【特集】新設メディアセンターが課題解決型学習の拠点に…同志社香里
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同志社香里中学校・高等学校(大阪府寝屋川市)で4月10日、新たな学びの場としてメディアセンター「
人と人、人と知識・情報をつなぐ「知の拠点」

同校で2018年に建設計画が始まったメディアセンター「繋真館」が、今春完成し、4月10日から供用が始まる。建設委員長を務めた古川佳世教諭は、「従来の図書館は、何らかの目的を持った生徒だけが訪れる場所となっていました。約7万冊もの蔵書がある図書館をもっと気軽に立ち寄れる場所にしたいと考えました。同時に、ICTを活用した幅広く深い学びの場をつくることを計画しました」とセンター建設の意図を説明する。
「繋真館」の名称は、人と人、人と知識・情報を「

このセンターは1階建てで総面積は約877m2。体育館、香真館(礼拝堂)、中学・高校校舎などに囲まれた中庭に建設されている。外観は、もともと中庭にあった木々を半筒状のガラス張りの外壁で取り囲むような斬新なデザインを取り入れている。「香里の森」と名付けられたそのエリアでは、ガラス壁の内側に沿ってカウンターテーブルを設置しており、窓外の緑に親しみながら読書や学習ができる。インテリアは白を基調としながらも、一部の書架には赤松材が使用されていて、木のぬくもりや香りを感じさせる空間となっている。
周囲の建物はセンターを中心として配置されているため、登下校時や休み時間に気軽に集える場所となっている。また、開放感のある屋上広場は各校舎とつながり、校内の移動がスムーズに行えるようになったという。
「静」と「動」の機能が共存する新しい図書館の形
このセンターは、図書館としての機能に加え、学習・研究・発表・交流・鑑賞・創作などさまざまな場面での利用シーンを想定し、ワンフロアの中に「静的空間」と「動的空間」を共存させている。そのコンセプトについて古川教諭は、「図書館といえば静かに利用する場所というイメージですが、メディアセンターは『静』と『動』の両方の機能を備えた新たな図書館の形を目指しました」と話す。
「静的空間」は、静かな環境で学習や読書をするための自習スペースだ。「これまでの図書館はさまざまな目的で訪れる生徒が同じ空間に混在していましたが、『集中できるスペースが欲しい』という生徒の要望もあり、フロアの奥に静かに過ごせる自習スペースを設けました。さらに最奥には一段高い場所に、より一層集中しやすい席を配置しています」

「動的空間」はさらに三つのエリアに分かれている。「ラーニングコモンズ」は2~6人程度のグループ学習やプレゼンテーションなどのスタイルに合わせ、さまざまな形の机と椅子を自由に組み合わせられる空間だ。プロジェクターやスクリーンなどの設備もあり、クラス単位での学びにも対応できる。「メディアラウンジ」は、六つの
課題解決型学習をサポートする学習環境

センターでは図書・雑誌はもちろん、Web、データベースなどさまざまなメディアを取りそろえ、ノートパソコンやタブレットなどICT機器の貸し出しも行う。インフォメーションカウンターではスタッフが、生徒の知りたい情報の調べ方についての相談に応じる。さまざまなテーマの情報にアプローチする手段を提供することにより、生徒たちの調査や考察、意見交換などを促し、課題の発見・解決力を伸ばしていくという。
同校は約20年前から課題解決型学習に取り組んでおり、社会で役立つスキルを身に付け、主体的に考える力を育んできたという。現在、全教室に可動式電子黒板機能付きのプロジェクターを設置し、クラス単位で使用できるタブレットも用意している。
これまでもこうした学習環境を利用し、社会科の授業で海外旅行の企画案を練って発表したり、英語科・国語科の授業で壁新聞づくりを行ったりしてきたが、メディアセンターの開設によって充実した学習環境を活用し、課題解決型学習でも今後、一層の展開を図る考えだ。
古川教諭は、「教室での授業と異なり、とくにメディアセンターではグループ学習がしやすくなります。個々の生徒が意見を発表できる機会が増えるとともに、生徒間でのコミュニケーション力も鍛えられます」と、センター活用の効果を期待する。
同校は2021年度からカリキュラムに「探究」の時間を加える。通常の教科の授業以外にも、中学・高校を通じてメディアセンターを積極的に活用していく場面が増えそうだ。「授業中だけでなく休み時間や放課後にも取り組むことが可能になります。生徒が自らの意志でセンターを活用し、主体的な学びを深めていけるようになることを期待しています」
同校は、学習活動以外にもセンターの利用を生徒に開放する考えだ。個人的な興味・関心に基づく探究活動や文化祭で上映する動画制作といったホームルーム活動などでの利用を想定しているという。古川教諭は、「生徒の自主性を尊重するのが本校の特長です。メディアセンターをどのように活用したいか、生徒中心に話し合いを進めていきたいと考えています」と話す。
新たな学びの環境を得て、生徒たちの学びがどう変わっていくのかに注目したい。
(文・写真:溝口葉子 一部写真提供:同志社香里中学校・高等学校)
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