今や「スペースX」社を始めとするアメリカの民間企業に主導権を握られている。日本は乗り遅れているといい、「今の生徒が30代になる頃が、日本が追いつけるかどうかの重要な時期だと思います」と予想する。

 この「夏休み研究室体験」は、まだ大学の志望校や学部選びにとらわれない、中1生がもっとも多く参加しているそうだ。ぜひのびのびと理科への好奇心を広げ、将来を担う人材に育ってほしいものだ。

 (文・写真:三井綾子)

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888709 0 学習院中等科 2019/11/13 05:21:00 2019/11/13 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191108-OYT8I50046-T.jpg?type=thumbnail

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