開講50年、生徒の可能性を広げる中3選択授業…青山学院

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 青山学院中等部(東京都渋谷区)は、中3全員を対象に週2時間の選択授業を行っている。この授業は50年の歴史を持ち、今年度は28講座が用意された。生徒たちは自分の興味に合わせて受講することを通して、自らの才能や、将来の可能性を探るという。人気のある体育「ラクロス」などの授業を取材し、その狙いや成果を聞いた。

教師の専門領域を生かし、28講座を用意

選択授業の狙いを話す広報委員長の筒井先生
選択授業の狙いを話す広報委員長の筒井先生

 青山学院中等部の中3選択授業は1971年に始まり、長い歴史を持っている。「生徒に与えられた才能は、それぞれ異なっています。それを探し当て、将来に向けてより可能性を伸ばすために、必修科目の内容を精選して始めました」と、広報委員長の筒井(つつい)祥之(よしゆき)先生は話す。

 当初は15、16講座程度だったが、生徒の興味の多様化に合わせて拡大し、近年は25講座前後に増えた。今年度は28講座が開講したという。「各教科の担当教師が、自分の専門領域を生かした講座を企画し、生徒を募集します。例えば、国語の『ジブリと文学』は、スタジオジブリのアニメ映画と原作の読解などを結び付け、生徒の関心を引き付けています。また、人工知能とプログラミングの基礎を学ぶ『AI・プログラミング入門』など、時代に即したテーマの講座があるところも特色です」

 講座の開催は週に2時間で、1講座の参加人数は10~30人程度だ。クラス別の開催ではなく、生徒それぞれが自分の興味に合わせて参加するため、別クラスの生徒たちとも交流できる場となっている。クラブ活動とも似ているが、教科として評価が行われるという点に違いがある。「クラブ活動は集団としての活動を学ぶ場ですが、選択授業ではそれぞれの分野を深く学び、究める場としてほしいと考えています」

ラクロスの授業では大学生との練習試合も

日本代表選手だった経験を生かしてラクロスを指導する体育の河内先生
日本代表選手だった経験を生かしてラクロスを指導する体育の河内先生

 取材に訪れた7月15日、体育の河内(かわち)由気(ゆき)先生による、ラクロスの選択授業を見てきた。河内先生は慶応大学と社会人クラブでラクロス選手として活躍し、2009年には女子ラクロス・ワールドカップに日本代表として出場した経験を持つ。現在は青山学院中等部で体育を教えると同時に、青山学院大学女子ラクロス部のヘッドコーチも務めている。「ラクロスは、日本では比較的最近知られるようになった競技です。新しいスポーツに触れることで、生徒たちに自分の可能性に気付いてほしいと思っています」と河内先生は話す。

 授業は「アリーナ」と呼ばれる中等部専用の体育館で行われ、1時間目は20人、2時間目は30人の生徒が、男女混合で参加した。

 ラクロスでは、「クロス」と呼ばれる網の付いたスティックを使い、素早くボールをパスしながら敵陣ゴールへのシュートを狙う。生徒たちはこの日、パスの練習をしていた。クロスを使ってボールを投げ合うのは見た目以上に技術が必要だという。生徒たちは遠投、クロスの中にボールを入れたまま歩く「キープ」といった基礎練習を繰り返していた。

ラクロスの練習に励む生徒たち
ラクロスの練習に励む生徒たち

 「ボールは山型に投げるのでなく、床と平行に投げて」と、河内先生は自らクロスを取って手本を見せる。生徒たちも互いに、「クロスはこう持つとやりやすいよね」などと、確認しながら練習を続けていた。

 「週1回の授業でも、1年たつ頃には試合ができるくらいまでに成長します。一昨年は、青山学院大学ラクロス部の学生を招いて練習試合を開催しました。中学生でも運動能力が高いと素早い動きをすることができ、大学生相手でもいい勝負になっていました」と河内先生は話す。

 このラクロスの選択授業で興味を深め、青山学院高等部に進学してから自分たちでラクロスの練習を始め、大学のラクロス部の練習に参加した生徒もいるそうだ。また、保護者の世代にも個人でラクロスを経験した人がいるため、「スポーツや生徒たちについて保護者の方々と話す、いい接点になっています」と、河内先生は語る。

本物に触れる体験が将来の進路選択につながる

入り口ホールに展示されている生徒たちのテンペラ画作品
入り口ホールに展示されている生徒たちのテンペラ画作品

 広報委員長の筒井先生も、美術教師として「テンペラと油彩」の選択授業を開講している。この講座は約20年続く人気の選択授業だ。

 筒井先生によると、テンペラは、卵黄と顔料を混ぜて絵の具とする画法で、15世紀に油絵の技法が確立される前は、ヨーロッパで広く用いられていたという。「この講座では一つの作品を、1年かけてコツコツと描き上げていきます。絵画の技法を知ると同時に、物事を忍耐強く積み重ねながら成し遂げることを学びます」と筒井先生は話す。

 ラファエロ、フェルメール、ゴッホなどヨーロッパ絵画の名作を模写した生徒たちの作品が、中等部の入り口ホールで展示されていた。絵画の技法と共に、その歴史を学ぶよい機会ともなっているようだった。

 選択授業で得られた経験は、将来の進路選択にも影響している。例えば、中等部の選択授業でオルガンの楽しさに目覚め、東京芸術大学に進学してドイツへ留学し、現在は国際的なオルガン奏者として活躍している卒業生がいる。そのほか、数学や理科の選択授業によって大学の理工学部を志すようになった生徒や、本格的な絵を描いた経験を通して美術大学に進学した生徒もいるという。

 「通り一遍の授業ではなく、各分野の本物に触れる体験を重視しているため、生徒たちはその中にやりがいや生きがいを見いだしていきます。また、与えられた勉強ではなく、自分で選んで参加しているので、皆、意欲を持ってのびのびと取り組んでいます」と、筒井先生は話した。これからも、生徒たちの可能性を引き出す多種多様な講座を開いていきたいそうだ。

 (文:足立恵子 写真:中学受験サポート)

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1404294 0 青山学院中等部・高等部 2020/08/17 05:21:00 2020/08/17 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200812-OYT8I50067-T.jpg?type=thumbnail

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