付属校化と共学化から4年目の躍進…東洋大京北

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 東洋大学京北中学高等学校(東京都文京区)は、東洋大学の付属共学校となって4年目を迎えた。前身の旧制中学の創立から119年。その建学の精神に立ち返って「哲学教育」に力を入れ、グローバル社会を生き抜く「本当の教養を備えた国際人」の育成をめざしている。同校の特色ある学びを主導する石坂康倫校長に、現状と展望を聞いた。

建学の精神「哲学」で多角的な視点養う

哲学を基礎とした学びを主導する石坂康倫校長
哲学を基礎とした学びを主導する石坂康倫校長

 同校の前身となる旧制の京北尋常中学校を創設したのは、明治時代の哲学者で教育家の井上円了(えんりょう)だ。井上は1887年、誰もが哲学を学べる場として、後の東洋大学となる哲学館を開設し、その12年後の1899年に同中を開いた。戦前からこれまでに俳人の飯田蛇笏、作家の武田泰淳、コメディアンの植木等ら多彩な卒業生を輩出している。

 同中は戦後、東洋大学と経営母体を分かって京北中学校・高等学校となり、都内有数の伝統校として歴史を刻んできたが、2015年、建学時に立ち返るように東洋大学の付属校となり、現在の東洋大学京北中学高等学校として再出発した。

 1世紀以上続いた男子校から共学に変わり、東京・白山の小石川植物園近くの住宅地に新校舎を建設。中高一貫校として、新たな挑戦を始めている。

 同校が建学の精神として土台に据えているのは、創設者・井上円了が唱えた「諸学の基礎は哲学にあり」という教えだ。都立日比谷高校などの校長を歴任し、学校改革の手腕を買われ、旧京北中学高等学校時代の2012年に赴任した石坂校長は、その言葉に共感したという。

 「人間はただ生きていればいいというものではありません。より良く生きることが大事なのです」と石坂校長は話す。また、「哲学とは考えるトレーニング」とし、世間の常識や自分の価値観を問い直し、多角的な視点や論理的思考力を養うものと考えている。

 現在の大学入試センター試験に代わり、2020年から始まる「大学入学共通テスト」は、国語に記述式を取り入れるなど、より思考力を問う内容になる。哲学を基礎とした学びはその対策にもなるものと期待している。

 同校は「本当の教養を身に付けた国際人の育成」を教育目標に掲げている。「哲学教育(生き方教育)」は、この目標を実現するために「国際教育」「キャリア教育」と並んで重視される3本の柱の一つだ。

 同校は、中学の3年間を通して「哲学(道徳)」を必修科目としている。教師が一方的に授業を行うのではなく、多様なテーマについて教室が輪になって語り合う。高校では1年の必修科目「倫理」のほか、2年になると「名著精読」の授業が加わる。この授業では、読書感想ノートを生徒同士で交換して対話するなどし、自己を見つめ直し、思索を深めるという。

「哲学ゼミ」では「こうのとりのゆりかご」を訪れて話を聞いた
「哲学ゼミ」では「こうのとりのゆりかご」を訪れて話を聞いた

 教室を飛び出し、現実社会の中で考える「哲学ゼミ」も希望制で行っている。昨年は、親が育てられない子を匿名で託せる熊本市の「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を訪れ、運営する病院の医師や看護師に話を聞いた。また、人間の罪と罰などについて考察する「刑事裁判傍聴学習会」も開いている。これらの学習成果は毎年催されている高校1、2年全員参加の「哲学エッセーコンテスト」で競われる。

 石坂校長は「今の中高生は人にどう思われるかをすごく気にします。人前で本音を話すことも苦手です。普段の会話でもすぐちゃかし、なかなか突き詰めて考えることができない」と指摘する。しかし、哲学の授業には「絶対に笑ったりちゃかしたりしてはいけない」というルールがある。「生徒たちは思ったことを発言でき、自分と違った意見を聞けることに大きな価値を感じているようです」

異文化理解と語学力を培う「国際教育」

 二つ目の柱「国際教育」の面では、「本当の教養を身に付けた国際人の育成」を目指し、英語などの語学だけでなく、異文化を尊重する国際感覚も培う。

 「これから日本の人口はどんどん減っていき、50年後には1億人を切るとも言われています。不足する労働力をまかなうために多くの外国人が入って来て、日本にいても国際人であることが求められます」と石坂校長は話す。

 今後、ますます進むと予想されるグローバル化に対応し、異文化を理解したり、相手の立場で考えたりする習慣を身に付けられるように、同校は「国際教育」の多彩なプログラムを用意している。

中1、2年と高1年を対象に、英語に親しむ「イングリッシュキャンプ」
中1、2年と高1年を対象に、英語に親しむ「イングリッシュキャンプ」

 中学1、2年と高校1年を対象に、英語に親しむ「イングリッシュキャンプ」を毎年開催している。中学3年ではカナダへ修学旅行し、ホームステイも体験する。また、東洋大学付属校のメリットを生かし、同大の外国人留学生を招いてのイベント「Let‘s Chat in English!」も実施している。中高の生徒全員が参加して、1年間の学習成果を見せる英語スピーチコンテストも開かれる。

 また、ネイティブの講師らと自由に会話を楽しめる「English Conversation Room」を昼休みや放課後に開放している。ここには生徒がいつでも英語を学習できるように、多読用の英語の本もレベル別にそろえてある。

 さらに、ドイツ語、フランス語、スペイン語に、今後さらに必要性が高まるとみられる中国語と韓国語を加えた5か国語から一つを選ぶ「第2外国語」の授業も、高2の希望者を対象に行っている。

大学進学対策で偏差値も志望者数もアップ

 三つ目の柱「キャリア教育」としては、職業観を身に付け、自らの未来を切り開く力を養うことを目標としている。そのために総合大学である東洋大の各学部を見学し、授業を体験するプログラムも用意している。

 ただ、目前のステップとして重視しているのはやはり大学進学対策。国公立大や難関私立大への進学にも対応できるよう、講習などに力を入れている。

東洋大学での授業体験プログラム
東洋大学での授業体験プログラム

 この夏休みには、45分間授業が5日間で1クールとなる計118の講座を開設した。石坂校長は「毎日のように学校に来る生徒もいました。無料ですし、本校なら予備校に通う必要はありません」と胸を張る。

 意欲的な取り組みの成果は着実に出ている。石坂校長が赴任した2012年当時の旧京北中学校に比べて偏差値は15ほど上がった。東洋大学付属となり、共学化して4年目の今年度は、中学・高校とも志望者が劇的に増加した。9月に行われた首都圏中学模試センターの模試では昨年度の同時期と比べて男子129人増と東京の共学校でトップ、女子では90人増と2位であり、人気のほどがうかがえる。また、埼玉県の中学生が対象の模試「北辰テスト」でも、東洋大学京北高校を志望校に挙げた受験生は昨年の八十数人から今年は151人とほぼ倍増した。

 最近、学校説明会に訪れる保護者らから、「来るのは3回目ですが、毎回内容が良くなっています」などと言われるそうだ。「話す内容は基本的に同じなので、生徒や教員の対応や雰囲気が良くなっているのでしょう」と石坂校長。

 その好転をもたらした一つのきっかけは、同校独自の生徒たちによる「授業評価」システムの導入、と石坂校長は見る。各教科の授業についてペースや分かりやすさを生徒が評価するもので、授業の質向上だけでなく、教師がより真剣に生徒に向き合い、生徒もやる気になる好循環が生まれたという。

 2年後の2020年度には、再出発後、中高一貫校としての1期生が卒業を迎える。進学実績にも大きな成果が表れ始めるはずだ。石坂校長は「付属校ですが東洋大学への進学ばかりを考える必要はありません。10年後には誰もが認める進学校になると思います」と力強く話した。

 (文・写真:佐々木志野 一部写真:東洋大学京北中学高等学校提供)

 東洋大学京北中学高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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54608 0 東洋大学京北中学高等学校 2018/12/20 05:20:00 2018/12/20 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181213-OYT8I50047-T.jpg?type=thumbnail

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