帰国生も一般生も相乗効果で伸びる教室…頌栄女子学院

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 頌栄女子学院中学・高等学校(東京都港区)は、30年以上前から帰国生を数多く受け入れてきた。一般生と帰国生が絶妙な割合で机を並べ、日々刺激し合い、補い合う中で互いを「国際感覚に優れた人材」へと成長させる教室の空気が生まれるという。高い進学実績でも知られる同校の教育について岡見清明校長に聞いた。

24%を占める帰国生が一般生にもいい刺激に

「国際感覚に優れた人材」を育てる教育について話す岡見校長
「国際感覚に優れた人材」を育てる教育について話す岡見校長

 頌栄女子学院中学・高等学校は帰国生を積極的に受け入れている学校だ。2018年度は、中学で一般生521人に対し、帰国生168人。高校で一般生506人に対し、帰国生152人となっていて、中高合わせて帰国生は全体の約24%を占める。

 「帰国生入試は1986年に前校長である父が始めました。もう30年以上前になります。父の姉たちが昭和の初期としては珍しい帰国生だったので、海外で教育を受けた帰国生にとって通常の入試は無理があると、すぐに気付いたのでしょう」と岡見清明校長は話す。帰国生にも母国で教育を受ける機会が与えられるべきだし、そのことが一般生にも良い効果をもたらすはずという、前校長の先見の明だ。

 高2で文理コースに分かれるまでの4年間は、帰国生も一般生も同じカリキュラムで学ぶ。クラスの構成は1学年5クラスのうち3クラスが帰国生と一般生の混合クラスだ。毎年クラス替えがあるので、すべての一般生が中学のうちに混合クラスを経験する。混合クラス内での帰国生と一般生の割合は約4対6になっている。海外経験を持つクラスメートが数多くいるので帰国生は安心して英語でコミュニケーションできるし、一般生には良い刺激になる。

 帰国生入試の受験者数は増加傾向にあるが、帰国生の割合を大きく増加させることは今のところ検討されていない。「これがちょうど良いバランス」なのだそうだ。

中1生は入学間もなくオリエンテーションキャンプを行い、互いの親睦を深める
中1生は入学間もなくオリエンテーションキャンプを行い、互いの親睦を深める

 ただ、帰国生同士、一般生同士でかたまってしまっては、それぞれの持ち味が十分引き出せなくなるおそれがある。そのため同校は、中1生全員を対象に、入学間もない5月、オリエンテーションキャンプを実施している。南志賀高原と軽井沢にある校外学習施設で2泊3日の合宿生活を送り、互いの親睦を深めるのだ。このキャンプには岡見校長も同行する。「行きのバスでは歌を歌うのが恒例なんですが、一般生が日本の歌を歌うと、帰国生も負けじと英語の歌を歌うんですよ」。主張し合うことでかえって距離が縮まり、最初は構えていた生徒も次第に打ち解けるそうだ。

 キャンプ中は帰国生、一般生とも互いに興味津々だ。帰国生同士が英語で話していると、一般生は懸命に聴き取ろうとするし、分からなければどんな話なのか教えてもらおうとする。帰国生同士でも発見がある。帰国生はさまざまな国や地域に住んでいたので、話す英語にもさまざまな地域色がある。自分の英語しか知らなかった生徒はイントネーションや発音の違いを知り、英語のバリエーションの豊富さに新鮮な驚きを感じるという。

 帰国生の影響は語学だけではない。自己主張する力もその一つだ。「何か質問はありますかと聞くと、帰国生は聞くことなんかなくても手を挙げますからね」と岡見校長は笑う。帰国生が苦手とする日本の歴史や文化、漢字などは一般生が教える。同級生は先生であり、ライバルであり、得手不得手を補い合う仲間でもある。

高2で一般生も帰国生と変わらない英語力に

2000冊以上の洋書を揃えた図書館の「イングリッシュ・ライブラリー」
2000冊以上の洋書を揃えた図書館の「イングリッシュ・ライブラリー」

 同校の英語の授業は、中1から高1までホームルームを二分して20人ほどの少人数で行うのが特徴だ。混合クラスでは、一般生と帰国生に分かれる。週6時間、一般生は基礎から学び、帰国生は討論などで英会話力に磨きをかけつつ、文法もしっかり学び直して受験英語に対応できるようにする。

 高2、高3では帰国生、一般生の別なく習熟度別のクラスになり、週7時間の授業で大学受験に備える。入学当時は一般生と帰国生とで英語力には著しい開きがあるが、高2の時期にはほとんど差がなくなり、トップのクラスでも一般生の姿が帰国生に交じるという。

 英語の語彙(ごい)力や読解力を向上させるため、中1から洋書を読むことを推奨しているのも同校の英語教育の特徴だ。図書館には洋書を集めたコーナー「イングリッシュ・ライブラリー」があり、2000冊以上を(そろ)えている。一般生向けの絵本のような簡単な本から、帰国生向けの高度な内容の本もあり、司書の資格を持つネイティブの教員が生徒のリクエストに応じて新しい本を仕入れている。

 読んだ洋書のタイトルや感想を所定の用紙に記録する取り組み「リーディングレコード」も行われ、1年間で最も多くの洋書を読んだ生徒に「年間多読賞」を与えて表彰している。「記録すると記憶に残りやすくなりますし、表彰されれば励みになります。多い子だと600冊くらい読むんですよ」と岡見校長は誇らしげに話す。

 他にも、「模擬国連部」の活動やスピーチコンテストなど、語学力や国際感覚を磨くための機会は多い。中学のカナダ語学研修、高校のイギリス語学研修など、希望者向けの海外研修制度も用意している。

高3の夏以降に成績を伸ばす生徒も多い

中3生全員が自由なテーマで1年間かけて取り組む卒業論文
中3生全員が自由なテーマで1年間かけて取り組む卒業論文

 生徒の素質について岡見校長は、「考える力」と「自主性」を大事にしているという。

 その「考える力」を養うために力を入れているのが、中3全員が自由なテーマで1年間かけて取り組む卒業論文だ。過去のレジュメ集を見ると、「日本は太平洋戦争でなぜ負けたのか」「なぜ人は(うそ)をつくのか」「本当の友人とは?」など幅広いテーマが並んでいる。分量は6000字。これだけの分量を明快に論じる必要があるので、論理的思考が鍛えられる。また、テーマは自由と言っても、本当に興味のあるテーマでなければ書き上げられないため、自分の内面を見つめるきっかけにもなっている。

 「自主性」を尊重することは、勉強のうえでは生徒の意欲や集中力につながっている。たとえば、大学受験の「天王山」とも言われる高3の夏休みに、生徒の希望を聞いて講習の中身を決めている。「生徒たちは、自分でやりたいと思ったことは一生懸命やります。私たちはそれを全力でサポートするだけです」と岡見校長は話す。意欲と集中力が高まるせいか、高3の1学期に模試の判定結果が悪くても、夏以降に成績を伸ばす生徒は多いという。

 毎年、生徒の多くが国公立大や難関私大に進学しており、今春もちょうど50%が国公立大・早慶上智への進学を決めている。岡見校長の語る「考える力」と「自主性」がその実績の支えとなっているのだろう。

 一般生は帰国生がもたらす英語や異文化体験などに良い刺激を受け、帰国生は一般生と机を並べる中で自分のアイデンティティーを見つめ直すことができる。さらに6年間の学びを通して「考える力」と「自主性」が備われば、生徒たちは同校の目指す「国際的感覚を持った女性」に大きく近付くことができるだろう。

 (文・写真:佐々木志野 一部写真:頌栄女子学院中学・高等学校提供)

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