【特集】「時短」部活への集中で生徒の「徳」を引き出す…東京成徳

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 東京成徳大学中学・高等学校(東京都北区)は、平日2時間の方針で部活の「時短」を実現している。各部の部員たちはそれぞれの工夫と集中力で短い練習時間を効率的に生かし、全国大会や都大会に出場して勝ち進むなどの実績を上げている。多くの部の中から人気の高い女子バスケットボール部と男子サッカー部の練習風景と、顧問の先生、キャプテンからの話を紹介する。

平日最長2時間の練習時間内で工夫をこらす

「私が大切にしているのは、サッカーの基本です」と話す岩崎教諭
「私が大切にしているのは、サッカーの基本です」と話す岩崎教諭

 「当校の校名は『徳を成す』です。つまり、徳のある人間を育てることが理念にあり、知力、人間力、グローバル力を備えた人間形成を目指しています。その一環として部活動があり、中学生の部活在籍率は98~99%に及びます」と、中高一貫部の我妻利真教頭は語る。

 中学校の部活動は2020年現在、バスケットボール、剣道、サッカー、テニス、水泳、バドミントン、ダンスなど運動系が16部ある。なかにはラクロスや弓道など、中学校では珍しい部活も含まれている。文化系は14部で、炉を切った本格的な茶室で稽古できる裏千家の茶道を始め、吹奏楽、電脳、天文など、バラエティーに富んでいる。

 我妻教頭によると「当校の部活動の特徴は顧問が、その競技の経験者であることや、自身が希望する部活動を担当することでしょうか。その分、指導には熱意があります」と話す。

 部活動に力を入れてきた同校だけに、かつては小学校のクラブチームで全国大会に進出するなど、好成績を残した子供たちを優先的に推薦入学させていたこともあったという。しかし、現在では、部活の偏重はすっかり是正されている。どんなに有望な選手であっても「一般の受験生と同じ条件で受験してもらっている」という。

 さらに、昨今、部活動の長時間練習が問題視されるようになったことから、同校は「平日2時間」という部活の練習時間の方針を打ち出した。「学業をきちんと修めて、その延長に部活動がある。それは全国大会に出場するような強豪チームの運動部も同じことです。部活動の時間は、平日の放課後で最長2時間。どの部も工夫しながら、練習を続けています」と我妻教頭は話す。

「再現VTR」練習でプレーへの理解を高める

バスケノートを交換して部員のメンタルをサポートしている塩田教諭
バスケノートを交換して部員のメンタルをサポートしている塩田教諭

 同中学校の部活動の中で、女子バスケットボール部は人気が高いという。学校見学会で部活体験を希望する受験生も少なくないそうだ。

 「女子バスケの部員たちは、その礼儀正しさと統制が取れた規律ぶりで、部活体験をした受験希望者の心をつかむようです。ある保護者は『バスケットボール部のみなさんの礼儀正しさに心を打たれたみたいで、生意気な娘の目の色が変わりました。素晴らしい体験をありがとうございました』と涙ぐんでいました」

 女子バスケット部はこれまでに全国大会で5回優勝の実績を誇る強豪だ。都新人戦、都春季大会、都選手権などでも、それぞれ10数回優勝している。

 現在の部員は中3が6人、中2が8人、中1が6人、それに高校生のマネジャー1人で計21人の構成だ。顧問の塩田敦士教諭は、「今の部員たちは、うちのバスケットボール部に入部するために、小学生の頃から塾に通い、受験しにきてくれた子たちです」と話す。

 活動日は火、水、金、土、日の5日間で、日曜日は主に試合を、そのほかは2時間の練習時間を組んでいる。「朝練習は一切なし。おそらく都内の上位校で最も練習時間が少ないと思います」と塩田教諭は話す。その2時間でいかに効率よく練習に取り組むかが、部活の課題になる。

「再現VTR」など工夫をこらして練習する女子バスケ部員
「再現VTR」など工夫をこらして練習する女子バスケ部員

 取材に訪れた7月29日、体育館に集まった部員たちは3人1チームに分かれ、スリー・オン・スリーの実戦形式で練習を行っていた。

 見ていると、ロングシュートを放つことは少なく、ゴール近くで確実に敵をかわしてシュートを狙う。その動きの正確さと集中力、コートの外で、自分の順番を待つ部員が絶えずコート内の選手に声をかけている真剣な姿勢が目に付いた。

 「生徒たちは1回でも多くシュート練習をしたいから、授業の終礼とともにダッシュで部室に集まってきます。その速いこと。あとは、ゲーム形式の練習中に誰かが失敗すると、いったん動きを止めて、『再現VTR』をやります。言葉だけでは理解しにくいため、みんなで動作を巻き戻して同じシチュエーションを作るのです」

 こうした練習の工夫以外に、塩田教諭が大切にしているものがある。部員たちのメンタルのサポートだ。そのために部員全員とバスケノートと呼ぶノートの交換をしている。「思春期の生徒たちを預かっているので、その心の動きを把握して、みんなの前では伝えづらいことや、叱ったけれどもこういう真意があるというようなことをノートに書きます」。ICTを使った連絡でなく、普通のノートにこだわる。「手書きだからこそ伝わることもあると思います」とのことだ。

 キャプテンの福田ひよりさん(中3)は、「自分たちのバスケは、最後まで粘り強くプレーするのが取りえです」と話す。この春はコロナ禍で休校になり、関東大会も中止された。部活のできない日が続くなか、「みんなに『いつ大会が再開してもいいように』と声をかけました」とキャプテンらしく部員を励ましたそうだ。普段から限られた時間に集中して練習に取り組む姿勢が、この粘り強さを生みだしているのかもしれない。

サッカー愛が「時短」練習への集中力を生みだす

 1998年に創部した男子サッカー部は昨年、東京都ベスト16の好成績を収めた。部員は中1から中3まで各11人の計33人。火曜から日曜のうち、各自調整しながら週5回の練習をしている。男子サッカー部の練習もやはり2時間だ。

 校庭の人工芝コートで男子サッカー部の練習を見てきた。選手たちはパス&コントロールの練習に取り組み、パスを出す、受ける、運ぶなど、さまざまな課題をこなしつつ、巧みにボールを操っていた。

 顧問の岩崎洋二郎教諭は「トレーニングは週ごとにテーマを決めてやっていますが、必ず最後はどんなに短くなってもいいから、ゲームで練習を締めます。なぜなら、この子たちは、サッカーが大好きで、サッカーがしたくで部活をやっているのですから」と話す。

気持ちを集中して練習に励む男子サッカー部員たち
気持ちを集中して練習に励む男子サッカー部員たち

 このサッカー愛が練習の集中力を高めるのだろう。男子サッカー部のキャプテンで中学3年の森山楓太君は「昨年の『走る合宿』が一番の思い出です。福島県の磐梯山の山道を20キロ、トレイルランニングしたのですが、1位になれたことが自信になりました。高校生になっても、部活を続けたい」と話す。同じく中3で部員の土屋摩周君は「コロナ禍の期間で、サッカーができるありがたさや喜びが分かりました」と話す。「高校でもサッカーを続けて、全国大会で優勝したい」。来シーズンのキャプテン候補の山口大翔(おと)君は、直近の東京大会でもピッチに立ってベスト16に進出したメンバーだ。「将来はサッカーにかかわる仕事がしたい」と話した。

 3人に共通するのは、将来にわたってサッカーがしたいという思いだ。岩崎教諭は、「私が大切にしているのは、サッカーの基本です。止める、蹴る、運ぶ、を中学生のうちに徹底してもらうこと。そうすれば、高校で本格的にやるにしても、将来、趣味としてフットサルに興じるにしても、ボールを自在に操れます」と話す。

 短い練習時間だからこそ、気持ちを集中して全力で取り組むことができ、それが生徒の潜在力を引き出す。「時短」の部活動は、人間力を引き出すという意味で確かに「徳を成す」という理念の一端を担っているようだ。

 (文:田村幸子 写真:中学受験サポート)

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